60話 ケル
俺たちはペンダントからそれぞれ武器を出した。そして俺とネリネは駆け出した。まずは作戦通りにネリネを里見さんの前に出さなくては。一瞬ネリネとアイコンタクトを取る。大丈夫、そのまま行ってくれ!ネリネがこくんと頷く。そのままネリネはスピードを上げてケルの隣を素通りしようとする。それをただ見ているだけのケルではない。前足を振りかざし、ネリネに襲いかかった。ネリネは走るだけで何もしようとはしない。この一撃を俺たちに任せてくれている。
「お前の相手はこっちだっ!ネリネには触れさせない!」
俺はケルの前に移動し前足の攻撃に合わせて剣を振るった。魔力を込めた一撃に思わずケルの前足が弾かれる。かなり魔力を込めたはずだがケルの前足はかなり重かった。これは油断できないぞ。そしてネリネはケルの横を素通りし里見さんのところへ行った。これで目標は達成した。後は俺とミルでケルを倒すだけだ。
「突き穿て雷剣よ、我が真意を持ちて敵を滅せよ、サンダーソード!」
ミルの魔法が完成した。サンダーソードがケル目掛けて降り注ぐ。修行前よりもその魔法は大きい。威力も上がっているのだろう。その魔法はケルに直撃した。ケルが大声を出している。これはもしかしてやったか?
「ガルルルルルルッッッッッ!!!バウワウッ!!」
確実に当たったはずだが、そこにいたのは五体満足のケルだった。傷も見受けられない。嘘だろっ!?ミルの中級魔法だぞ!?驚いている俺目掛けてケルの前足の攻撃がやってくる。いつまでも驚いていられない。俺はバックステップでその攻撃をかわす。すると反対の足で追撃してきた。それもバックステップでよける。大きさの割に俊敏な攻撃だ。だがいつまでも避けている俺じゃない。攻撃してきた前足目掛けて剣を振るう。ものすごく太い足だ。生半可な攻撃じゃ通らない!俺は足を切断するべく魔力をかなり込めて攻撃した。
「ハァッ!月閃!」
「バウワウッ!!」
前足に合わせて三日月を模した剣撃が当たる。しかし俺が思ったほどのダメージは与えられなかった。
「なにっ!?」
切断するつもりで切ったのに、ちょっとの傷跡しか残すことが出来なかった。今の一撃でケルも怒ったのか鋭い牙で齧り付いてきた。
「バウッ!バウッ!バウワッ!!」
三つ首を順番ずつ使い高速でこちらに牙をたてる。だが俺もこの程度を喰らうわけにはいかない。ステップで攻撃をかわしていく。少年の攻撃に比べたらまだまだ遅い!
「次弾準備完了です。避けてください!」
ミルから次の魔法の準備ができたと合図が来た。俺はケルに対して長めに距離を取る。
「生を受けし時よりある呪縛。その重圧を思い知れ、グラビティ!!」
ケルの上から見えない重圧が加わる。以前見た時よりもその重圧は重そうだ。重圧が加わり動けなくなるケル。だがこれだけではダメージは少ない。ならば俺もいかなくては!
「続けていきます!人踏み入れぬ未開の地、降り注げ岩石、ロックフォール!」
「燃やし尽くせ地獄の業火、彼の者に鉄槌を!ヘルフレイム!」
ミルの追撃魔法と俺の魔法。ミルの魔法は落石の魔法。ケルの頭上から岩がどんどん落ちてくる。グラビティの重力もあり効果は倍以上だろう。俺の魔法は熱度の高い大きい炎の球を頭上から押しつける魔法。その温度はまさに地獄の炎。この二つの魔法をくらったら流石にひとたまりもないだろう。全ての魔法が命中し終え、ケルの様子を見る。ふらついてるように見える。これはやったか?
「うぉぉぉぉぉぉぉんん!!バウワウ!!」
咆哮と共にケルの足取りがしっかりしたものになった。ダメージはあったものの致命傷にはならなかったみたいだ。今のでもダメなのか。
「ミル!生半可な攻撃じゃダメだ。魔力をありったけ込めた攻撃をひたすら叩き込むぞ!」
「了解です!ミナト君こそ途中でへばらないでくださいね!」
決意新たに俺とミルは再びケルへと意識を向ける。




