59話 ラブレター
俺はいつも通り登校し、一日授業を受けて部活は休んで下校した。いつも一緒のひよりと桃花は別に帰るように伝えてある。前回のように危険な目にあわせるわけにもいかない。俺はいつもの坂道をくだりネリネとミルと合流した。二人ともその首元には俺と色違いのペンダントがあった。ネリネがピンク、ミルが緑だ。スーリアに頼んで武器を携帯できるように改造してもらったのだ。これで前回よりも強く戦える。俺たちは油断なく帰宅していく。どこで出くわすかわからないからだ。相手の居場所がわかればこちらから討ってでるのだが…。前回戦った場所を通りかかったあたりで俺たちは疑問を持ち始めた。
「出てきませんね。」
「そうだな、前回はここで襲われたんだよな。」
「いつも同じ場所で出るとは限らないわ。油断しないで。」
「ああ。」
そのまま通り過ぎ、家へと進む。そのまま進んでいきとうとう家まで着いてしまった。
「着いちゃいましたね。」
「着いちゃったな。今日は何か事情でもあったんだろうか?」
「襲う側の事情なんて知ったことではないけれど、これだと危険ね。本当にいつ襲われるかわからないもの。」
ネリネの言う通りだ。俺たち三人が歩いていれば襲ってくるものとばかり思っていたから、これではいつ襲ってくるのかわからない。
「今日はどうしようもないから作戦会議かなぁ。このまま襲ってこなくなるってことになればいいけどなぁ。」
「それは楽天的すぎるわよ、ミナト。あの性格だもの。絶対に襲ってくるわ。」
「そうですよ。ミナト君への執着は相当なものでした。絶対の絶対来ますよ。」
「お、おう。殺意がなければ嬉しいんだけどなぁ。」
「「は?」」
「いえ、なんでもありません!」
失言だった。俺は二人の視線から逃れるようにポストを確認して家に入ろうとした。するとポストの中に何か入っていた。可愛らしい便箋。手紙だ。切手が貼ってないから直接入れられたものだろう。そんなことする人物が想像つかない。俺は不思議に思いながら手紙を読み始めた。
片桐君へ。
今日は私の想いを伝えたくて手紙を書かせていただきました。あんなに、そうあんなに伝えたのに未だに雌猫二匹と一緒にいるんですね。私すごく困ってしまいました。雌猫がいたのでは片桐君と一緒になれません。私は二人きりでこれからを暮らしていきたいのです。これは許せません。お仕置きが必要です。以下の場所まで今日の九時までに来てください。もちろん雌猫も一緒でいいですよ。今日で片桐君を惑わす雌猫は退治してやりますから。その後二人で永遠に過ごしましょう。
里見咲良より。
手紙の差し出し人は里見さんだった。ネリネ達はこちらの字が読めないので音読してあげた。
「なんですか、これは!宣戦布告ですか!人を雌猫呼ばわりしてー…!」
「相変わらず私たちに対しての敵意が強いわね。これは手強いわね。」
「里見さんの言う永遠って死だからなぁ。初ラブレターも血生臭いものになっちゃったなぁ…。」
俺はショックを受けながらも手紙を読み返した。俺への想いとネリネとミルに対しての敵意。前回の里見さんからはさほど怒りの感情は見えなかった。だが今回はどうだろう。ネリネとミルに対しての殺意が隠されていない。今回は前回以上に本気でくるのだろう。わざわざ場所も指定しているのである。罠があるとみて間違い無いだろう。前回よりも戦いが困難になるのは目に見えている。だが関係ない。それに対抗できるようにスーリアに修行をつけてもらったのだから。
「わざわざ場所指定して呼んでくれてるんだ。お招きに預かろうじゃないか。」
「そうね。真っ向から行ってやりましょう。それが一番簡単だわ。」
「やっぱりネリネちゃんは脳筋ですよねー。もう少し罠とか考えたほうがいいと思いますよ。でもまぁ、一番簡単ってのには同意ですね。」
パーティメンバーの意見は同じだ。真っ向から突っ込んでやろうじゃないか!
そして九時近く。言われた場所に俺たちは辿り着いていた。その場所はプールの駐車場だった。夏ならば大賑わいだが、今はまだ時期ではないためプールは開かれていない。何故ここが選ばれたのかは全くの謎である。だが広さはある。戦うにはうってつけかもしれない。広いから里見さんを探すのが大変かと思ったらそうでもなかった。里見さんは駐車場入り口から見える場所に立っていた。
「片桐君こんばんは。今日はお越しくださいましてありがとうございます。遠かったですよね?すみません、ちょうどいい場所がここしか思いつかなかったもので。」
「広い場所でよかったよ。ここなら戦いやすいし。周りに被害が出るってこともなさそうだ。」
「ええ、片桐君は優しいですからそう言うところを気にすると思ったんです。どこぞの雌猫はそんなことお構いなしだと思いますが。」
「それって私たちのことですか!?周りの被害くらい気にしますよ!私たちをなんだと思ってるんですか!」
「野蛮な泥棒猫と思ってますよ。前回お会いした時もそうだったではないですか。交戦的で攻撃的な雌猫。あなた方の評価はそれですよ。」
「そういうあなたの評価はどうなのかしらね?人前でキスをするなんてはしたないとは思わないのかしら?」
「アレはつい気分が昂ってしまっただけです。今度からは誰もいないところでいっぱいします!誰にも邪魔されないところでイチャイチャするんです!」
「破廉恥女じゃないですか!そんなやつにミナト君は渡しません。成敗してやります。」
「何を言ってもダメみたいですね。やはり雌猫二匹にはここで退場してもらいましょう。片桐君とはあとでゆっくりと過ごすことにします。」
空気が変わった。肌を刺す殺気。生半可な覚悟ではこの場にいられない。だけど今の俺達なら大丈夫。耐えられる。
「スーリア結界を張ってくれ。誰もはいってこれないように。」
「はいよ、いつものいくよ!」
俺はスーリアにお願いして結界を張ってもらった。外から見えないように。そして誰も入ってこれないように。
「なにかしたんですか?でも関係ありません。ポチが怪我の治療中なので今日は別の子を連れてきました。この子には勝てませんよ?おいでケル。」
里見さんはポケットからカードを一枚取り出した。そのカードを目の前に放り投げる。カードから煙がモクモクとあがった。煙が晴れるとそこには犬がいた。犬と言っても普通の犬ではない。大きさは3メートルほど。背中に黒と白の翼が生えていた。前回対峙したポチが可愛く見えるほどの凶暴な顔つき。鋭い牙。そしてなにより、首が三つあった。
「げげっ!ケルベロスですか!こっちの世界にも魔獣がいるんですね!?」
「そっちの世界でも三つ首の犬はケルベロスなんだな。目の前にいるだけで肌がぴりぴりする。」
「相手がケルベロスでもこちらの作戦は変わらないわ。任せていいわね、二人とも?」
そこにあるのネリネからの信頼。俺たち二人ならケルベロスでも倒せるという信用。
「もちろんだ。まかせてくれ、ネリネ!俺たちはやってやる!行くぞ!」
俺たちの決戦が今始まる。




