55話 スーリアの修行④
少年を倒した俺はその場に倒れ込んだ。
「あぁー!疲れたぁ!もう動けねぇぞ!」
本音を叫んだ。何度も死にかけた。スーリアの励ましがなければ本当に死んでいたかもしれない。そのくらい強い相手だった。過去のスーリアの主人だったのだろうか。俺も彼みたいに精霊剣を使いこなしたいものだ。
「もうこれ以上は戦えないぞ。次来たら終わりだ。」
流石に彼がラスボスだと思いたい。魔力も尽きた。もう戦えない。
すると、白い光が上から降り注ぎ、俺を包んだ。柔らかな光に包まれていい心地だ。目も開けてられないほどの光に包まれて、俺は別の場所に移動した。
「ミナトおめでとう!修行は無事完了したよ。君は一歩上のステージへと登った。以前までとは比べ物にならないほどに強くなるよ。」
移動先の空間にはスーリアが待ち構えていた。ニコニコとしたスーリアを見ると、ああ終わったんだなと安心できた。
「どうしたんだい、ぼーっとして。もっと嬉しそうにしたらどうだい?」
「なんだか気が抜けちゃってな。さっきまでが激戦だったからさ。ホッとしたんだよ。」
「精霊剣を使ってるんだからあのくらいは当然のように切り抜けて欲しいものだね。危ないシーンもあってこっちがヒヤヒヤしたよ。」
こっちの動きはスーリアに筒抜けだったようで、心配かけたようだ。
「しょうがないだろ、強かったんだから。それにしても、最後に出てきた少年は誰なんだ?彼も精霊剣を使っていたけど。」
俺がそう言うと、スーリアは表情を神妙なモノに変えた。
「彼は先代の私の使い手だよ。もう何百年も前になるね。彼に使われていたのは。自分のことより他人を気遣い、大勢の人に慕われていた戦士だった。戦場を一人で駆け回り敵を倒し、味方を助け、まさに英雄と言うにふさわしい人間だったよ。今回の修行で、マスデバリアの使い手は過去のマスデバリアの使い手と戦うようになるんだ。彼と戦えたことは湊にとっても幸運だったと思うよ。」
そう言い終わるとスーリアは少し遠い目をした。どうやら昔を懐かしんでいるようだ。
「まぁ、本当の彼の実力はこんなもんじゃないけどね!」
「マジかよ!もっと強いのか、本当の奴は!」
びっくりする情報だった。もしかして、俺ってまだ弱い?
「さて!修行も終わったことだし、やることやっちゃおうかな。」
スーリアがテンションを変えて言い出した。やることとは?
「最後に湊に力を授けるんだよ。魔力の塊をね。これで湊の魔力量が上がり、自力を上げるんだ。」
さっきの戦いだけが修行じゃなかったんだな。そう言うことならいただくとしよう。
「じゃあその魔力頂くよ。頼む。」
「任されよう。行くよ!」
そう言うとスーリアは手を前に出した。手のひらから青白い光の球が現れた。その光の球は俺の方へと移動してきて俺の体内に入っていった。なんとも言えない感覚が俺の中に押し寄せる。次の瞬間、体の奥底から燃えるような感覚が俺を包み込む。実際に燃えているようだ。だが、不思議と熱すぎない。しばらく経つとその感覚も消えた。変わりに色んなことができそうな自信が湧いてきた。
「これが魔力の譲渡か。今ならネリネにも勝てる気がするぜ!」
「大きく出たね〜。ネリネの実力を超すのはまだまだだと思うけどね。」
「そういえば、ネリネとミルの修行はどうなったんだ?もう終わってるのか?」
そう、今回修行を受けたのは俺だけではない。ネリネとミルも一緒だ。あの二人が失敗しているとは思えない。
「二人なら先に終わって休んでいるよ。湊ほどではないにしろボロボロだったからね。湊もこの空間だからある程度動けてるけど、家に戻ったら激痛で動けないんじゃないかな?」
「そんなに俺の状態は悪いのか…。でも、そうだよな。結構無茶したしな。」
「そういうこと。わかったらさっさと帰って休んでくるんだ。」
そう言われて俺は現実の世界へと戻されていったのであった。
一人残ったスーリアはふぅっとため息をついた。この数時間で何回もついたため息だが、今回のは安堵のため息だった。
「全員無事に修行を終えられてよかった。湊とミルはちょっと危なかったけど達成は達成だ。この修行の成果で難敵を乗り越えられるように信じるしかないか。それに今回の事で門が開きそうになってる。まだまだ湊達にはやってもらわないといけないことがたくさんある。簡単に死んでもらっては困るね。それに大前提として私との契約、世界を見せてくれるってことをしてくれなきゃ許さないんだから。」
スーリアは遠くを見つめている。その先に何を見据えているのかはスーリアしかわからなかった。




