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6話 盗賊

 ネリネと一緒に、ラークー街をでた。これから俺たちの冒険の旅が始まる。ネリネと一緒だからといって気を抜かないようにしなくちゃ。

「最初はどこを目指すんだ?大きい街とか?」

「そういえば、まだ言ってなかったわね。目的地はこの国で1番大きい街、王都ラーガを目指すわ。そこでなら、色々な人達がいるから色んな情報が得られると思うの。どう?」

「確かにたくさん情報集められそうだね!賛成!」

「じゃあ王都目指して出発ね!」

 これから王都を目指すことに決まった。そこで元の世界に帰る有力な情報が得られると良いな。

「それはそうと、コレを渡しておくわね。」

「なにこれ??」

 ネリネに渡されたのは赤い石だった。手のひらに収まる小さい石で紐が通してある。どうやらネックレスとして使うようだ。

「これは魔石よ。体内の魔力を活性化させやすくする効力があるの。体内の魔力が活性化されると、力が強くなったり足が速くなったりするわ。冒険家達は魔力を高めてモンスター達と戦っているわ。魔法を使う魔法使い達も魔力を使って魔法を使うしね。」

「おお!魔法ってそんなファンタジー要素あるんだ!ちょっと感動。俺にもその魔力って備わってるの!?」

「ちょっと大袈裟ね…。ええ、どの人にも魔力は備わっているわ。どの程度備わっているかは人によるけどね。後天的に魔力が高まる人もいるわね。魔力を上手に使えるかが、冒険家の強さにも繋がるわ。」

「そうなんだ!あ、もしかしてウルフの時にネリネの剣が光ってたのって。」

「そうよ。アレは剣に魔力を流して切れ味をよくしていたの。まぁウルフ程度なら魔力を流さなくても倒せるわ。」

「ウルフってホント弱い扱いされるよな。可哀想なほどに。ネリネも魔法使えたりするの?」

「簡単な物なら使えるわ。難しいのは覚えるのが大変だからあまり覚えてないけど。そうね、ちょっと見てて。」

 と言って、ネリネは立ち止まった。目の前に手のひらを出しながら、

「炎纏し眷属よ、その身を持ちて我が敵を燃やせ!ファイアーボール!」

 と言うと、ネリネの足元と手のひらの先から模様のついた小さい円陣が現れ、手のひらの円陣からメラメラと火球が現れた。

「!?」

 突然現れた火球に、俺は驚きを隠せなかった。火球は手のひらよりもちょっと大きいくらいで、隣にいる俺にも伝わるくらい熱い…!

「はっ!」

 手のひらの火球はそのまま前に飛び出していき、前にあった木の幹に当たった。ドンッと音を立て、当たったところには焦げ目がついていた。

「これが魔法よ。だいぶ抑えたけど、使えると便利は便利よね。戦いの幅が広がるし、生活の助けにもなるしね!」

「お、おう…。いきなりだったからびっくりしたけど、凄いな!俺にも魔法って使えるの!?」

「魔力を感じるようになってからだから時間はかかるけど、使えるようにはなるはずよ。ミナトは魔法を使ってみたいのね。」

「俺のいた国では、魔法って創造上の物だったからな。使えるんだったら絶対使ってみたい!」

「最初は魔石を肌身離さず持っていて。しばらくすると魔力を感じることができるようになるから。」

 こうして俺は旅をしながら、魔法を覚えようということになった。これからモンスターも出てくるだろうし、なにより早く魔法を使ってみたくてしかたない!早く覚えたい!

「ミナトには剣術も覚えてもらいたいからやって欲しいことがいっぱいね。」

「どっちも頑張るよ、俺。」

 いつまでもネリネに頼るのも悪いもんな。早く身につけて自分でもどうにかできるようにならなくては。


 ネリネ先生の魔法講座を受けてから数時間。歩いていたら、ふと前の方から叫び声のようなものが聞こえてきた。

「たーすーけーてーくーだーさーいー!だーれーかー!」

 誰かが助けを求めてこちらに走ってきているようだ。よくよく見てみると、前方から少女が走って来ており、その背後に数人のいかつい男達が走ってきてきた。俺はどうしたらとオロオロしていたが、ネリネは判断し、

「ミナト、助けましょう。どのみち私たちとも遭遇するわ。」

 と、決めたようだ。前方の少女は俺たちに気付くと俺たちの方へ走ってきて背後に回った。

「すみません、助けてください!旅をしていたら急に襲われて…。」

 目の前の男達も立ち止まった。男達は合計で3人。それぞれが腰に剣を下げていた。

「嬢ちゃん達。金目の物を置いて去りな。さもなけりゃちょーっと痛い目に遭ってもらうぜ?」

 絵に描いたような盗賊だった!?漫画とかなら笑い飛ばせる展開だけど、現実に現れたらかなり怖い。現に今怖い。俺も武器を持っているとはいえ、まだまともに振ったことすらない。俺はまだ役たたずだ。数の上では同じだが、明らかにこちらが不利だろう。俺は剣の柄を握り、内心すげぇびびっていた。

「そっちこそ、痛い目に遭いたくなければ帰りなさい。」

 ネリネがそう啖呵をきった。ちょっとネリネさん!?いくらネリネが強くてもこの状況は不利ではないのだろうか!?

 ネリネの発言に盗賊達からも笑顔が消えた。舐められていると感じたのだろう。

「威勢はいいみたいだな。後で泣いても知らねぇからな!いくぞ、テメェら!」

 盗賊達は剣を抜いてこちらに走ってきた。

「2人共、少し下がってて。」

 そう言うとネリネも剣を2本抜いた。言われた通りに俺たちは少し後ろへ下がった。

 盗賊の1人がネリネに斬りかかった。ネリネは落ち着いた様子で剣で受け止める。その隙に残りの2人の盗賊が左右に回り込みネリネに斬りかかった。

「危ない!」

 斬りかかられる直前、ネリネは受け止めていた剣を弾き、目の前の盗賊の腹の部分を蹴り飛ばした。その後左右の盗賊達の剣も両手の剣で受け止め、弾いた。明らかに盗賊達の方が腕力がありそうなのにどういうことだろうか?その後のネリネの行動は速かった。バランスを崩してたたらを踏んでいる盗賊達の剣を狙って斬りかかった。ネリネの剣は、以前のウルフの時みたいに発光していた。どうやらアレが魔力を流している状態のようだ。

「はぁっ!」

 その時のネリネの動きは華麗だった。舞うように流麗な動きで1人ずつ盗賊の剣を斬りつけた。盗賊達の剣が、パリンッ!パリンッ!パリンッ!と綺麗に鳴ってネリネの剣によって折られた。

「なっ!?」

 あまりの早業に、俺たちだけでなく盗賊達も呆気に取られてしまったようだった。どう考えてもレベルが違いすぎる。

「武器はもう無いようだけど、どうする?まだやるようなら加減はしないけど?」

 とネリネがトドメの一言を盗賊達に浴びせた。これで盗賊達も戦意がなくなったようで、

「ちくしょう、覚えてやがれ!」

 と、絵に描いたような捨て台詞と共に帰っていった。ネリネって本当に強い。俺もいずれネリネと同じくらい強くなれるのだろうか?精進しないといけないな。

「ネリネ流石!スゲェー強いんだね!あっという間に倒しちゃって!」

「ですです!カッコ良かったです!ありがとうございます!」

 俺と女の子2人で、ネリネを褒め称える。

「そんな、大袈裟よ。立ち振る舞いから、あまり強そうじゃないなって思ってたからね。とにかく、2人を守れて良かったわ。」

 ネリネの強さが再確認された出来事であった。何より怪我がなくてよかった。

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