36話 久しぶりの登校
次の日の朝。俺は自分のベッドという最高に寝心地の良い場所での快眠から目を覚まし、一階のリビングに降りてきていた。
「ネリネおはよう。よく眠れたかい?」
「おはよう、ミナト。とても快適だったわ。ミナトは久しぶりの自分の布団で快適だったのではないかしら。」
「実はその通り。いつも以上にぐっすり眠れたよ。」
「それはよかった。ミルは疲れていたのかまだ寝ているわ。スーリアはどうしたのかしら?」
「この世界に馴染むために剣を調整してるみたいだ。まぁ普段から睡眠を必要としてないから大丈夫だろうけど。」
スーリアは昨日からずっと作業をしていた。この世界でも違和感のないようにするらしいけど、どうするのだろうか?
「ところで、ミナトは今日どうするの?私たちは洋服が届くまではこの家で待機してるしかないのだけれど。」
昨日、ひよりと桃華に手伝ってもらって三人分の洋服をネットで注文したのだ。届くのに2、3日かかるからそれまでは家の中で待っていてもらう。
「ウチの庭なら周りが木で囲ってあるから外から見えないから出て大丈夫だよ。俺は今日学校があるからそこへ行くよ。」
「学校?ミナト、学院に通っていたの?」
「俺たちの国なら俺たちと同じくらいの年齢の人は学校へ通っているんだ。」
「へぇ〜そうなのね。この国はみんな裕福なのね。じゃあ私たちとは別行動ってことね。」
「そうなるね。ミルに調理場の使い方は教えてあるからお昼はミルにお願いしてくれ。夕方には帰るから待っていてくれ。」
そう伝えると朝の支度をし始める。歯を磨いて頭を整えて、制服に着替える。たったこれだけのことなのに、とても久しぶりに行えて嬉しく思える。俺、元の世界に帰ってきたんだな。着替え終わったのと同時に玄関からピンポーンと音が鳴る。ひよりがやってきたようだ。
「おはよう、みな兄。迎えにきたわよ。あ、ネリネさんもおはようございます!今日も綺麗ですね!」
俺とネリネとで態度がガラッと違うひより。こんなせいかくだったか?
「おはよう、ひより。あなたこそ、今日も可愛いわね。迎えにきたってことは、あなたも学院に行くのね?」
「はい!みな兄と一緒に朝は登校してます。ウチの親が心配性なもので…。」
「無理もないわよ。一人で行動するのは危険が伴うもの。その点ミナトがいれば安心ね。それと私に敬語はいらないわ。普通にお喋りしましょ?」
「わかった!ネリネさん!」
二人の仲も徐々に深まっているようだ。よきかなよきかな。
「お待たせ、ひより。じゃあネリネ行ってくるね!」
「行ってらっしゃい、ミナト、ひより。楽しんできてね。」
俺とひよりはネリネに見送られながら、学校へ向かうのであった。
「昨日から魔石を手離さずずっと持ってるんだけど、魔力なんて感じられないよ?そもそも魔力を感じるってどんな感じなの?」
通学の途中、そんなことをひよりから聞かれた。俺が教える立場になれるだろうか?
「えーと、俺も最初わからなかったんだけど、胸の中をもやぁ〜って感じで、ぐわしって感じだ。」
「何それ!意味わかんない!」
「こればっかりは上手い例えが見つからなくて…。でも魔石を持ってればいつかはわかるよ!明確に違うからな!」
「むむむ、なんかテキトーだなぁ。ホントに魔法を使えるようになるかなぁ。」
「そこはミル先生もサポートしてくれるし大丈夫だって!俺も魔法はミルに教わったし!」
「まぁ、確かに。みな兄に教わるよりミルちゃんの方が教え上手だろうけど。昨日の料理の手捌きも器用だったし。」
料理の器用さと魔法のうまさは違う気がするけど黙っとこう。
「私たちも魔法少女デビューが近いってことだよね!めっちゃ楽しみ!衣装チェンジの魔法とかあるのかな?」
「魔法少女って…。衣装を変える魔法があるなら昨日服買わなかったんじゃないか?」
「あー、そうだよね…。そう言われてみればそうかも…。」
ひよりは声のトーンを落としてそう言った。ちょっとショックだったのかもしれない。なりたかったのか、魔法少女。
「そこはコスプレすれば良いんじゃないか?」
「えー、買うのはちょっと恥ずかしいじゃん!それに魔法で変身するのに意味があると思わない?それがロマンというやつだよ、みな兄!」
そう言われてみればそんなような気がする。ロマンのわからない男ではないぞ、俺は!
「魔法を早く使ってみたいけど、焦ってもしょうがないもんね。」
「そうそう、何事も手順が決まってるんだから、焦らなくても大丈夫!」
「みな兄でもできたんだもん。私と桃花にできないわけないよね〜!」
「なにおー!俺には特別な才能があるって言われたことがあるんだ。向こうの世界のすごい人に!だから魔法の才能はあるんだよ、俺は!」
「えー、そうなのー?みな兄の不器用さは知ってるよ!到底才能があるようには思えないけどなぁ?」
「ふん。どうとでも言え。実際魔法を使える分俺がリードしてることには変わらないし。」
「それは実際教わったのがみな兄の方がはやかったからでしょ?すぐ追いついちゃうもんね!」
これだから生意気な幼馴染は。あー言えばこう言う。
「そうだ、それはそれとして。今日は部活に出なきゃダメだよ。部長とか心配してたから。あんまり部長を心配させてたらダメだよ?」
あー、昨日は学校にも行ってないから余計心配させたかな。異世界帰りでスマホの電池も切れてたから連絡も返せてないし。学校着いたら連絡しとこ。
「ん?でも昨日家に来た時間からするとお前も部活休んだだろ!その時テキトーに言っといてくれたらよかったのに!」
「私と桃花は用事できたって言って帰ったよ。みな兄のことは知らないよって答えといた。実際あの時は意味わかんなかったし!」
確かに何も説明しないで帰ったのは俺だ。あの時はそうするしかなかったからな。しかし上手いこと言っておいてほしかった。
「今日はちゃんと出るさ。何やる予定だったか思い出さないといけないからさ。」
そう。ひより達からしたら1日でも俺としては数ヶ月ぶりの学校である。部活でなんの作業をしてたのかすっかり忘れている。何やってたっけ?
そんなこんな話しているうちに学校の入り口に着いた。相変わらず長い坂道である。今のうちにひよりには伝えておかないといけないことがある。周りに生徒がいないことを確認してから、
「ひより。大丈夫だと思うけど、ネリネ達や魔法のことは俺たちだけの秘密な。部活の人たちにも内緒。わかったな。」
「えー、みんなにも内緒なの?部長とかは知ったら喜ぶと思うけどなぁ。」
こいつ、言うつもりだったな。先に釘を刺しておいて正解だった。
「確かにみんな知ったら喜びそうだけど…。魔法ってこっちの世界にはないものだろう?あまり広めない方がいいと思うんだ。それにネリネ達の負担にもしたくないんだ。どうだろう?」
「うーん、そう言われれば確かにそうだね。ネリネさん達の負担になるのはよくないよね。わかった!桃華にも伝えておくね!」
「頼むよ!桃花もわかってくれると思うんだ。」
ただでさえネリネ達の容姿は目立つ。そこに魔法のことまでバレてしまったらどうなってしまうかわからない。それこそ平和な生活が行えなくなるかもしれない。そうならないためにも色々と考えて行動しなくてはいけないと思う。
「案外色々考えてるんだね、みな兄。」
「世話になった人達だからな。不便はなるべくかけたくないだろう?」
「それもそうだね!私も考えるよ。悲しい思いさせたくないもんね。」
「よろしく頼むよ!」
ネリネ達に快適な現代生活を送ってもらうために努力は惜しまないつもりだ。




