35話 説明会②
快適な昼寝を終えた俺達はリビングでくつろいでいた。今日はもう何もする気になれない。そんな気分だった。そろそろ夕飯の時間だが、俺は料理がほとんどできない。他の三人もこっちの世界では調理をしたことがないからできないだろう。しょうがなく、出前でも取ろうかと思った時に、
「ピンポーン」
と、チャイムが鳴った。
そう言えば、夕飯時に来るって言ってたなと思い出しながら玄関のドアを開ける。
「やっほー、来たよー。」
「先輩、さっきぶりです。どもです。」
ひよりと桃花がやってきた。二人とも制服のままだ。
「おう、来たな。って言っても何も用意してないんだけどさ。」
「みな兄が料理できないのは知ってるから大丈夫だよ!今日は私と桃花で晩御飯作るよ。」
「皆さんお疲れのようですからね。お口に合うといいんですけれど。」
今日は二人が料理を作ってくれるようだ。二人とも料理は上手だから任せても問題ないだろう。
「そうか、悪いな。ありがとう。ささっ、中に上がってくれ。」
そう言いながら、二人を中へ招き入れた。
「皆さん、こんばんは!今日は私達が夕飯作りますね!」
「それはありがたい。こちらの国の料理を食べてみたいと思っていたところなの。ありがたく、ご馳走になります。」
「私にもお手伝いさせてください、ひよりちゃん!桃花ちゃん!私も料理は得意ですから、邪魔にはなりませんよ〜!」
「そうですか?なら、一緒に作りましょう!」
ミルを加えた三人で料理を作ってくれるようだ。どんな料理が出来るか楽しみだ。
「ところでミナト。明日からこの世界について見ておきたいんだけど、外出してもいいかしら?」
「うーん、外出か…。実はみんなの容姿と格好って俺の国だとちょーっと目立つんだよね。せめて格好だけでもこの国に合わせた方がいいかなって思うんだ。だから、洋服が揃うまで家に居てもらいたいんだ。」
「そういう理由があるんなら仕方ないわね。でも洋服なんてどこで手に入れるの?ミナトが買ってきてくれるの?」
ネリネが首を傾げてこちらを見る。そういう仕草が無駄に可愛いな。
「そこはひより達とも相談するけど多分ネットで買うのが早いかな。えーと、家まで荷物を届けてくれるサービスがあるからそれを使おうかなと。」
「そんなサービスがあるの!?なるほど、家まで届けてくれるならその分労力が減るものね。そこに目を付けた商売なのね」
「それを使えば家に居ても服が買えるから便利だよ。」
ミルやスーリアはともかく、ネリネは背が少し高いからネットを使った方が種類が多いだろう。ひよりや桃花に手助けして貰えればより良いものが買えるだろう。
「それは便利ね。ならそれで洋服が手に入ってから行動することにするわ。ずっと家に居ても肩がこりそうだし。」
「そうしてくれ。出来る限りのことはするからさ。」
とりあえずの目標は決まった。先行きに不安がないわけではないが、なんとかやっていくしかない。
三人が作ってくれた夕飯を食べ終え、部屋の中にゆったりとした空気が流れる。心地良い満腹感の中少し眠くなってくるこの感じ、いいですよね…。
みんながゆったりしてる中やかましい奴が一人いた。
「ちょっと、みな兄!さっき言ってたドラゴンについて教えてよ!あと、見せてくれた魔法ももう一回見せて!」
「食べ終わったばかりだというに、落ち着きがないねお前は。ちゃんと話すってば。えーと、とあるモンスターを退治した後にドラゴンがやってきたんだ。黒くてでかい奴でさ、とても強かった。漫画に出てくるドラゴンを思い浮かべればそのまんまさ。俺たちで力を合わせてドラゴンに立ち向かったけど、強すぎてな。返り討ちにあってしまった。ドラゴンの攻撃を受けた時に、不思議なことにこっちの世界に帰ってきてたんだ。なんとも不思議な話さ。」
今日のことを思い返しながら、俺は簡単に説明した。そう、不思議なことなのだ。ドラゴンのブレスを喰らった俺たちはそのまま死ぬはずだった。だが、実際は異世界転移が行われただけだった。運がいいことなんだけど、なんとも説明しづらいところである。
「そうなんだ〜。そのドラゴンってとっても強かったんだね。みんなの格好が汚れてたもんね。まさに満身創痍って感じでさ。」
「そそ。だからさっきまで寝ちゃうくらい疲れてたってわけさ。ドラゴンについてはあまりに強すぎて二度と戦いたくないね。」
二度と会いたくもない。遭遇することがあったら、絶対にロクなことにならない!
「じゃあ、次は魔法見せて!さっきのとは違うのがいいな!」
「魔法ということであれば、このミルにお任せください!さっきのより凄いのいきますよ〜。」
そういうとミルは立ち上がり、手のひらを上に向けた。その手のひらから、小さな氷が現れた。その氷はどんどん大きくなっていき、両手のひらくらいの大きさまでになった。そして、そこから形が変わっていき、馬の形にかわった。いや、よく見るとツノが生えているからユニコーンか。ユニコーンの形の氷像が出来上がった。
「ふふん、どうです!詠唱無しでもこのくらい出来るのが私の凄いところですよ!素晴らしいでしょう!」
「ミルさん、これ凄いですね。本当に何もないところから作っちゃった。魔法って本当にあるんだね!」
「凄いね、ひより。あのー、魔法って私たちにも出来るんですか?出来るのであればやってみたいんですけど。」
「どのくらい出来るかは人それぞれですけど、魔法は使えますよ!魔石を肌身離さず持っていれば、魔力が備わります。その魔力を使って魔法を使うんです!」
「でしたら、私たちにも教えてください。魔法、使ってみたいです。」
と、興味を示す桃花。桃花普段がクールだから知らなかったが、魔法に興味があったとは。魔法も、ふーんと知らん顔するかと思っていた。
「では、お時間ある時に教えましょう!魔石はずっと持っていてくださいね。魔力が体内に溜まっていきますから。はい、どうぞ。」
そう言うと、ミルが二人に魔石を渡す。俺もそんな時期があったなぁと懐かしむ。
「魔石余ってるのか!余ってるなら私にもちょうだいよー。」
隣からスーリアが口を出す。スーリアにとって魔石は癒しだから使いたいのだろう。
「そんなに多くないのでダメです。この国に魔石があったら、それをあげますよ〜。」
「絶対だよ、絶対だからね!あー、この国の魔石も楽しみだ〜。」
この国にも魔石ってあるのかな?パワーストーンとかがそれに当たるのかな?
その後も俺が異世界に行ってからのことを説明した。ひより達からしたら5分足らずでも俺にとっては数ヶ月のできことだ。話すことはたくさんある。
「そっかー。みな兄はネリネさんとミルちゃんとスーリアちゃんに助けられながら異世界を過ごしたんだね。」
「皆さん。湊先輩を助けていただきありがとうございます。皆さんが居なければ先輩はどうなっていたか…。」
二人が格好を正してネリネ達に向かう。
「私たちもミナトと楽しく旅ができたもの。お礼を言われるほどのことはしてないわ。」
「そうですそうです!」
「私は湊が居なければ外の世界を見ることが出来なかったからね。むしろ感謝したいのはこちらの方さ。」
お礼を言われたネリネ達は大したことじゃないと言うように答える。俺としてはとても感謝している。
「私としてはみな兄がみんなに迷惑かけてなかったかだけが心配だよ。幼馴染として!」
「迷惑はそんなにかけてないよ!多分!」
「あら、そうだったかしら?」
「ちょっとネリネ〜!?」
やはりネリネには一本及ばない。からかわれてしまった。
「先輩も楽しく過ごせていたみたいですね。酷い目にあってないみたいでよかったです。」
「そうだな。あまりそういうことはなかったな。」
実は酷い目にはあったよなぁ。剣に貫かれたりしてるしね。そのおかげでスーリアと出会えたんだけどね。
「…でも異世界で仲良くなった人がみんな綺麗な女性ってのはどうなんですかね…。」
「ん?何か言ったか、桃華?」
「いえ、なんでもないですよ!先輩は異世界でとても強くなったんじゃないですか?」
「まだまだだけど、多少は強くなれたと思う。こっちの世界に戻ってきたからもう強くなる必要はないだろうけど。」
そう、こっちの世界にはモンスターがいない。剣を持った盗賊もいない。これ以上強くなる必要はないのだ。
「ミナト。一度剣を握ったなら修行は続けるべきよ。何も力が強くなるだけじゃなくて心もつよくなるのだから。」
「そうだよ、契約者様よ。私も寂しいじゃないか。一応剣なんだ。振ってもらってなんぼだよ。」
「ううむ、確かに言われてみればその通りだな。時間を見つけて修行は続けるか。」
剣を振ることは日課になっている。健康のためにもいいかもしれない。
「魔法も練習していきましょう!魔法は奥が深いですよ〜。」
ミルもそう言ってくる魔法は個人的にも興味があるところだ。
「ああ、よろしく頼むよ、ミル。」
異世界から帰ってきても異世界の習慣は抜けそうになかった。




