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57話 スーリアの心情

 ご飯も食べ終わり風呂にも入り俺は自室へ戻ろうとしていた。恐らく決戦は明日。万全の状態で戦いに臨めるように休まなくては。気合を入れて休むというなんか矛盾してるような気がしないでもないけどしょうがない。それくらいの意気込みだ。俺は自室へ入った。すると暗い部屋の中。部屋の中央にスーリアが目を閉じて座っていた。月明かりに照らされたスーリアはいつもの雰囲気と違い、手が届かない神秘的な存在に見えた。女神の使いと言われても信じてしまうだろう神々しさだった。俺がドアを開けたのがわかったのか、スーリアが目を開けてこちらを見た。

「どうしたんだい?ぼーっとして。何か私の顔についてるかい?それなら早く言ってほしいね。精霊といえども恥の概念はある。おかしな顔のままいたくないんだけどね。」

 そう言ってきた。言ってることはいつものスーリアのままだ。いつもと変わりはないみたいだ。俺は部屋の中に入ってドアを閉めた。そのままベッドは移動し、座った。

「いや、なんでもない。スーリアの顔には何もついてないよ。いつも通り綺麗なままだ。」

「そういうセリフは他の子に言ってあげるんだね。私に言ってもしょうがないよ。」

「他の子には言いづらいんだよなぁ。その点スーリアは相棒だから言いやすいんだ。」

「相棒…ね…。」

 そう呟くとスーリアはまた黙ってしまった。今日はちょっと変な気がする。修行の件で疲れてしまったのだろうか。

「どうしたんだ、スーリア?調子でも悪いのか?」

「調子が悪いわけじゃないよ。精霊なんだから病気があるわけでもないし。」

「ならどうしたんだ?いつものスーリアらしくないぞ?」

 俺がそう言うとスーリアは俺から視線を一度逸らした。その後俺の方を見た。

「ちょっと昔を思い出していただけだよ。さっきも言っただろう?私を昔使っていた男がいたと言うことを。彼と同じように私と契約した者は何人かいた。その頃を懐かしんでいただけだよ。」

 確かに修行終わりにそんなことを言っていた。俺の先輩に当たる前任の精霊剣の使い手。俺よりも上手く精霊剣を扱っていた少年。彼以外にも精霊剣と契約していた人たちがいた。その人たちを思い出してるようだ。

「彼らが私と契約して通常よりも強い力を手に入れた。それが良かったことなのか悪かったことなのかは私にはわからない。変わらないのは私と契約した者たちは戦いから…戦場から逃れられなかったということだけ。戦いを好む者もいた。嫌う者もいた。色んな人たちが私と契約したけれど、みんな幸せだったのかなと思う。私の願いに付き合わせて不幸な目に合わせてしまったのかなと思ってしまったんだ。湊もそうだよ。私と出会わなければ戦いの術もわからないままのただの少年でいられたんだ。だから私の存在はみんなを不幸にしているんじゃないかと思うんだ。」

 スーリアはそこで言葉を切り、黙り込んだ。なんだそんなことで悩んでいたのか。俺は俺自身の言葉で答える。

「スーリア。俺は不幸じゃないよ。俺を刺した剣がスーリアじゃなかったら、そのまま俺は死んでたんだ。それにスーリアが俺に力を貸してくれているおかげで戦えてる。それは不幸なことじゃない。そうしてくれているおかげでみんなを守ることができる。戦わなきゃ守れないものもあるからな。」

 そこで言葉を切り、スーリアの隣に移動する。そのまま手を握った。

「過去の契約者たちがどうなのかはわからないけど、少なくともスーリアを恨んでいた人はいなかったと思うよ。こんなにも心優しい精霊がついていたんだ。みんなスーリアのこと相棒として見てくれてたんじゃないかな?少なくとも俺はスーリアをかけがえのない相棒だと思ってるよ。」

 握る力を強くし、俺はそうスーリアに答えた。スーリアはちょっと驚いた顔でこちらを見ていた。

「まさか湊からそんなこと言われるとは思ってなかったよ。でもそうか。今の契約者である湊に言われるならそうなのかもしれないね。うん、安心した。それを聞けただけでも私の心は満足するよ。」

「ちょっと小っ恥ずかしいこと、言ったな。でも俺の本心だから。これからもよろしく頼むよ?スーリア。」

「湊もまだまだ頼りないし、任せたまえよ。このマスデバリアがいつまでも湊の力になることをここに宣言しよう。」

 そう答えたスーリアはこちらに笑顔を向けてくれた。見る人を元気にさせるような、そんな笑顔だった。

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