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37話 ホームルーム前

 学年の違うひよりとは昇降口で別れ、教室へ向かう。ホームルームの時間はまだ先なので、廊下にいる生徒もまばらだ。そんな生徒の間をすいすいと抜けていき目的地である自分のクラスへと辿り着く。教室の中もまばらだ。しかし、仲のいい友達はもう登校していたようで、俺が教室に入ったのを見つけると手を上げて近くにくるのを待っていた。

「よぉ、サボり魔。今日はちゃんと来たんだな。来てくれないと色々と困るじゃないか。」

「おはよう、樫村。昨日はちょっと用があってな。って俺がいなくても何も困らんだろう。」

 話しかけてきたのは一年の頃からの友人の樫村宗弥だ。当時、席が近くだってこともあり仲良くなったんだ。中々のイケメンでよく女の子と一緒にいる。

「お前がいないと誰が俺のノートを取ってくれるんだ?俺の友達の中でノート貸してくれるのはおまえだけなんだって!」

「昼寝せずにキチンと取ればいいだろうに。」

「そんなことできるならやってるさ。でも授業って、最高の子守唄に聞こえないか?」

「いやまぁ、言いたいことはわかる。でも最低限ノートくらいは取ろうぜ。」

「でた、真面目ちゃん!でも、なんだかんだ言ってもノート貸してくれる湊くんが好きなんだよね!ありがとう!」

「まったく調子のいいことで。」

 ちょっとお調子者な感じではあるが悪いやつではない。一緒に話をしていて退屈もしない。

「それにしてもさ、湊。連絡も返さないでなにしてたん?毎回律儀に返信するお前としてはめずらしいんじゃない?」

「ちょっと親絡みで急用ができただけだよ。たいしたことじゃない。」

 嘘をつくのは心苦しいが、本当のことを言うわけにもいかない。無難なところでいかせてもらう。

「ふーん、ならいいけどさ。でも心配性のお前んとこの部長さん。昨日連絡がつかないって言って俺んとこまで来たぞ。過保護すぎじゃないか?」

「あー、お前のとこまで来たかー。早めに連絡しといた方がいいかもなぁ。」

「なに、まだ連絡してないの?また、乗り込んでくるんじゃないか?」

 からかい半分に言ってくる水谷。いや、それは冗談じゃ済まない気がする。

 机にカバンを置き、スマホを開いてみる。異世界にいても時計ぐらいしか見ることないからずっと電源オフにしてたもんだから、久しぶりに開いたな。少し読み込んでメッセージアプリを開く。

「ゴフッ!」

 ちょっとむせた。未読が…75件!?

「どしたん?深刻そうな顔になって?」

「樫村達からのメッセージを差し引いても69件届いてる…。これは一大事だぞ樫村…!」

「なんと…。愛されてるな、湊…。」

 中身を読んでみると最初の方は、

『部活に来なかったので心配で連絡しました。いかがなさいましたか?』

『本日学校に来てないみたいですけど、どうかされましたか?』

『ひよりちゃん達にも聞きましたが、ひよりちゃん達もわからないようで…。連絡待ってます。』

『私何か気に触ることしてしまったでしょうか?もしそうなら謝りたいです。』

『お願いします。連絡をください。お願いします。』

 内容がドンドンエスカレートしていっていた。ひぇぇ。とりあえず、今日は学校に来ていると言うことと昨日は急用で連絡が取れなかったと連絡しておいた。これで納得してくれるといいけど。すると廊下の方が騒がしくなった。何やらダダダダッと走る音がする。その音が俺の教室の前で止まると、

「湊君!見つけたよ!」

 ちょっと騒がしい女性が現れた。この女性こそが俺に69件もメッセージを送ってきた西野凪沙先輩だ。凪沙先輩は一つ上の三年生で演劇部の部長をしている。三年生の中でも抜きん出て美人である。え、なんでここに…?

「ようやく見つけたよ!なんで私のメッセージを無視したのか説明してくれる?せっかく何通も送ったのに全部無視するんだから。ことと次第によっては覚悟してもらうよっ!」

 メッセージの文とは全然違う喋り方にびっくりしそうになるがこっちが素なので問題ない。メッセージだと丁寧になる人っているよね。

「それはですね、凪沙先輩。俺にも事情というものがありまして…。連絡返せなかったのは申し訳なかったですけど。」

「私と君の仲はそんなものだったのか?ちゃんと説明してくれないとわからないよ。」

 先輩の言いように周りがザワつく。え、なんか勘違いされてない?

「連絡がなく私がどんな思いで過ごしていたのかなんて湊くんにはわからないわ。とても不安だったのだから…。」

「凪沙先輩?俺が悪かったですから、そろそろ顔を上げてください。後周りが勘違いしてそうなので、紛らわしい言い方はやめてください!」

 完全に俺が悪者みたいな言いように周りの視線が痛い。まぁ、返信しなかった、俺が悪いのだが。

「えーと、メッセージにも書きましたが、親の用事でちょっと作業してたんですよ。それで忙しくて返信する暇もなかったんです。これでわかってくれますか?」

「本当に…?私に愛想をつかしたとかそんな理由ではないかい?」

「そんな理由ではないです。そんなはずがないでしょう。それこそ俺と先輩の仲なんですから!」

 この言葉に納得したのか、凪沙先輩は顔をあげて笑顔を見せてくれた。とてもまぶしい!

「そうか、それならよかった。でも出来ればちょっとでもいいからメッセージの返信は欲しいかな。心配になるからね。」

「はい、わかりました!気をつけます!」

 凪沙先輩の欠点はこのネガティブ思考なところ。普段の喋り方からは想像つかないけど結構なネガティブさん。

「ところで今日は放課後、部活には来れそう?ご両親のお手伝いも終わってるの?」

「ええ、終わっていますから今日は参加しますよ。そう何日も休んでいられませんから!」

「そっか。なら安心。また放課後ね!」

 と、踵を返して凪沙先輩は帰っていった。嵐のような感じだったな…。

「なぁ、湊。」

 と、いつになく真剣な顔の樫村がこちらを見ていた。

「な、なんだよ。」

「なんで、アレで西野先輩と付き合ってないんだ、お前?どう考えてもおかしいだろうが!」

 樫村がこちらを指差した。何このテンション。

「なんでって先輩と付き合うって考えたこともないよ。向こうだって同じことを思ってるとおもうよ。」

「いーや!普通のカップルよりも親密な関係っぽいんだよ、お前達は!それになひよりちゃんのこともある!あんなに可愛い幼馴染がいてなんとも思わんのか!」

「ひよりとは昔から一緒だから今更思うところなんてないぞ。何故もてはやされてるのか不思議なくらいだ。」

「…はぁ。湊や…。お前もしかして、女に興味ないの?」

「!?何を言う、樫村!そんなわけあるか!」

「だってそうだろう!?あんなに美人に囲まれて浮いた話一つせんとは!女に興味がないと思われてもしかたあるまい。」

「そんなことはない!俺は女の子が大好きだっ!」

 つい話に熱中してしまい、そんなことを叫んでしまっていた。教室のど真ん中で。クラスがシーンとなった。え、そんなに声大きかった?みんなに聞こえた?やだ、死にたい…。

 そんな空気を壊してくれたのが、

「朝からどんな会話してるのよ、あんた達!」

 とスパッーンと手に持った教科書で俺の頭を弾いた女生徒だった。

「するにしても時と場所を考えなさいよ。ここは教室、時間は朝。もっと爽やかな話題にしなさい。」

「痛いな、立花!もっと優しくできないのか?」

「これでも充分優しくしたつもりよ。角が当たったわけじゃないでしょ?」

「角はヤバいって角は…。」

「立花ちゃん、中々暴力的だからな…。」

「そこっ!聞こえてるわよ!」

 俺たちに突っかかってきたのは立花七海。同じクラスの女生徒だ。俺と樫村とは友達でよくクラスでも話している。たまに休日も遊んだりしている。

「まぁ、アホな会話してない方がおかしいか、アンタ達なら。まともな会話してたらゾワっとくるわね。」

「俺たちを馬鹿にしてるな、立花!何か言ってやれ、樫村!」

「えーと、やーい、ばーかばーか!」

「樫村…。」

 樫村の語彙力はやばかったようだ。俺が馬鹿だったわ。

「とにかくもうすぐホームルームの時間なんだから、大人しくしてなさい。後、湊は私にジュースを買ってくるように。」

「えっ!?なんでだよ!」

「私に黙って学校サボったことと、メッセージ無視した件でジュース奢りです。わかったわね。」

「お、そう言うことなら俺もな、湊。俺も傷ついたしなぁ。」

「おのれ、貴様ら…!」

 この件については俺が悪いので黙って従っておく。もうこの件について突っ込んでくる人いないといいなぁ。

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