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58話 決戦の朝

 木曜日。いつもより早く起きた俺はコーヒーを作って優雅な朝を満喫していた。しばらく過ごしているとネリネが起きてきた。

「あら、今日は早いのね。私もコーヒー飲もうかしら。」

「目が冴えちゃってね。俺もおかわりしようとしてたから一緒に作るよ。」

「ありがとう。お願いね。」

 俺は立ち上がりコーヒーを作りに行った。2杯分なので多めにお湯を沸かす。ネリネもコーヒー好きだからコーヒーメーカーを買ってもいいかもしれないな。そんなことを思いながらカップにお湯を注ぐ。ネリネはブラック派なのでこのまま。俺は今日は甘い気分なので砂糖を多めに。

「出来たよ。ブラックよく飲めるよね。俺ブラックだけは飲めないんだよなぁ。」

「この苦味がいいんじゃないの。甘いのも好きだけどコーヒーはブラックがいいわ。」

 そう言いネリネはコーヒーを口に運んだ。ただそれだけの動作なのに絵になるとは流石ネリネ。

「いよいよね。」

 言葉短くネリネがそう言った。なんのことかは言わなくてもわかる。決戦は恐らく今日。心情はわからないがネリネにとっても強敵との戦いだ。ちょっとした油断が死を招く。経験豊富なネリネもやはり怖いと思うのだろうか?

「修行もしっかり終えたし、私たちの力は強力になったわ。心配になる気持ちはわかるけど大丈夫よ。私たちならやれるわ。」

「そうだよな。やれることはやったよな。今の俺はざわつく心を無理に落ち着かせようとしてた。平常心になれてなかったよ。中々できることじゃないけど俺たちは一人じゃないもんな。」

「そうよ。一人でできないことも仲間と補い合えばできるはずよ。今までだってそうしてきたじゃない。不安に思うことはないわ。ミナトは強いもの。大丈夫よ。」

 ネリネの言葉を聞いて俺も少し前を向けた気がする。今までも困難はあった。でもその困難も俺たちは乗り越えてきた。

「ありがとう、ネリネ。おかげで気持ちがすっとしたよ。」

「どういたしまして。今朝のミナトは少し顔がこわばっていたわよ。ミナトらしくないわ。今からそんなんじゃ戦いまで持たないわよ。」

「ちょっと緊張してるみたいだ。相手が相手だからな。」

「適度な緊張はいいけどさっきまでのミナトは肩に力が入りすぎてたわ。そんなんじゃ実力が発揮できないわよ。」

「そこまでお見通しだったか。ネリネに隠し事はできないな。」

 ここまで自分のコンディションを見抜かれてしまうと少し恥ずかしい。流石は経験豊富なネリネ。歴戦の戦士だ。

 そんな事を話していると、今度はミルが起きてきた。

「おはようございます…。お二人とも早いですね…。」

「おはよう、ミル。そういうアナタは随分眠そうね。よく眠れなかったのかしら?」

「そういうわけではないのですが…。今日の朝は特段眠くて…。コーヒーの匂いがしますね。私にもコーヒーいただけます?砂糖は少しで。」

「わかったよ。少し待ってて。」

 まだ寝ぼけ眼のミルが椅子に座るのと同時に俺はコーヒーを淹れに行く。いつもは甘めの味を好むミルだが眠気覚ましにしたいのかちょっと苦目をご希望だ。ご要望通りのコーヒーを作るとミルに渡した。

「ほら、できたよミル。苦すぎたら砂糖足してな。」

「ありがとうございます…。いただきます…。ううちょっと苦すぎました…。砂糖を足さなきゃ、砂糖砂糖。」

 顔をしかめて砂糖を足しに行くミル。そこまで苦くしてないと思うんだけどなぁ。結局甘くするのか

「ふぅ、やっと飲める苦さまでになりましたー。おかげで目も覚めそうです。」

 お好みの味になったようだ。

「ミルは今日のことどうなのかしら?緊張しすぎてない?」

 ネリネがミルにそう問いかける。俺もそれは気になるところだ。それに対してミルはこう答えた。

「それは、緊張しないということはないですけど、私も冒険者ですからね。命のやり取りは今までもありましたし。事前に戦うことがわかってるだけマシですね。それに私は一人じゃありませんから。みんなで戦うので怖くないです。」

 ミルの答えに俺はミルも戦士なんだなと思った。異世界で冒険してきた経験もあるのだろうけど、そこがミルの強さだ。俺にはまだ持てていない覚悟がある。そんなところは素直に尊敬する。

「ミナトどう?ミルもこう言ってるわよ。私たちは一人じゃないんだから力を合わせて戦うだけ。そうでしょ?一人じゃできなくてもみんなでなら出来るわよ。」

 ネリネがこちらを力強く見つめてくる。そういう目に弱いんだよなぁ。

「そうだな。その通りだ。俺たちはパーティだ。みんなで勝利を掴み取ろう!」

 俺はそう覚悟を決めた。

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