47話 護送?
月曜日。休みが終わって最初の平日の訪れを恨む人は多いだろう。今の俺にとっては学校も楽しいので恨む必要はないんだが。しかし今日の俺は学校を休もうと思っている。ついこの間命を狙われたばかりである。実力をつけるまでは修行をしておくに越したことはない。そうみんなに伝えたところ、
「いえ、いつも通り学校に行っていいわよ。ミナトの生活を修行一色に変えるつもりはないわ。」
「そうですよ。せっかくミナト君の国に帰ってきたんですから。いつも通り生活してください!」
と二人に言われた。
「でももし、同じように襲われたらどうするんだ?今の俺じゃ次は殺されちゃうよ。」
そう、まだ空を1メートルちょっと飛べるようになっただけである。俺の実力はまだ上がってはいないだろう。このまま、里見さんに出会ったら殺されてしまうだろう。
「そうならないように私とミルがミナトを護送するわ。」
えっ?
「こちらが複数ならちょっかい出してこないでしょう。ミナトの実力が上がるまではそうするわ。」
「ネリネとミルの見た目ってこの国だと目立つんだって!そんなところ誰かに見られたら俺注目されちゃうよ!」
「あら?死ぬよりはマシだと思うけれど?それにこれは決定事項よ。ミナトに拒否権はないわ。」
「諦めてください、ミナト君!美女二人が一緒なんですから、もっと喜んでくださいよ〜。」
どうやら俺にはどうすることもできないらしい。でも確かにそうだ。今の俺が里見さんと一対一で対処できるわけじゃない。俺一人じゃなければ、襲ってくる確率も減るしな。
「わかったよ。よろしくお願いします。別れる場所と合流する場所は俺が指定するからな。」
「その場所は以前襲われた場所よ。そこから出現する可能性が高いもの。」
「そこってウチの生徒が必ず通る道なんだけど!」
「諦めてください、ミナト君。ネリネちゃんの目を見てください。本気の目ですから。何を言おうと無駄ですよ。」
ぐっ、確かに本気の目だ。それにネリネの言ってる事が正論である事は間違いない。
「わかった。その場所でいいよ。言ってる事は正しい。合流する時は部活が終わってからでいいよな?」
「ええ。時間はそちらに合わせるわ。教えてくれればその時間に迎えにいくわ。」
今日からミルとネリネと共に朝登校することになるようだ。目立たないといいなぁ。無理だろうなぁ。
ひよりがいつもの様に家にやってきて登校することになる。それに加えて今日からネリネとミルが同行する事を伝えた。
「ネリネさんとミルちゃんも一緒に来てくれるの?やった!楽しい時間になりそうだね!」
と呑気なひより。おい、わかってるのか?ネリネとミルと一緒って事は目立つって事だぞ?
「みな兄は心配しすぎなんだって。みんなそんなに周りに興味ないよ。その場で立ち止まって話続けるわけじゃないんだしさ。」
「それはまぁ確かにそうだけど。俺の考えすぎか?ホントにそうか?」
「この中で不安そうにしてるのみな兄だけじゃん。だから考えすぎなんだよ。ね、みんな?」
「ひよりは良いこと言うわ。この間の買い物だって大して目立ってなかったもの。なんともないはずよ。」
「そうですよ!ウジウジ考えてたってしょうがないんですから!なるようになりますよ!」
「まぁ私には関係ない話だからね。私はペンダントの中でゆっくりしてるよ。」
そう言われるとそう思えてくるから不思議だ。確かに俺が考えすぎていただけかもしれないな。うん、そうかも。
「じゃあ、学校まで行くわよ。みんな準備して。」
ネリネの号令の元みんなが準備し始めた。
自転車で走る田んぼ道。緑色の田んぼの中を走るのは嫌いではない。むしろ好きである。季節の変わり目を感じる事ができるから。ただ、今は隣に並走する異世界人の存在に違和感を感じる。自転車と同じスピードで走るネリネとミル。表情を見ると余裕そのものだ。二人が走り疲れるのは当分先だろう。
「ネリネさん達ホントに走るの早いね!私も魔力を使えるようになったからそのくらい走れる様になるのかな?」
「魔力を持続的に使える様になれば、同じように走れる様になりますよ。その為には日々魔力を使わないといけないですけどね!」
「うへぇ、修行あるのみなんだね!がんばろ!」
魔法を修行中のひよりはできる事なる事全部が楽しいみたいだ。昨日もファイアーボールずっとやってたもんな。
「ねぇ、ミナト。その自転車って誰でも乗れるの?私も乗ってみたいんだけれど。」
「誰でも乗れるけど、練習が必要だね。タイヤに体重を預けるからバランス感覚が必要だし。」
「そうなのね。時間を見つけて練習しても良いかしら?」
「それはもちろん。自転車に興味持ったんだ。」
「私の国にはない乗り物だし自力で走ってるみたいだし。自分の国にないものは体験してみたいわ。」
いろんなことに興味を持つのはネリネのいいところだ。この日本には興味深い物が多いだろう。
「今日も家に戻ったら空を飛ぶ練習をするから、そのつもりでいて。イメージトレーニングはできるでしょうから、日中はそれをやってね。」
「わかってるって。少しでも早く強くならなきゃいけないんだ。時間は無駄にできないよな。」
「その通りよ。今は空中浮遊だけだけど別のこともやる予定だから楽しみにしていて!」
笑顔のネリネ。ネリネさん、修行の時楽しそうにするのなんでかなぁ。特に俺に教える時に眩しくなるんだよなぁ。
しばらく通学路を走り駅が見えてきた。ここから人通りが多いから四人で走る事はできない。俺とひよりは自転車を降り、押して歩いた。部活もないいつも通りの時間。電車の時間とズレているためか思ったより人は多くない。けどウチと同じ高校の生徒はまばらにいる。
「ほら、みな兄!みんなで来たけど、なんともないでしょ?やっぱりみな兄の考えすぎだったんだよ。」
俺たちをみている生徒は0ではないが注目されてるという程でもない。
「私も見られているって感覚はないわ。よかったわね、ミナト。注目されなくて。」
「予想外にも思えるけど良かったよ。これなら大丈夫かな。」
注目されなければ俺の学校生活が変わる事はない。それなら良かった。
しばらく歩き、俺が里見さんに襲われた場所に来た。場所は校門前。坂の下のちょっとしたスペースだ。
「ここでミナト君は襲われたんですね。そんなに広くないですね。」
「狭い場所だったからこそミナトの魔法が効いたのかもしれないわね。広かったら翻弄されてたかも。」
里見さんのスピードは見切れない程ではなかった。ただ、アレが場所のせいで出し切れていないのだとしたら、末恐ろしい。
「じゃあ、またここに迎えにくるわ。ミナトとひより。学院楽しんでね。」
「それじゃまたでーす。」
こうして目立つ二人は帰って行った。さて、俺たちは校舎へ行くかな。




