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32話 突然の現代

 ドラゴンのブレスに飲み込まれた俺たちは、何故か現代に来ていた。何を言っているかわからないと思うが俺にもわからない。目の前にずっと再会したかった、ひよりと桃花がいる。いきなりのことなので嬉しい気持ちももちろんあるが少し困惑している。

「みな兄?その格好はなに?コスプレしてるの?急にいなくなったと思ったらなんでコスプレしてるの!?」

「いや!これにはふかーいわけがだな!」

「そうですよ、湊先輩!突然いなくなって私たち凄く心配したんですから!そうかと思ったら何やら綺麗な人たちと一緒に現れて…!何がどうなってるんですか!」

「それは俺のセリフなんだよな!何がどうなってここに帰ってこれたのかわからないけど、二人にまた会えてよかったよ。ただいま。」

「凄い大袈裟じゃない?たかだか数分いなかっただけで。」

 数分?俺は数ヶ月は異世界にいたはずだが、なぜ数分なんだ?

「とにかく、急にいなくなってびっくりさせようだなんて、ちょっと性格悪くなってない?みな兄?美人さんまで連れてくる手の込みようだし!」

「流石にイタズラでできる内容じゃなかったよ、ひより。突然消えたり、現れたりってできるものじゃないよ!」

 こっちも混乱しているがひより達も混乱しているようだ。

「ミナト?この人達は?」

「そうですよ、ミナト君。お知り合いの方ですか?」

 放っておかれたと思ったのか恐る恐るネリネとミルが問いかけてきた。それに答える前にひよりが、

「ミナト?ミナト君?みな兄ったら、ずいぶんとその人たちと仲が良いみたいだね?」

「先輩にそのように親しい綺麗な外国の女性がいらっしゃるとは思いませんでした。一体いつの間に…。」

 何だが言葉に棘を感じる。ちょっと背筋が冷たくなる。一旦落ち着いて今の状況を考えてみる。まず、俺とネリネとミルの三人はドラゴンのブレスに巻き込まれた。正直そこで死んだと思ったけど何故か現代に帰ってきていた。そして、ひよりと桃花と再会できた。

 異世界では数ヶ月過ごしたはずだったが、現代では数分しかたっていないらしい。時間の経過に違いがある。ひより達からしたら俺が急に消えて、数分経ったら女性二人連れて急に現れたというわけだ。たしかにそれは驚くよな。

 驚いているのはこっちも同じだ。ブレスをくらって死んだと思ってたのに、気づいたら現代だもんな。異世界転移するのにブレスが必要なんて聞いてないぞ!次回同じことしろって言われても避けるね、絶対!

 そして一つ思い至ったことがある。今俺は校舎へと続く通学路の途中にいる。今は朝早い時間なのでひより達以外に生徒の姿は見えない。しかしこのままでいたらそのうち生徒達も登校してくるだろう。そこで俺の姿を見られたらどうなるだろうか!?知らない人から見たら、朝っぱらから外国人の仲間を連れて学校でコスプレをする痛いやつ扱いされないだろうか!?いや、される!今しなきゃいけないのはバレないように移動することだ!

「ひより、桃花!言いたいことがあるのはわかる。わかるんだが、今ここで言い合うのはよそう!このままだと俺は学校内でコスプレ野郎ってあだ名で卒業まで過ごさなきゃいけなくなる。というわけで、さらば!いくぞ、ネリネ、ミル!」

「みな兄!?こらー!待ちなさい!」

「湊先輩!?まだ話は終わってませんよ!」

「ミナト、待って!何が何やら!」

「ミナト君はやっ!?待ってくださーい!」

 みんな何かしら言っているが今は気にしてられない。今はバレないように家に帰ろう…!



 校舎を背に向け家へと帰る俺たち。登校する生徒たちがいることも忘れずに林を通って見つからないように帰っている。見つかったら不審者だ。

「ねぇ、ミナト。色々と聞きたいことがあるんだけど、いいかしら?まず、なんでこんなにコソコソ移動しているわけ?」

「なんでって、この格好だとおかしいからだよ。俺の国では、下手したら警官が来るレベルでおかしいからね。武器なんて持ってるだけでアウト!後、恥ずかしい。」

「何…だと…?そんなのおかしいですよ!ミナト君!私の街でも可愛いと評判だったこの服が恥ずかしくておかしいなどと!」

「お前たちの国の常識は俺の国では通用しないの!わかったら、バレないようにコソッと移動してだな…!」

「そこもおかしいけど、もっと気にすべきことはあるでしょう!なんでドラゴンのブレスを受けて生きているかだとか何故ミナトの国に来ているかとか!」

「そういう話は俺の家についてからにしよう。外でしてたんじゃ目立ってしょうがない。」

 文句を言う二人をなんとか黙らせて移動する。俺だって混乱してるんだ、考える時間をくれたっていいと思う。

 林を通るのもそろそろ限界だな。空でも飛べたら楽なんだけどなぁ。

「なぁ、ミル。姿を消す魔法とかないか?見えなくするやつ。」

「覚えてないですよ、そんな便利な魔法。覚えてたら、さっきのドラゴン戦で使ってましたよ。」

 それもそうか。それにしてもついさっきまでドラゴンと戦ってたんだよな。忘れてしまうほど、のどかな我が町である。

 仕方ない。林を通れなくなったので普通に走ることにする。近くに人の気配を感じたら隠れる。これでいこう。建物が多くなってきたら屋根の上をぴょんぴょんすればいいしな。



 そんなこんなで苦労して家までなんとか帰ってこれた、俺たち。多分誰にも見られていないはず。

 久しぶりに見る我が家は何も変わらずにそこにあった。家を出かけた時と同じだ。それもそのはず、俺から見たら数ヶ月ぶりでも実際は一時間そこらしか経っていないのだから。そこも不思議なところである。何故時間の流れがこうも違うのか。それも今後考えていく必要がある。

 ともあれ俺としては数ヶ月ぶりの我が家である。色々考えるのは後でもいいだろう。鍵を開けて家の中へと入る。懐かしの我が家だ。

「ここがミナト君のお家ですか〜。入り口は案外小さいんですね。」

「本当ね。板張りでできているのかしら?え?土足厳禁?靴を脱ぐの?そうなのね、不思議ね。」

「ここまできたら出てきてもいいだろうね!ずーっと剣の中にいるのも窮屈だったからね!やっと解放されたよ〜。」

 と、我が家は我が家でも異世界に侵略されたような気分だ。

「あんまり色んなところ触って壊さないでくれよ?頼むから。」

「心配しなくても大丈夫だよ、我が契約者様〜。壊したりしないから安心してくれよ。」

「そうよ、スーリアの言う通りだわ。そんなに乱暴になんてしないもの。」

「そうですよ、ミナト君!私たちがそんなことするわけないじゃないですか!あ、これ小さい頃のミナト君ですか?可愛いですね〜!ここまで精巧に描けるなんて凄い画家さんがいるんですね!」

「あら、本当ね!まるでその場を切り取ったみたいに精巧だわ。」

「湊にも可愛い時代があったんだね〜。」

「話が進まないから後にしてくれ!」

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