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39話 出会いは唐突に

 次の日。今日は金曜日なので明日は休みだ。休みの日にネリネ達に必要な日常品を買いに行かなくてはいけない。いままで、俺の着替えばかり使ってもらってたからなぁ。今日あたり注文した服が届くとは思うけど、それも最低限にしてある。ひよりと桃花が、着る服は自分で見て試着して買った方がいいって言っていたのでネットで買った服は少なめにしてある。それらの買い物に行くんだとみんな楽しみにしている。こちらの世界へ来てからの初めてのお出かけである。物珍しいものも多いだろう。

「というわけで、今日も学校へ行ってくるよ。留守番よろしくな。」

「今日が終われば明日は休みなんですよね?そうしたらお買い物ですね!おっ買い物っ〜!」

「テンション高いわねミル。でも、私も楽しみだわ。こちらの商店はどうなっているのかしら。」

「私は二人に先駆けて今日から外の世界を見てくるよ。いやぁ、楽しみだな湊の国を見るのは。」

 朝早い時間だが、みんなが起きて朝ごはんのパンを食べコーヒーを飲んでいる。ネリネはコーヒーの味を気に入ったのか昨日からよく飲んでいる。ミルにはちょっと苦いのか、砂糖を多めに入れている。スーリアはミルクを入れてマイルドにしていた。

「洋服が今日届くと思うけど、受け取りに出なくていいから。玄関に置いてあってくれるから。」

 今は置き配なるものがあり、直接受け取らなくても荷物を置いておいてくれる。これがあるおかげで学校のある日でも荷物を受け取れる。

「それ大丈夫なの、ミナト?玄関の前に置きっぱなしだと誰かに持って行かれないかしら?」

「大丈夫だよ。俺らの国は治安がいいから持っていく人たちはいないんだ。」

「そうなんですね。どうぞ持って行ってくださいって状態だと思いますけどねぇ。いい人ばかりなんですね。」

 異世界の認識からだと有り得ない考えかもしれないけれど、日本では大丈夫だ。

「だから今日もくつろいでいてくれ。」

「ゆっくり出来るのはいいんですけど、ソワソワしちゃうというか。」

「そうね。今までこんなにゆっくりしてたことがないから、逆に何していいかわからないわ。」

「えーと、庭なら出ていいから修行するとか?」

「修行なら昨日もやったわ。いつもやってることは継続しないとね。」

「なら、テレビとかゲームとかしてみてくれ。こっちの国についても知れるよ。」

「あの動く箱のことよね?アレで国について知れるの?」

「この国のニュース…起こった出来事を流してくれたりするんだ。それ以外にも物語をながしたりするから、この国について知るにはちょうどいいと思う。」

「そういうことね。なら、時間が空いたらミルと見てみるわ。」

「私も魔法の練習して、テレビ見てみますね。」

「ああ。くれぐれも外の人に見られないようにしてな。こっちの国に魔法はないから。」

「わかってますよ〜。何度も言われなくても大丈夫ですよ!」

 二人ともわかってくれていて助かる。スーリアは今日から俺と行動なので、問題ないだろう。


「今日はどうしたんだ、湊。アクセサリーなんてつけて、色気付いちゃって。」

「親からもらったんだよ。海外から送られてきてさ。中々かっこいいだろ。」

「洒落っ気なかったもんね、湊は。ちょうどいいじゃない。」

 いつものメンツで昼ごはんを食べている時、スーリアのペンダントが話題になった。普段使いできるオシャレなデザインだもんなこれ。

「湊のお父さんたち今どこにいるんだっけ?」

「イギリスだったかな、確か。でも当てにならないよ。気づいたら別の国に行ってるんだから。」

「いいアクセサリーあったら、欲しがってた友達がいるって言っておいてよ!私だってアクセサリー欲しい。」

「立花ちゃんはアクセサリーより武器の方が似合って…いやなんでもないです。」

 余計なことを言いそうになった樫村が口を閉じた。立花を見ると拳を握っていた。武器なんていらないよな、その拳が強いんだから…。

「わかったわかった。今度話すタイミングがあれば言っとくよ。どんなものが来ても文句言うなよ。」

「文句なんて言わないわよ。そのペンダント見る限りセンスは良さそうだしね!」

「そうそう、俺にも欲しいくらいだぜ。」

「これは渡さないぞ。俺が気に入ったんだからな。」

 隠すポーズをする。そこでみんなが一斉に笑う。うんうん、今日も平和だ。

「そういえば明日はどうする?どっか行くか?」

 樫村がそう誘ってくる。土日で部活がない日は水谷たちと遊ぶことが多い。でも今週は、

「悪い、今週の土日は俺パスで。用事があるんだ。悪いな。」

 手を合わせて申し訳なさそうにする。今週はネリネ達と一緒に買い物だ。なので、今週は樫村達とは遊べない。

「アレ?部活だったか?」

「いや、先約があるんだ。」

「それって、またあの子達じゃないでしょうね?」

 目を細くしてこちらを見る立花。顔が怖いよ?

「あの子達って、ひよりと桃花のことか?確かにひより達と一緒に出掛けるけど。」

「やっぱりそうなんだ。家も隣で朝と帰りも一緒。随分と仲のいいことで。」

「なんだよ、その言い方。何か言いたいことでもあるのか?」

「別にー。なんでもありませんよー。楽しくしてくればいいじゃない。」

「やっぱり怒ってるだろう。」

「怒ってない!」

 訳のわからない立花の様子にちょっとイラッとくる。こんなに理不尽だったか?

「やれやれ、湊。立花ちゃんは湊と遊べないのが寂しいだけだって。それくらいの乙女心はわかってやれよ。」

「んなっ!?」

 素っ頓狂な声を上げる立花。そしてその手が素早く樫村の首を捉えた。

「そんなわけないでしょ、そんなわけ。何を適当なことを言っているのかしら、コイツは!」

「わかったわかった、悪かったから手を離して!!ギブギブ!首がしまってるからっ!」

「そうか、そうだったのか。次は三人で遊ぼう、立花。だから樫村から手を離すんだ!」

「ぐぬっ…別に寂しいとかじゃないし。勘違いすんなし…。」

 ようやく立花が樫村の首から手を離した。ふぅ、よかった。

「まぁ、そう言うことなので今週は無理だ。また今度な。」

「ゲホッゲホッ。OKだ湊。楽しんできてくれ。じゃあ立花ちゃんは俺と二人で出かける?」

「あんたと二人で?そんなことする訳ないでしょうが。他の子達と出かけることにするわ。」

「振られたな…樫村。」

「別にいいし、俺だって他に遊ぶ子くらいいるし…ぐすん。」

 哀れなり、樫村。


 今日の部活は役者と裏方に分かれての作業となった。と言ってもまだ演目が決まった訳じゃないしそんなに忙しいことはない。俺は小道具や大道具の作成であったり衣装の作成なんかをしている。裏方はやる事たくさんで大変だ。しかし今日はやることがあった。

「最近ここの掃除サボってたからかとんでもないなぁ。休みに入る前に綺麗にしちゃうか。」

 と、前回の作品の衣装や小道具とか工作グッズとかをしまってある部屋がある。次の作品を作るにあたって使えそうな物といらないものを分けていこうと思う。後単純に汚いから掃除だ。俺と後輩二人と計三人で作業にあたる。後輩達にとっては何が何やらだと思うので掃除をしてもらい、俺が必要なものと不必要なものを分けることにする。

「片桐先輩、これはどうしますか?」

「先輩、こっちもお願いします。」

「俺は一人しかいないから片方ずつしか聞けないから!まず、その道具はもう使わないからバラして捨てちゃってくれ。次の衣装はまだ使うかもしれないから端っこにまとめておいてくれ。」

「先輩聞いてるじゃないですか。」

「今回はたまたま聞けたの。次からは一人づつ聞いてくれると助かる。」

 掃除しているとどうしても捨てていいかわからないものも出てくるその指示をしていたら俺の作業はどうも捗らなかった。それで部活の終了時間になったが、俺の作業は終わらなかった。

「凪沙先輩、俺の作業もう少しで終わるので少し残ってもいいですか?」

「できれば無しにしてほしいけど…。やっておきたいの?」

「ええ。このまま休みに入ると少し気持ち悪いので。」

「ならいいよ。思う存分やっちゃって!」

「わかりました。というわけで、ひより。先に帰っててくれ。桃花も一緒か?」

「うん、わかった。桃花と一緒に先に帰るよ。また後でね、みな兄。」

「では先輩。一旦失礼しますね。お先です。」

 と部活のメンバーはみんな外へ出て行った。さてと、残りの作業もやっちゃいますか!


 残りの作業を終わらせた俺が学校を出た時、もう夕暮れも深まり夜になろうとしていた。生徒はもう誰も残っていない時間。先生も鍵締め担当の先生くらいしか残っていないだろう。この時間まで残ったことはなかったので少し新鮮である。暗い学校は普段とは違い、不気味なオーラを発しているように思える。よく怪談の舞台になるだけのことはある。誰も歩いていない坂道を俺は降る。そこで、

『湊、今日の学校はこれでおしまいかい?』

 とペンダントが話しかけてきた。

「おわっ!ここ外だぞ、何話しかけてきてるんだ!」

『大丈夫大丈夫。湊の頭の中に直接語りかけてるから。他の人には聞こえないよ。湊も脳内で話すようにすれば私と会話できるよ。ペンダントモードにしてから追加したんだ。』

 脳内に直接ってなんでも有りだな。俺も驚きつつ真似してみる。

『えーと、こうか?どう?聞こえてる?』

『バッチリ聞こえてるよ湊。OKだよ。でさっきの質問に戻るんだけど、今日は学校おしまいかい?』

『ああ、これでおしまいだ。後は帰るだけだ。どうだった学校は。』

『私にはちんぷんかんぷんだったね。先生達が言ってることも訳わからないし、生徒達が言ってる言葉も分からなかったよ。ぴえんとか好きピとか草とかなんとか。一体なんなんだい?』

『それは所謂若者言葉だな。若い人がよく使いたがる単語なんだよ。俺も全部はわからん。ちょっと特殊だからひよりにでも聞いてみてくれ。』

『湊にもわからない自国の言葉があるんだね。それをひよりならしっていると。ならひよりの方が湊より頭がいいんだね。』

『それはない!断じてない!俺の方が優れている!間違えてはいけない!』

 そこだけは間違えてはいけない。ひよりに負けるのはゲームだけで充分だ。学力では俺の方が上だ、きっと。

『そういうの、負け惜しみって言うんじゃないのかい、湊。情けないよ我が契約者様よ…。』

『そんなことはない、そんなことはないんだ。』

 自転車を回収し自転車を漕ぎ始める。坂道を自転車で降るのは気持ちがいいなぁ。暗くなってきたし、まっすぐ帰ろうとした時だった。

「こんばんは。」

 と前から声をかけられた。透き通るような声で自転車に乗っていた俺にもきちんと聞こえた。その場で自転車を止めると目の前に一人の女生徒が立っていた。ちょうど電灯の真下に立っていたため容姿を確認できた。黒の長髪で頭に髪留めをつけていた。暗がりではあるか目鼻はくっきりとしており、見れば忘れられないであろう美人であった。制服はウチのものではないみたいでブレザーでは無くセーラー服であった。

「こんばんは。」

 ニコッと再び挨拶をされた俺は周りに俺しかいないことに気づきこの少女は俺に話しかけているのだと、ようやく気づいた。

「えーと、こんばんは?」

 自転車をおりつつ戸惑いながらも返事をする。俺に何か用であろうか。

「今日は月が綺麗ですね。」

「!?」

 更にびっくりする内容を言われた。え、何、夏目漱石にならって俺に告白した?嘘でしょ、こんなことってある?こんな美人から?いやいや、普通に出ている月が綺麗だったからそういう感想を言っただけだよな。いや絶対そうだって。

『何をそんなに動揺しているんだい?湊は?』

『今は突っ込んでこないで!俺もよくわかってないから!』

 スーリアからもツッコミが入るが今は気にしている場合ではない。

「えーと、今のは夏目漱石の翻訳の逸話を元にした発言で…。」

「間違ってなかった!?」

 説明してくれた。説明してくれた!?ちょっと癖のある告白だが、人生初の告白を受けて少しテンション上がっている。本来なら知らない人からの告白ってちょっと怖いと思うんだけど、そこは男のサガというか。美人からの告白となればなおのことだ。

「俺と君ってどこかで会ったことあったか?悪いんだけど俺にはその記憶がなくて。」

「記憶がなくてもおかしくありません。お話ししたのも小さい子供の時ですし、最近は会っていません。本日久しぶりにお会いできて私は嬉しいです。」

「そうだったんだ。ごめんね、俺も覚えてたらよかったんだけど、そうじゃなくて。」

「いいえいいえ。とんでもないです。私こそ急に来てしまってごめんなさい。私も気持ちが抑えられなくなってしまって。もう会わずにはいられないと思って来てしまいました。」

 話せば話すほど俺の事を想っていることがわかる。え、ホントに?こんな可愛い子が俺の事を?幼少期に会ったことがあるらしいが、俺としては初対面だ。いくら可愛い子だからといえど告白されてすぐに付き合うってどうなの?まだ、この子の事を何も知らないのである。簡単に答えを出すのはこの子に対して失礼に当たるんじゃないだろうか。それに、ネリネ達の事がある。この子と付き合うとネリネ達の事があるので、蔑ろにしてしまうかもしれない。やはり今回は付き合うべきではない。一度友達になってからでも遅くはないと思う。そう話そう。

「片桐君小さい頃からカッコよかったけど、今もカッコいいですね。惚れなおしちゃいました!」

 こんなにいい子なのに振るの俺っ!?いや、一度決めた事を変えちゃダメだ。

「ありがとう。でも告白してくれたのは嬉しいんだけどさ、ほら俺の方は名前も知らないしさ。」

「私の名前は里見咲良です。これで名前も知り合えましたね!」

「いや、そう言う事じゃなくてさ。里見さん。俺からしたら会って間もないからさ。そういうのってもっと知り合ってからの方がいいと思うんだ!」

「確かにそれも一理ありますね。でも関係を気づいてから、お互いの事を知り合うのも良くないですか?」

 結構グイグイくる子だな。俺としてはもう決めた事だからどう断ればいいか考えるしかないんだが、

「それも確かにあるね。でも俺としては関係を気づく前に君の事を知りたいというか。ダメかな?」

 そこで下を向いてしまった里見さん。ちょっと悪い事をしてしまった気になるがここはぐっとこらえる。

「そうですか。わかりました。私ではだめということですね。本当はうちに来てもらってからにしたかったんですけど、しょうがないですね。」

 言っている意味がわからず、

「何を言ってるの?里見さん?」

 と問いかけた瞬間。里見さんはその場から消えて、俺の目の前にまで移動してきていた。いつかのネリネのように超高速で移動したようだ。そこで感じたのは異世界でも感じたことのある殺気。命の危機を彼女から感じた。しかし感じたところでもう遅い。目の前の里見さんはどこからか取り出したナイフを俺の首を目掛けて斬り込んでおり、命を断とうとしていた。

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