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62話 ケル②

 俺はケルに向かって走り出した。ミルに近づけさせるわけにはいかないからだ。俺は飛び上がりケルの頭の一つを攻撃した。

「喰らえ!炎刃!燃えろぉぉぉぉ!!」

 得意の炎刃での攻撃。これで顔を一つでも潰せたら良い。しかし炎刃が当たる直前。ケルの口から炎が吐きだされた。俺の炎刃とケルの炎がぶつかり合う。だが俺が使っているのは炎の精霊剣マスデバリア。炎相手に負けるはずがない。負けるはずがないのだが、ケルの口から出される炎の量が多い。炎を打ち消すのに時間がかかっている。その隙に、

「うぉぉぉぉぉん。わんわん!」

 左右の首がこちらを向き何かをしようとしている。チラリと見た感じ、前の顔と同じように口から何かを発射しようとしている。これはまずいっ!

「ミナト君危ない!堅固たる守護の盾、障害を阻まん!ロッカシールド!かける2!」

 ミルが俺の左右にシールドを展開してくれた。左右のケルの口からの攻撃を防いでくれている。右からは水が、左からは電撃が放たれていた。喰らっていたら酷いダメージになっていたことだろう。俺もここでうかうかしていられない!

「炎の槍よ、我に仇をなす敵を貫け!フレイムランス!」

 慣れ親しんだ魔法を詠唱し目の前の顔に魔法を叩き込む。頭上から大きな炎の槍が落ちてきて口を貫く。それで口が閉じた形になる。その状態でも炎を吐こうとしていたので、口の中に炎が溜まる。そして小さな爆発が口の中で起こった。黒い煙が口から漏れ出る。これで一つの口は使えなくなった。この調子で顔を潰していくぞ!

「おっと。危ない危ない!」

 一つの顔を潰して喜んでいたが、その瞬間右の顔が突っ込んできた。それを俺はかわした。左の顔もそれに続いて突っ込んでくる。着地と同時なのでかわすことができない…!俺は剣で受けた。凄まじい衝撃が伝わってくる。

「うぐぐっ!せいやっ!」

 腕に魔力を込めて力任せに顔を弾く。魔力が上がっていて良かった。上がっていなければ弾けなかっただろう。俺はバックステップで少し距離をとる。するとケルも少し距離を取り始めた。何をするつもりだ?

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉんん!!」

 雄叫びをあげてケルは動ける二つの顔からビームを繰り出した。一つにまとまり放たれたビームは土を抉りながらこちらへ迫ってくる。中々のスピードだ。避けるとミルに当たるかもしれないと思った俺は防ぐことに決めた。

「スーリア力を貸してくれ!剛炎刃!!うぉぉぉぉっっ!!」

 ビームに対して俺は技を放った。通常の炎刃よりも火力の増している攻撃。ビームにも引けは取らない。二つの力はぶつかり合い対抗している。どうやら同じくらいの力のようだ。これは負けていられない!

「ミナト君後は任せてください!降り注げ断罪の剣、彼の者に裁きを、ブレイドオブジャッジメント!」

 ミルの魔法が具現化する。ケルの頭上から三メートルはあるであろう大きな紫色の剣が出現しそのままケル目掛けて落ちた。左側のケルの顔を貫きそこから電撃が通った。直撃を受けた左の顔は潰れた。その瞬間ビームが止まった。これで残るは右の顔だけ!だが、俺はケルが通常の動物ではないことをすっかり忘れていた。

「ぐぐぐぐぐぐぐぐうぉぉぉぉぉぉぉぉぉんんんん!!!」

 およそ動物が放つ声ではない声色で叫ぶケル。なんだ?なにをしようとしている?

「ミナト君!何だか嫌な予感がします!今のうちに叩きましょう!」

「ああ!わかった!そうしよう!」

 ケルが何をしようとしているのかはわからない。だから何かをさせる前に決着をつける!俺はケルに向かい走り出し、ミルは詠唱を始めた。ケルの体が徐々に発光してきている。本当にまずそうだ!

「業火斬!消えろ!」

 炎で切れ味を増した斜め切り!余程の硬さがないと防ぐことはできない。それにプラスして

「打ち砕け雷鳴!仇なす者に鉄槌を、サンダーブレイク!」

 ミルの中級呪文。イカズチの攻撃がケルにぶつかる。速攻で出した攻撃だが、威力は充分。大抵の敵はこれで倒せるはずだ。しかし、相手は大抵の敵ではなかったようだ。二つの攻撃を受けたケルは一瞬足がカクンとなったがすぐに元に戻り、俺たちの攻撃を受け切った。そしてどんどん発光していきケルを見ていられなくなった。光が弱まり出てきたのは、体格は引き締まり、前足は太くなり牙も鋭さをましたようだ。全体的に禍々しく目つき鋭く、首が一本になったケルだった。体に傷はなく今までのダメージもすっかりなくなっているようだ。俺たちもダメージらしいダメージは受けていないが、技を使い消耗している。もし体力が全回復しているのであれば危険な状況だ。ケルは背中に生えている翼を羽ばたかせ空を飛んだ。そして空から俺たちに向けて火球を放ってきた。

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