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7話 ミルトニア

「助けて下さり、ありがとうございます!私、ミルトニアと言います。どうぞ、ミルと呼んでください!」

 助けた少女はミルトニアと言うらしい。小柄で可愛らしい女の子だ。ネリネに負けず劣らずの美少女だ。青っぽい黒髪が特徴だ。それと本人が使うにはアンバランスな大きさの杖を持っていた。杖は先に大きな青い石が埋め込まれている。これも魔石だろうか?

「じゃあ、ミル。どうしてあんな奴らに追われていたの?」

 と、優しい口調でネリネがミルに話しかける。

「旅の途中で、この道を歩いていたら急に襲われて。無我夢中で走って逃げてる時に、あなた方に出会いました。」

「そうだったんだ。捕まらなくて良かったわね。ミルみたいな可愛い子、捕まってたらどうなっていたことか。」

 そうだ、この世界は異世界。俺のいた世界でも女の子は危険なんだ。その危険度はより危険だろう。

「普段ならあの程度の盗賊、魔法でどうにか出来るんですけど、モンスターと戦って魔力が切れてる状態だったので。ホント助かりました。」

 そう言って、ミルは安堵の表情を浮かべた。いきなり大の大人に襲われてどうにかなっていたかもしれないのだから。安堵して当然だ。

「こちらも挨拶が遅れたわね。私はネリネ。こっちはミナトよ。よろしくね。」

「ミル、よろしくな。ああ、俺はまだネリネみたいに戦えないから、頼らないでね?」

「はい、よろしくお願いします!」

「じゃあ、早く行きましょうか。さっきの盗賊達が仲間を引き連れて戻ってきても面倒だから。街を目指しましょ。ミルもそれでいいかしら?」

「はい!しばらくよろしくお願いします!」


 街を目指して、俺とネリネ、ミルの3人で歩く。正直にまっすぐ歩くとさっきの盗賊達と出くわす可能性があったため、遠回りして次の街へ行くようだ。その間にすこしでも情報をと思い俺たちのことを話しておいた。

「なるほど。それでミナト君が元の国に帰る方法を探すための旅をしているんですね?」

「そうなんだよ。いまのところネリネの世話になりっぱなしで申し訳ないんだけどね。ミルは聞いたことある?その鏡のようなものって。」

「うーん、私も聞いたことないですね。転移魔法はありますけど、そもそも使う魔力が多いんですよね。移動距離が遠いとその分魔力を使いますので、国から国となると個人の魔力量だと無理だと思います。それこそ魔力量の多い魔導具とかになりますかね。」

「魔法使いのミルでも、やっぱりそういう見解になるのね。やっぱり神様のイタズラなのかしらね。」

「そもそも神様っているのかよ…。いるんだったら会ってみたいよ、俺は。」

 この理不尽な異世界転移を仕組んだ神がいるんだったら文句を言ってやりたい!

「あはは。次は私の番ですね。私は世界に散らばる、色々な魔法を覚えてみたくて旅をしています。魔法ってほんとに色んなことが出来ますから!そのために色んな魔導書を探しています!」

 と、ミルは自分の旅の目的を話してくれた。ミルは魔法を極めるべく旅をしているようだ。危険な旅なのにやりたいことのためにがんばっているようだ。俺よりも歳下だろうに心がけは立派だ。

「ミナト君の探している転移魔法は私も気になるところですね。国を移動できるほどの転移というのどういうものか興味があります。私もその旅に同行させてもらってもいいでしょうか?」

「俺としては探してくれる仲間が増えることはありがたい!ネリネはどう?パーティーのリーダーはネリネだからネリネに従うよ。」

「そうね。パーティーに魔法使いが加わることは私たちにとってもプラスになると思うし、オーケーよ!ミル。あなたを歓迎するわ!」

 こうしてミルトニアが俺たちの旅に同行することになった。

「ありがとうございます!あ、でも私に遠慮しないでイチャイチャしてくださっていいですからね?私はそういうの気にしませんから!」

『えっ?』

 突然の発言に声が重なる俺とネリネ。なにか勘違いしているような…?

「お二人の仲を邪魔したりしませんから安心してください。私、地元でも男女の仲を取り持つこともあったんで、うまく行くと思うんですよね!何か困ったことがあったらどちらの相談にも乗りますから!」

 ミルの発言がドンドン進んでいく。勘違いが、エスカレートしてる!?

「あの、ミル?勘違いしてるかもしれないけれど、私とミナトは別に恋仲ではないわよ?。」

 そうネリネが言うとミルもほえっ?って感じでこっちを見る。

「そうだよ。ネリネには助けてもらってるだけで恋人じゃないよ。ネリネにはもっといい人がいるよ。」

「あら、ありがとう。でもミナトも素敵な容姿をしてるから故郷の子が黙ってなかってなかったんじゃないかしら?」

「そんなことないよ!全然モテなかったよ。そういうネリネこそ、綺麗だからとてもモテたんじゃない?」

「旅と修行ばかりでそれどころじゃないわ。ミナトこそ気づいてないだけでホントは…」

「イチャイチャしてるじゃないですか!!」

 ミルが大声をだした。うわっびっくりした!

「恋人じゃないって言いながらイチャイチャしてるじゃないですか!?何も間違ってないじゃないですか!」

「いやいや、イチャイチャしてないから。ただ思ったことを言ってただけだから!」

「それをイチャイチャしてるってんですよ!」

「していたつもりはなかったのだけれど…」

「そうだよ。それにミルだって可愛い女の子じゃないか。男の子から言い寄られたことだってあるだろう?」

「まさかの、私を口説こうとしてますか!?」

「そうじゃないよ!?なんでそうなるの!?話がこじれて進まない!」

「私はまだ当事者になるよりも見てる方が好きと言うか…。なのでごめんなさい!」

「しかも振られた!」

 その気はなかったがちょっとショックだ。

「とにかく!私とミナトは付き合ってないし、だからイチャイチャもしません!わかったかしら、ミル!」

「ちょっと納得しづらいですが、了解です。わかりました。」

 ミルの誤解を解くのにちょっと時間がかかった。


「ミルはどこを目指してたんだ?俺たちは王都ラーガを目指してたんだ。」

 ミルの誤解もすっかり解けた後、俺は改めてミルの旅の目的地を聞いた。

「私も王都を目指していたところです。王都の方が魔導書も多いですし。」

「なら都合がいいわね。王都が一番情報を得られる場所だと思うのよね。」

「王都には魔法に詳しい人多いのか?その、転移魔法ってやつも。」

「国中の魔法使い達が集まる場所ですから、詳しい人は多いですよ!魔法のエリート中のエリートだけが学べる学校もありますから!まぁ、そう言う人たちとは話す機会が無いと思いますので、冒険者ギルドにいる魔法使い達に話を聞くことになると思いますが。」

「より詳しい人に話を聞くとなると何かしらのコネが必要になるわね。ミルはそういうコネ持ってないのかしら?」

「私にそういうコネはないですね。知り合いの魔法使いもみんな冒険者ギルドのみに所属してますし。その人たちには聞いてみるつもりです。ネリネちゃんには詳しい知り合いとかいないんですか?」

「王都に知り合いらしい知り合いがいないのよねぇ。それとね、ちゃん付けは辞めて?ちょっとこそばゆいわ。」

「んー、私にもネリネちゃんにもコネがないとなると、地道に聞いて回るしかないみたいですね。」

「ねぇ、聞いてる!?ちゃん付けは辞めてってば!」

 早くもネリネとミルは打ち解けたようだ。これが異世界コミュ力の力か!俺も見習わなくては。

「ちょっとそこでニヤニヤしてるミナト!あなたまでちゃん付けで呼ばないでよね!先に言っとくけど!」

「それは振りにしか聞こえないよ、ネリネちゃん!耳まで真っ赤にしてるネリネちゃん可愛いよ!はぁはぁ、かぁいいよぉぉ!」

「そこまでいくと気持ち悪いですよミナト君。」

「ふぐっごばっ!?」

 ひよりとの罰ゲームの時に言ってた台詞がつい、出てきてしまった。てか、どうして余計な事まで言った俺よ!

「ミナトってたまに発言がアレよね。」

「ミナト君って実は危ない人?」

「そんな事ないよ、俺みたいな安全な人って他にいないくらいだよ!」

「本当ですかー?危ない人ほどそういうんですよ。」

 確かにそういう人ほどそういうこと言いそう。

「まぁ、ミナトの変態性については置いておいて。王都に着いたら魔法使いの人達に話を聞く。そこから始めましょう。」

「内容には賛成だけど、俺変態じゃないからね!?フツーだから、フツー!」

「もう手遅れですよ?ミナト君?」

「手遅れって何!?」

 俺の人間性について誤解が深まったが、俺たちの仲も深まったように感じた。

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