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45話 修行

 買い物に行った次の日。俺たちは庭に集まっていた。俺たちの戦闘技術を上げるために。

「ミルとも話し合ってみたんだけど、ミナトに今必要なのは魔力のコントロールだと思うのよね。魔力コントロールが今以上にできるようになれば一つ一つの技の精度と威力が増すわ。そして今以上の身体能力が得られる。元々ミナトは魔力が多い方だと思うの。その力が余分なく発揮できれば今以上に強くなれるはずよ。」

 つまり今の俺は魔力コントロールが下手だから力が中途半端にしか出せていないということだ。それをうまく出せれば今以上に強くなれると言う理屈らしい。

「理屈はわかるけど一体何をするんだ?あんまり音が出るようだと近所から不審がられるんだけど。」

「そこに関してはもんだいないわ。スーリアお願い。」

 ここでスーリアが後ろから出てきた。得意顔で出てきた。

「オホン。私の力が必要だということででてきたよ。任せたまえ!結界!」

 スーリアの掛け声と共に地面に手をつける。そこから家の庭全体に透明な四角い空間が展開された。異世界でもみたことのあるスーリアの結界だ。

「この結界は異世界で見せたものと違って防音と視覚ジャマーの効果があるんだ。この結界内の出来事は外には聞こえないし外から見ることもできない。修行にうってつけだろう?」

 と、ドヤ顔なスーリアが説明する。確かにその効果なら修行にうってつけだ。

「この間の敵が強かったからね。我が契約者様には強くなってもらわないと困るからね。」

「というわけでご近所さん関係も問題ないわ。これで思う存分修行ができるわ!」

 ネリネさんがウキウキとしている。あ、これヤバいやつかな。

「これで下準備は終わったわ。ミナトにやってもらう修行は私たちも一緒にやるわ。やる内容は、ミル、お願い。」

「はいはーい。私も久しぶりなんでできるか不安ですけど、やりますね。地の呪縛からその身を解き放て、フリューゲン!」

 呪文を唱え終わるとミルの体が徐々に浮き上がっていった。空を飛ぶ呪文なのか!ゆっくり上昇し、ある程度の高さまで到達したらゆっくり降りてきた。

「ふぅ、久しぶりだから緊張しました。これが今日私たちがやる修行です。そう空を飛ぶ修行です!」

「おお!魔法使いらしい魔法だ!空飛ぶ魔法なんてあったのか!もっと早く知りたかったよ!」

 空を飛べると知り、興奮する俺。興奮するのは俺だけではなく、

「ミルちゃん高くまで飛んだね!魔法少女っぽくてかっこいいよ!」

「見れば見るほど魔法って凄いですね!」

 隣で見ていたひよりと桃花も興奮気味だ。

「今見てもらった空を飛ぶ魔法を覚えるわ。より高度な魔力コントロールが必要になるからシルバーでも覚えてる冒険者は少ないの。私も使ったことないから一から覚えることになるわ。ミルに教わりながら覚えていきましょう。私とミナトは空を飛ぶことを。ミルはよりスピードを出して飛べるようにしていきましょう。」

 ネリネの指示の元俺たちはそれぞれ修行を開始した。


 俺は空を飛ぶためにまず自分の中の魔力を高めた。空を飛ぶために必要な魔力ってどういうものかわからないけれども高めておく。

「よーし、やってみるか!地の呪縛からその身を解き放て、フリューゲン!」

 詠唱を終え魔法を発動する。ん、なにも起こらない?

「ふげっ!?」

 何も起こらないと思った瞬間視界が反転した。どうやら地面に顔が叩きつけられたようだ。ど、どうして。

「あっはっはっはっ!みな兄空飛ぶっていうのに、なんで地面に埋まってるの!あっはっはっは!」

「先輩!大丈夫ですか!?」

 心配そうな桃花が、俺の近くに寄ってくる。俺に優しいのは桃花だけだよな。ひよりは後で泣かす。

「あちゃー、ミナト君魔力を一点に込めすぎちゃったんですね。だから足が空に上がって顔が下がってって反転しちゃったんですよ。もっと体全体に魔力を通す感じですよ。後はイメージが大事です。空を飛んでるイメージが掴めれば飛ぶまでは簡単ですよ。」

「そういうことは早めに教えてほしかったよ、ミル…。」

 ということで言われた通り体全体に魔力を通す感覚で空を飛ぶイメージ…。

「地の呪縛からその身を解き放て、フリューゲン!こんどこそ!」

 詠唱し魔法を発動させる。しかし、

「ん?今度は何も起こらないぞ?どうしたんだ?」

「今度は魔力が足りなかったみたいですね。全く足りないと魔法は発動しません。最初は足に魔力が集中してたみたいですけど、それが分散されたので足りなくなっちゃったみたいですね。」

 ミルが補足する。結構本気で魔力を練らないと空はとべないかもしれないな。

「今度は私がやってみるわ。見てて。」

 次はネリネが行うようだ。ネリネは俺よりも魔力のコントロールが上手い。一回でできてしまうのではないだろうか。

「地の呪縛からその身を解き放て、フリューゲン!」

 ネリネが詠唱し魔法を発動させる。すると、揺れながらではあるが少し浮かび上がった。ネリネは一発で成功させた!10センチほどではあるが数秒間浮かび見事成功させたのであった。

「流石です。ネリネさん!一回でできちゃいましたね!」

「すごいよ、ホント!みな兄とは大違い!」

「初めてで浮かべるなんて相当凄いですよ、ネリネちゃん!私も最初は全然飛べませんでしたから。この調子でいけば結構な高さまで飛べるかもしれませんね。」

「やっぱりネリネには敵わないな。いや、俺だってまだ負けてないし!」

「恐ろしく集中しないとダメね。これが意識しなくてもできるようになるといいのだけれど。」

 ネリネが凄いこと言ってる。それはつまり、歩いたり走ったりするのと同じ感覚で空を飛べたらと言っているようなものだ。

「私ももう少し練習しないと、ネリネちゃんにすぐ追い抜かされちゃいますね。頑張らないと。」

 ミルが少しやる気を出すみたいだ。俺も負けられない。やってやるぞ!


 その後も三人で飛行魔法の修行を行なった。俺は全然浮かぶ気配がない。足に魔力を蓄えれば足だけうかぶんだけどなぁ。

ネリネは徐々に浮かぶ高さが出てきて、今では2メートルほど浮かべるようになった。たった数時間なのにこれは凄い進歩なのだとミルがいう。そのミルは自由な高さで空を飛んでいる。スピードはまだそれほど出していないが、水中を泳ぐよりは早く飛べている気がする。結果としてはこんなものだ。つまり俺だけ進歩がない。これは焦る。

「はぁ…。俺だけ何も変わらない。おかしいな、何が違うんだろう。」

「うーん。ミナト君も全身に魔力を伝わせているのはわかるんですけど何故か飛べませんね。一度キッカケがあれば飛べるようになるんでしょうけど。」

「やってることはミルとネリネと同じだと思うんだよなぁ。」

 そう全身に魔力を伝わらせ詠唱し魔法を発動する。これは変わらないはずなんだけどな。

「私と一緒にやってみましょうか。ちょっと手を貸してください。」

 そう言うとミルが両手を差し出してきた。それに手を合わせて、手を繋ぐ。思ったより柔らかいな。少し照れる。

「じゃあ、いきますよ。魔力を練ってください。」

 言われた通りに魔力を練る。俺とミルの魔力が手を通して混ざり合う。

「せーのでいきますよ。せーの!」

『地の呪縛からその身を解き放て、フリューゲン!』

 詠唱を終わらせ、魔法を発動させる。ミル少しずつ浮かんでいく。俺は変わらず浮かない。その時、ミルが魔力をさらに込めた。すると俺の体も浮かび始めた。数十センチではあるが確実に浮かんだ。浮遊体験はすぐに終わり地面に降り立つ。

「みな兄!今浮いてたよ!ちょっとだけど!ミルちゃんがやったの!?」

「はぁはぁはぁ。はい。ミナト君の浮遊に必要な魔力をこちらで補いました。はぁはぁ。どうやらミナト君の魔力も重たいみたいでちょっとの魔力じゃ浮かないみたいですね。はぁはぁ。もっと気合い入れて魔力を練ってもらえれば空も飛べると思います。」

 息も絶え絶えと言った感じでミルが説明する。相当魔力を練ってくれたようだ。感謝だ。

「ありがとうミル。この感覚を忘れないうちに俺一人でもやってみるよ。」

「えぇ、やってみてください。できなきゃ怒りますよ、流石に。」

 と、珍しく怖い笑顔をするミル。相当疲れたらしい。

「よし。今度こそ。集中。地の呪縛からその身を解き放て、フリューゲン!」

 ミルと合わせたくらいの魔力量を全身に伝わせ、魔法を発動させる。理屈としてはこれで浮けるはず!しかし浮かない。さらに魔力を込める。すると少し体が浮かび始めた!20センチほど浮かび上がった。これ以上の上昇は今はちょっとキツイ。

「湊先輩、やりましたね!20センチくらい浮いてましたよ!流石です!」

「ありがとう桃花。どうだひより、俺にもできたぞ!」

「ミルちゃんの手伝いがあってこそでしょ。調子に乗らないの。」

「まぁまぁ、ひよりちゃん。ミナト君の頑張りあってこそですよ。まぁ、私が力を貸したんですからコレぐらいやってもらわないと困りますけどね。」

 ホント、ミルには感謝だ。おかげで少し空を飛ぶことができた。後はこの感覚を忘れないうちに反復だ!

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