66話 里見咲良④
私の生まれた家は少し…いやかなり厳しいこともあり、私はいつもメソメソと泣いていました。同じことを兄もしていたのですが、兄は一度でものにし褒められました。しかし私は何度も教わってようやくできるようになります。その違いに父は嘆きます。いつもできる兄と比べられてしょんぼりします。そんな私を見て兄はいつも、
「咲良にはいいところがたくさんある。剣の道だけが咲良の道じゃないさ。」
と慰めてくれます。それが私にはすごく嬉しかったのです。父に認められなくても兄に認めてもらえる。それだけで私は頑張れました。しかしそんな兄もある日を境に表情から笑顔が消えてしまいました。いつも慰めてくれた優しい兄はいなくなってしまいました。兄も父と一緒に私に稽古をつけることになりました。やはり覚えの悪い私は何度も何度も教わり、教えられたことが形になります。その稽古の厳しいこと。私がメソメソと泣く機会がどんどん増えていきます。そんな中私は少し大きな怪我をしました。町の病院で治療します。そこで何日か入院することになりました。稽古から抜け出せて束の間の休息です。病室で一人でいるとそこに一人の男の子がやってきました。どうやらかくれんぼをしているみたいです。彼は私を見つけると口に手を当てて、しーっと言いました。私は口を隠してコクコク頷きました。しばらくじっとしていた彼ですが、追っ手が来ないことを確認したのか、ふぅーっと息を吐きました。そこで私の方を見ました。そして私のところへ近づいてきます。
「君はどうして病院にいるの?」
思ったよりも優しい声で私に話しかけます。
「怪我をしたから入院してるの。あなたもでしょう?」
「俺は検査入院だって!どこも痛くないのに変だよね。」
と笑う少年。その顔を見ているとなぜだかこっちまで笑いそうになります。
「俺、片桐湊って言うんだ。君は?」
「私の名前は、里見咲良っていうの。」
これが私と片桐君の出会いでした。
「最後の技ですか。今までも全力で技を放っていたではないですか?これ以上があるとは思えませんが。」
「せいぜい手を抜きなさい!その油断が命取りよ!」
私は二振りの剣を鞘に戻した。そして最後の力を振り絞り魔力を練る。これが正真正銘の最後の一撃。でも勝つ自信もある一撃。私の全てを賭ける!
「ハァァァァァァッッッッ!!」
魔力が可視化できるくらい練る。私の周りに魔力が白い色となって纏われている。恐らく触るだけでダメージを負うだろうオーラ。オーラの力を肌で感じる。そのオーラを纏いながら足に力を込める。そして一気に踏み込む!
「神速!!」
里見咲良目掛けて走り出す。その速度は名の通り神の如く。この速度なら誰にも見極められない。地面を抉りながら進む。そして里見咲良の懐に飛び込んだ。
「奥義…雨過天晴ッッ!!」
その技は鞘に戻した剣を一気に抜き、目の前の敵を斬る。ただそれだけ。所謂居合斬り。だが、その一撃は目にも止まらぬ速さで敵を斬る。究極の移動術と抜刀術。反応する時間すらも与えない。
「きゃあああああああああっっ!!??」
奥義を喰らった里見咲良。お腹から肩口までX字に剣が入る。神速が今までよりも速度が速かったせいか若干狙いがそれた。本当は両断するつもりだったのだけれど、入りが浅い。それでも鋭い衝撃だった為、血飛沫を撒き散らせながら里見咲良は吹き飛んだ。紛れもない決着の瞬間だった。
気絶しているのか、里見咲良は動かない。ならこの間にトドメを刺さなくては。いつになっても慣れないことだが仕方のない。ここで彼女にトドメを刺さなくてはいつまでもミナトが狙われることになる。私は彼女に近づいた。そして剣を振り下ろした。




