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5話 冒険者登録と旅立ち

 次の日、俺はネリネに連れられて、ラークー街の中を歩いていた。どうやら連れて行きたいところがあるらしい。しばらく歩くととある建物の前で止まった。

「着いたわ。ここがこの街のギルドよ。ここでミナトには冒険者登録をしてもらいます。」

「冒険者登録?」

 またまた聴き慣れない単語が出てきた。

「私の旅について来てもらうにあたって、ミナトにも冒険者になってもらうわ。そっちの方が都合がいいからね。」

「冒険者になるとどうなるんだ?お金が貰えたりするの?」

「それもあるんだけど、順番に説明するわね。冒険家登録をすると、冒険者カードが貰えるの。」

 と言って、ネリネは自分のカードを取り出して見せてくれた。銀色に光っているカードだ。

「冒険者カードはその名の通り、冒険者の証でもあるカードなの。どの街のギルドでも、このカードで冒険者である事を証明できるわ。S〜Dランクのクエストを何回クリアできたかが記されているの。」

「なるほど、なるほど。クエストのクリア情報が載るってことは、カードがないとクエストの受注ができないんだね?」

「その通りよ。クエストをクリアすると報酬としてお金や道具が貰えるわ。ちなみにクエストはランクごとに難しさが設定されているから、どれを選ぶかは慎重に選ばなくちゃいけないわ。自分の実力よりも高いクエストを選ぶと最悪死ぬ事もあるからね。」

 この世界での過酷な情報にゾクっとくる。死ぬなんて単語は、冗談を除けば日本で聞くことはほとんどない。ここが異世界である事を実感させられる。

「カードの色にも種類があって、実力によって分けられてるわ。上からプラチナ、ゴールド、シルバー、ブロンズよ。私やクラースはシルバーね。ブロンズの人が1番多くてプラチナとゴールドの人はホントに少ないの。一つの街に1人いるかいないかって聞いたことあるわ。」

「この街にもゴールド以上の人いるの?」

「この街はクラースが一番の冒険者よ。」

「なるほど…。カードの色を上げるのは、クリアしたクエストによって決まるの?」

「そういうこと。クリアしたクエストの種類や数、後はギルド長の承認が降りれば上がるわ。」

 ギルドカードの仕組みについては理解できた。身分証と通知表が合体したみたいなものだ。書いてあることが少ないのがわかりやすくていい気がする。その人の実力がレベルとかで書かれているともっとわかりやすい気がするけど、レベルの概念はないかな。

「ついでにギルドについても教えておくわね。ギルドは街の人たちの困り事や街がより良くなるための事案を冒険家達に依頼しているの。その依頼に見合っただけの報酬を用意してね。クエストは冒険家であれば誰が受けてもいいんだ。でもその時に死んじゃったり、大怪我をしちゃったりしても自己責任ってわけ。」

 つまり冒険家とは言っても街の便利屋さんと見てもいいのかもしれない。そして危険が伴う仕事であると言う事も。でも見合った報酬と言っているわけだから、危険なクエストであればあるほど見返りが大きいわけだ。お金を稼ぎたい人達は自分の命の危険すら顧みずにクエストをうけるのであろう。

「あとは、お宝やモンスターの素材を鑑定、買い取りもしてくれるわ。初心者冒険者はこっちの方がお世話になるわね。」

「なるほど。それで俺にも冒険者カードがあった方がいいってことだね!」

「そういうこと!とまぁ、ざっくり説明したけどこんな感じ。本人の希望さえあれば誰でもなれるのが冒険者ってやつよ。何かわからない事ある?」

「とりあえずわかったよ。ありがとう。」

「じゃあ、登録しに行きましょ!」

 俺達は冒険者登録をするべくギルドの中へ入った。


 ギルドの中にはたくさんの人がいた。ここにいる全員が冒険者と考えると相当はものだ。どの人も街に歩いている人と比べると、剣や斧、槍や弓等色んな武器を持っていて強そうだ。というかおっかない。

「冒険者の登録はアッチのカウンターでできるわ。」

 言われてカウンターの方へ向かう。カウンターには若い女性が座っていた。事務仕事中なのか、せっせと紙に何かを書いていた。

「すみません、冒険者登録をしたいのですがいいですか?」

「いらっしゃいませ!冒険者登録ですね!こちらで承りますよ!」

 事務仕事を中断してこちらを向いた。

「冒険者がどんな職業かはご存知ですか?」

「はい。ひと通りは聞いています。」

「そうですか!では、簡単に説明しますね。冒険者は未経験の方でもなれる職業です!その内容は近所のおばさんのお使いから、古龍種の討伐まで幅広いものとなっております!若手の冒険者が活躍しやすい環境になっていて仲の良いアットホームな職場となっておりますよ〜!是非一緒に冒険ギルドを盛り上げていきましょ〜!」

 と、テンション高めに話してきた。内容はネリネから聞いていた内容と一緒なのだが、なんだろう、この胡散臭いワードのオンパレードは…。日本人として、込み上げてくるブラック企業感が拭いきれない…。

「では、さっそく登録していきますね。初めての登録ですので登録料はいただきません。本日発行する冒険者カードを紛失すると再発行に200ゴールドかかりますので、ご注意してくださいね、最初はブロンズカードからのスタートです!是非是非、プラチナ目指して頑張ってくださいね!あ、読み書きは出来ますか?」

「できません。」

「ではこちらで、書類は記入させてもらいますね。名前をお聞かせください。」

「湊です。片桐湊。」

「カタギリミナトさんですね、かしこまりました。最後になりますが、クエスト中に発生するいかなる事件事故は当ギルドでは責任を負い兼ねますので、ご理解くださいね!」

「いかなるって、どんな事が起きてもってことですか?」

「ええ、そのいかなるです!もし大怪我を負っても万が一死んでしまっても当ギルドでは責任はおいません。自己責任となります!」

「そうですか…。そうならないようにがんばります。」

 ちょっとびびりながらも冒険者登録を行なった。

「ではこれで冒険者登録はおしまいです。これがミナトさんの冒険者カードです。なくさないでくださいね!」

 冒険者カードを受け取る。保険証より大きいサイズのそのカードはしっかりとした作りでちょっとやそっとじゃ折れそうにない。カードをポケットをしまい、ネリネの元へ戻った。


 冒険者登録を終わらせた俺は次の目的地を目指していた。次は武器を買いに行くらしい。

「なぁ、ネリネ。武器を買いに行くって言っても俺使える武器がないんだけど。何かオススメでもあるのか?」

「そうねぇ。やっぱり、私も使っているから剣がいいんじゃないかしら。そっちの方が教えやすいしね。冒険者も剣士が1番多いし。」

 やはり、剣が1番ポピュラーのようだ。日本でも昔から刀か槍がメジャーだったからな。今でも剣道があるくらいだし。なんとなく使うイメージも湧きそうだ。

 そうこう話している間に目的地の武器屋に着いた。冒険者ギルドからさほど離れていなかった。やはり関係する商売だけあって近接しているようだ。

 武器屋の中は様々な武器で溢れていた。数が多いのは剣と槍。他にも弓や矢、鉄球や斧等様々だ。日本ではまずないだろう店だ。

「ミナトが使うならやっぱりショートソードかなぁ。振り回さないと使い物にならないしね。初心者でも扱いやすいし。これなんてどうかしら。」

 と、ネリネが選んでくれたのは、刃渡り60センチほどの両刃の剣だった。想像していた物よりもちょっと小柄な剣なので、確かに振り回すのがし易そうだ。

「そうだね、もった感じも…うん、この重さなら俺でも使えそうだ。流石ネリネ!センスがあるね!」

「ふふん、まぁね。これでも長く冒険者やってますから!」

 と、得意げに胸をそらすネリネ。形の良い胸が強調されて、少し目を逸らしてしまった。だって男の子だもん、しょうがないしょうがない。

「じゃあ決まりね!買ってくるからちょっと待ってて!この次は服屋に行くわよ!」

 この日は剣と冒険用の服も購入し1日を終えた。次の日には、別の街を目指して出発だ。


 次の日。

 ラークー街の入り口に、俺とネリネとクラースさんが立つ。俺とネリネの旅立ちにクラースさんが立ち会ってくれることになっていた。 

「では、クラースさん行ってきます。お世話になりました。」

「おう!と言っても俺は殆んど何もしてないけどな。その礼ならネリネにいいな。ネリネはネリネでちゃんと世話焼いてたしな!」

「そんなことないわよ!クラースのアドバイスあってこそだもの。それに弟分ができたみたいでちょっと楽しいわ。」

「弟分って…。歳変わらないだろうに…。また近くに来たら寄りますね!」

「おう!名のある冒険家はギルドでも話題になるからな。ラークー街まで轟くくらいの冒険者になりな。」

「じゃあ、いってくるわね、クラース!」

 俺とネリネは、クラースさんに別れを告げて歩き出す。元の世界に帰るための情報を探す旅にでかける。すんなり行くとは思っていない。困難が待ち受けているだろうけど帰るために、頑張るつもりだ。

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