75話 両手に花
次の日の午後。俺は桃花とネリネと一緒に街に買い物に来ていた。新しい暮らしを開始した桃花が雑貨を買う予定だ。俺はいても役に立たなそうだが、一緒に来て欲しいと桃花に言われたので一緒にやって来た。ミルとひよりは残って魔法の修行を行うようだ。少しでも桃花に追いつきたいようだ。今回は流石に走って行くことはせず、バスで出かける。ネリネにバスの乗り方を教えながら搭乗する。
「ふむふむ。これが自動車の中なのね。馬車より乗り心地が良さそうね。」
「あの世界より道がしっかりしてるからね。走ってて跳ねたりはあんまりしないよ。あ、ネリネ。そこはタイヤの上だからやめたほうがいいよ。こっちにしときな。」
「?よくわからないけどわかったわ。」
ネリネ、初めてのバス。というか車。ちょっとワクワクしているようで見てて可愛い。ちょっと見惚れていたら、後ろからトントンされた。
「先輩?立ち止まらないでください。詰まってますよ。」
「おっと、すまんすまん。ん、なんか不機嫌か?」
「なんでもありませんよ。」
よくわからないが怒らせたかも知れない。なんでだ?
駅前のバス停で降り少し歩いてお店に着いた。安くて品揃えも豊富な店である。にこやかなペンギンが出迎えてくれた。
「何が必要なんだ?桃花。」
「そうですね。箸と茶碗とコップ、歯ブラシはもらいましたが歯磨き粉がないですね。後シャンプーとかコンディショナーとかボディソープとか欲しいですね。」
「それくらいなら雑費としてこっちで出そうか。」
「いいえ、最初なのでこちらで払います。今後なくなったら雑費でいただきます。」
「わかった。じゃあ行こうか。…おーいネリネいくよー。」
ペンギンの絵をまじまじ見ていたネリネを連れて行く。そんなに気になるかな、ペンギン。
「ミナト、あそこに書いてあった可愛い生き物は何?実物はないのかしら?」
「あれはペンギンだよ。残念ながら実物はここにはない。動物園か水族館に行かないとな。」
「そうなの…。」
「ネリネさん!今度一緒に見に行きましょう。ペンギン以外にも可愛い動物ってたくさんいますから!」
「そうなのね!是非行きましょう、是非!」
ネリネが前のめり気味に桃花に詰め寄る。家に帰ったらペンギンの動画見せてやろう。
次々と買うものをカゴに入れていく桃花。女の子は選ぶのに時間がかかると思ったが、桃花は即決タイプみたいで次々に決めて行く。悩んだ時は俺とネリネに意見を求めてくる。
「桃花にはこっちの青色が似合うと思うんだよな。クールな感じだし。」
「いえ、桃花にはこっちの黄色が似合うわ。かわいいもの。」
とネリネと対立することもしばしば。
「ネリネさん。今度からこっちのシャンプーを使ってください。こっちの方がより女性向けに作られているので髪が綺麗になるはずですよ。ミルにも言っておきますから。」
「ええ、わかったわ。ありがとう。」
女性同士の会話で俺が入らないこともしばしば。買い物しながら歩いていると
「キャンペーン開催中です。よろしければどうぞ!」
とお兄さんにティッシュをもらった。どうやらスマホのキャンペーンのようだ。
「そういえば、ネリネとミルに携帯を持たせるか考えないとなぁ。」
「今はなくても不便さを感じませんけど。」
「今はな。でもやっぱりいざという時に連絡できるのは便利だと思うんだ。」
「それならガラケーでも良さそうですけど。」
「でもそこはスマホ使わせてあげたいじゃん?」
「まぁ、それはそうかもですけど。」
「スマホってミナトやひよりがよく使ってるやつよね?」
「ああ、そうだよ。遠くに居ても連絡ができるし、情報を調べることもできる。この世界での便利な道具だよ。」
「あると便利そうね。またミナトが襲われた時も連絡さえもらえれば、駆け付けることができるものね。」
「もう襲われる機会は訪れないといいけどね。」
そう考えるとネリネとミルにスマホを持たせるのはいいかも知れない。スーリアは俺と一緒にいるからいらないけど。
『私にもスマホ買って欲しいよ、湊!』
「急に話しかけてくるな、スーリア!」
「「?」」
「先輩どうしました?」
「ミナトどうしたの?」
「あ、いや、スーリアが急に頭の中に話し込んできてな。」
やっべー。急なことなんで声に出しちゃったよ。
『なにをやってるんだいまったく。とにかく二人に買うんなら私にも買っておくれ。楽しい道具だってことは知ってるからね!』
『わかったわかった。考えておくから今は黙っててくれ。』
脳内会話終わり。
「スーリアとのお話は終わったかしら?」
「ああ。アイツもスマホほしいんだってさ。」
「そうなんですね。スーリアも退屈してるんですかね。」
「わからないけど面白そうだって言ってたな。確かにスマホは面白い機能ついてるよな。」
「私も是非使ってみたいわ。」
「じゃあ家に帰ったらミルも合わせて相談していこう。パンフレットもらってくるよ。」
俺はパンフレットをもらうべく先ほどのお兄さんのところへ戻った。タブレットもあると便利かもしれないな。




