41話 お披露目
「ただいま…。」
ズキズキする傷を我慢しながら家に帰るといい匂いがしていた。もう夕飯の準備ができているようだ。美味しそうな匂いに思わずほおが緩む。ああ、なんとか帰って来れたんだな。
「お帰りなさい、先輩。晩ご飯できてますから、手洗いしてきてくださ…どうしたんですか!?その肩!?」
浅く切られたとはいえ血がどくどく出ていたのだ。そりゃあ目立つよな。誤魔化すことはせずに
「ちょっと襲われてな。ちょっとミルに治してもらいたい。ミルいるか?」
「ええ、居間にいます。治療なら病院に行った方がいいんじゃ…。」
「大丈夫。ミルの魔法で治るよ。」
心配そうな桃花の頭を撫でて安心させる。大丈夫怪我も軽傷だからさ。
「みんなただいま。ちょっとあって怪我したからミル、治してくれないか?」
「怪我して帰ってくるなんてどうしたんですか、ミナト君!?」
「みな兄!?どうしたのその肩!?血がどくどくでてるよ!?」
「いやぁ、色々あってさ。事情話す前に治してくれないかな。ちょっと痛むんだ。」
「見てて痛々しいですからね。わかりました。」
ミルが居間をでていった。数秒で戻ってきた。杖をもってきたようだ。
「癒しの力をここに示さん、ヒール。」
ミルが魔法を発動させると俺の体が白く発光した。特に肩のあたりに優しい光が包み込み肩を癒してくれた。
「ありがとう、ミル。痛みがなくなったよ。」
「どういたしまして。でも、どうしたんですか、一体。その傷斬り傷ですよね?誰かに襲われたんですか?」
「そうよ、ミナト。教えて。この国は平和だから大丈夫って言ってたのはアナタなのよ。なのにそのアナタが襲われてるなんてどういうことなの?」
ネリネにも言われてしまい隠すわけにもいくまい。
「そうだね。俺にとってもまだ信じられない経験だったから整理しながら話すよ。」
そうして、俺は事の次第を話し始めた。
話し終えた俺は一息ついた。当事者である俺も話しててよくわからなかった。
「つまりミナトは、告白してきた女の子を振ったら、ナイフで襲われたというのね。それもミナトよりも強い女の子ねぇ。」
ネリネが何かを考えるように口を閉ざす。なにか言いたいことがあるなら言いなさないな。
「ミナト君を殺して私のものにするって言ってたんですよね?なんですか、その猟奇的な女の子は…。」
「ちょっと前にはやったヤンデレって属性なのかな。好きな人を独り占めしたいっていう。」
「それよりも思考が破綻している気がするよ、ひより。こ、殺そうとしてるんだから。」
みんな俺の言ったことを信じてくれたようだ。とんでもない内容だったから信じてもらえないかと思った。
「私が見た中でもぶっ飛んでる思考回路の持ち主だと思うよ。あんなに命に執着するのは見たことないよ。」
スーリアが付け足してくれる。確かに俺の命を徹底して狙ってきた。理由が自分のものにしたいから。死んだら自分のものにするも何もないと思うんだが。
俺は正直油断していた。日本という国で異世界のように襲われるような事はないと思っていた。もし仮に襲われたとしても、異世界で力を手に入れた自分には敵わないだろうとも思っていた。しかし結果はどうだ。相手に力で及ばず、相手の気が変わらなければ死んでいたかもしれない。平和な世界だと思っていたのは間違いだった。俺は自分の世界が異世界と何も変わらないということを知った。
「また、いつ襲ってくるかわからない。だからネリネ、ミル、スーリア。俺はもっと強くならないといけないと思うんだ。だから力を貸して欲しい。」
「そうね。私たちの国にいた時と同じように鍛えてあげましょうか!」
「そうですね!これは教えがいがありますよ!」
「私は教えるとか苦手なんだけどね。まぁ、できるだけやってあげるよ。契約者様の為だものね。」
「みんなありがとう。俺頑張るよ。」
これで俺のやることは決まった。またいつ襲われてもいいように鍛える。今よりも強くならなくては。
「こういう時私たちもお手伝いできたらよかったんだけど…。」
「そうだね。先輩の力になれなくて、悔しいです…。」
ひよりと桃花もそんなことを言ってくれる。
「気持ちだけで嬉しいよ、ありがとう二人とも。」
二人の頭を撫でてやる。こう言われるとやる気も上がるってもんだ。
「ミナト君ってすぐこういうことするんですよね。それだから勘違いする子に襲われるんじゃないですかね。」
棘のあるような言い方のミルにネリネが頷く。
「それはありそうね。子供の頃から同じことしてたら、好意を持つ女の子がいてもおかしくはないものね。」
「おいおい、そんなことはないだろう。俺モテないんだから。今回が初めての告白だったんだから。なのに、こんなことになるなんて…。」
気持ちが落ち込む。普通の甘酸っぱい感じの青春が血生臭い青春に変わってしまった。どうにかならなかったんだろうか。
俺の襲われ騒動があったため、見落としていたが、ネリネとミルの格好が俺の用意した着替えと変わっていた。ネリネが白を基調にしたワンピータイプで、まさにお姉さんといった格好だ。ミルは逆に黒を基調としたTシャツに白いミニスカートを履いていた。二人とも良く似合っている。どうやら、頼んでいた荷物が届いていたようだ。
「ごめん。いうタイミングがなかったから今になるんだけど、二人とも洋服がとてもよく似合っているよ。どう?着心地は。」
「本当に今更ですね。でもありがとうございます!こういう服自体がなかったので、とても新鮮ですね。むしろおかしいところがないか心配でしたよ。」
「私もそうね。スカートって履いたことなかったからとてもスースーして居心地が悪かったわ。でもひよりと桃花に似合ってるって言われて自信が持てたわ。ミナトにも褒められて嬉しいわ!」
「二人とも素材がいいんだもん。何着せても似合うよきっと。明日のお買い物も楽しみだね!」
「私たちも負けないようにおしゃれしないとね。」
ひより達もやる気満々のようだ。
「でも、買うのは服だけじゃないからな。それを忘れないでくれよ。」
「それはわかってるよ、みな兄。みな兄の財布の中身空っぽにさせてやるんだから!」
「それは怖いな。お手柔らかに頼むよ!」
一人暮らしになっている分普通の高校生より多めにお小遣いをもらっている俺。普段もあんまり使う機会がないから結構貯まってるはずだけど、足りるよな?足りなくてひよりや桃花に借りるってのは情けなくてやりたくない。
「とーこーろーでー。私の服はないのかな?一緒に買ったよね?」
と、スーリアが割り込んできた。確かにスーリアの服も買ってあるはずだ。スーリアは魔力で服を作れるのでいらないと思ったら欲しいって言い始めたんだよな。だから一緒に買ってあるはずだ。
「スーリアちゃんの服もありますよ。こちらです。」
桃花がそばにあった段ボールの中から服を取り出す。それを受け取ったスーリアが嬉しそうに、
「ありがとう、桃花。早速着てみるよ!」
と言った。その瞬間スーリアの服は光の結晶のように弾け飛び、裸体のスーリアがその場にはいた。一瞬の出来事だったので誰もが反応が遅れたが目の前にいた桃花が一番反応が早かった。
「先輩は見ちゃいけません!」
「おわっ!?」
桃花が俺に覆い被さってきて、目を手で塞ぐ。その勢いに俺は桃花を抱き止めるような体勢をとった。すると密着したことに気づいたのか桃花は声にもならない声を出した。
「!?!?!?!?!?」
しかし目を塞ぐのを律儀にやめない桃花。俺も少し恥ずかしくなってきた。
「二人とも何やってるの?」
と少し冷めたような言い方のひよりの一言で俺たちは素に帰った。
「湊先輩にスーリアちゃんの裸を見せないようにしたら、こうなっちゃって…。」
「俺も桃花が怪我しないように受け止める形になったというか。」
「ふーん。そうなんだ。でもスーリアちゃん着替え終わったよ。もういいじゃない?」
確かにスーリアの着替えは終わっていた。俺と桃花はすぐに離れた。スーリアも白を基調とした服で青いスカートを履いていた。これもまたよく似合っていた。
「スーリア!可愛いじゃないか!よく似合ってるよ。」
「流石は私の契約者様。よくわかってるじゃないか。私には何を着せても似合ってしまうのさ!」
満更でもないスーリアが胸を張る。こうしていると見た目相応で可愛らしい。
「じゃあ、今日は色々あったけど、明日は明日で楽しもう!」
おー!と掛け声をあげ俺たちは拳をそらにかかげた。




