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29話 ドラゴン

 体長3メートル、いや4メートル近くはあるだろうか。羽ばたかせるのが難しそうなくらい大きい翼を持っていた。翼には黒光する大きく鋭い鱗が敷き詰められている。大木を思わせる大きい手足。ギザギザした長い尻尾。そして、鋭くこちらを射抜くように見つめる細長の眼。先程対峙した怪鳥が可愛く思えてくるほどの威圧感。このモンスターは名前を聞かなくてもわかる。ドラゴンだ。龍だ龍。隣を見やると、真剣な眼差しのネリネと顔面蒼白にさせているミルがいた。突然現れたドラゴンにびっくりしているようだ。

「ドドドドラゴンですよ!?私たちで戦える相手じゃないですよ!?どうします!?どうしたら逃げられます!?」

「やっぱりドラゴンなんだな。ってか、ミル落ち着け!いつもの余裕はどうした!?」

「余裕なんてないですよ!ドラゴンですよ!しかも不幸の象徴たる、黒龍ですよ!ゴールドランクとかプラチナランクがパーティ組んで倒すレベルのやつですよ!私たちで勝てるわけないじゃないですか!あー、終わりました!私の人生ここで終わりです!まだまだ色んな魔法を見て覚えて使ってみたかったのにお終いです!」

 小声でかつ早口で捲し立てるミル。ここまで取り乱したミルは見たことがない。その隣のネリネもずっと黙ったまま、ドラゴンを見ている。その手は剣に触れている。この場は逃げる以外の選択肢はないように思える。ミルの反応からドラゴンがとても強い存在であることがわかる。それも桁違いに。ドラゴンを見るだけで体が萎縮する。確かにこの存在に向かって挑むのは現実的ではない。どうしたものか。

「二人とも聞いて。この後、足にありったけの魔力を込めて後退しましょう。逃げるわよ。ドラゴンと正面きって戦っても勝てるものではないわ。もし追いつかれそうなら私が囮になるわ。私が一番足が早いから可能性はあると思う。後は…ドラゴンの気分次第だけど、見逃してくれることを祈りましょう。」

 そうネリネが俺たちに言う。それはどこか諦めたような、そんな言い方だった。いつも自信にあふれているネリネがこんなになってしまう相手だとは。

「囮になんてならなくていい。俺たち全員で逃げよう。」

「無理よ!ミナトはドラゴンの恐ろしさをわかっていないわ!パーティのリーダーとしての命令よ、これは。これが最善の方法なんだから。」

 ネリネに怒鳴られてしまう。今までそんなことなかったので驚いてしまった。そのドラゴンはこちらを見つめている。その瞳からは何を考えているかわからない。

「覚悟を決めましょう。カウント三つで後ろに走りましょう。」

 いつまでもこのままではいられない。じっとしていても解決しない。ネリネの言う通り覚悟を決めよう。

「三、二、一、零!行くわよ!」

 俺たちは真後ろへ駆け出した!足に魔力を込めての走りなのでそのスピードはとても速い。俺たちが駆け出したことによって、ドラゴンにも動きがあった。一度咆哮を上げたと思ったら、その大きい翼を羽ばたかせ空を飛んだ。やっぱり飾りじゃなかったようだ!そのままこちらへ飛んでくる。そのスピードは桁外れだった。俺たちの必死の逃亡のさらに上をいくスピードだった。こちらへ飛んできたと思ったら、回り込まれていた。何を言っているか俺でもわからない。あの一瞬でここまで距離を詰めてくるとは!?改めてドラゴンと対峙した俺たちだが、心境は最悪。逃げられないのを今まさに見せつけられた。このままではドラゴンに狩られるだけだ。何か手はないか…。そこへ

「はぁっ!」

 ネリネがドラゴンへ向かって突っ込んでいった。先程言っていた通りに囮になるつもりのようだ。

「駄目だ、ネリネ!」

 あのスピードのドラゴンである。ネリネがいかに素早くても逃げ切れるとは到底思えない。ドラゴンもネリネの動きに気づいたのか、ネリネを前足で弾こうとする。その動きもドラゴンのその大きさからは想像もつかないくらい俊敏さで、ネリネに襲いかかる。

「くっ!」

 すんでのところでネリネがドラゴンの攻撃をかわす。ドラゴンの攻撃は続く。再び前足でネリネを襲う。それもネリネはすんでのところでかわす。見ているこっちがヒヤヒヤしてしまう。それほどギリギリのところでかわしている。そう見ていると隣のミルが俺の袖を引っ張った。

「ミナト君!ネリネちゃんが時間を稼いでくれている間に私たちは逃げますよ!早く逃げないとネリネちゃんが逃げる体力がなくなっちゃいます!」

「しかし、ネリネ一人置いていくわけにも…!」

「このおバカちん!ネリネちゃん一人だから今なんとか避けてるんですよ!私たちが残ってても足手まといになるだけで、意味ないですから!悔しいでしょうけど、今は逃げるのが最適解です!行きますよ!」

 ミルに引っ張られるまま俺達は、ドラゴンがいるところとは真逆の方向へ逃げた。ネリネ一人置いていかなきゃいけない状況がとても歯痒い。頼むネリネ無事に帰ってきてくれ!



 少しぐずぐずしてたみたいだけど、ミナトとミルもようやく逃げてくれた。私もこのままドラゴンの攻撃をかわし続けて逃げるとしましょう。それがうまくいくかはまだわからないけれど。攻撃の対象が減ったことを知ってか知らずか、ドラゴンの攻撃は私に集中している。前足の攻撃はなんとかかわすことができている。素早い攻撃だけれど、見て動いても少し余裕がある。時々ある、尻尾の攻撃が厄介だ。長い尻尾からの攻撃は視界の外から攻撃される。私自身、動体視力はいい方だと思うけれど、それを鑑みても視界の外からの攻撃は見切るのが容易ではない。私は盾を持たない双剣士。尻尾の攻撃もうまく双剣で流せているから、今だダメージはない。しかしこれが続くと少し体力が心許ない。今まではなんとかドラゴンの攻撃を防げている。もう少し粘らなくては!

「はぁぁぁぁっっ!!」

 再び訪れたドラゴンの尻尾の攻撃を双剣でいなす。こちらから攻撃しないでかわすだけなので、その点については楽だ。これで攻撃もしなくてはならなかったら、どうしても攻撃には移れなかっただろう。それほどドラゴンの攻撃に隙はない。ドラゴンの代名詞とも言える攻撃が出ていない。このまま出ないことを祈る。

「っ!?」

 ドラゴンの足元に魔法陣が展開される。ドラゴンは知能が高いと聞いてはいたが、まさか魔法が使えるなんて!色は…赤!炎の属性!ドラゴンの前方に魔法陣が現れ、そこから太い炎の槍が数本、こちらへ飛び出してきた!足にありったけの魔力を込めてその攻撃をかわす。一本でも当たれば致命傷だ。一本!二本っ!三本っっ!四本っっっ!五本目は避け切れない!魔法で…!

「我らを守る守護の盾、生命の源!アクアシールド!」

 炎の槍と水の盾がぶつかり合う。その衝撃で私は後ろへ吹き飛ばされてしまう。なんとか受け身をとることはできたが、今のがもう一度来たら防ぐのは難しい。さて、どうしたものか。

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