28話 クエスト
イルフ街に滞在してそろそろ二ヶ月になる。情報取集をしながら、遺跡に足を伸ばし発掘をする。そして時間があけばネリネやミルとの戦闘訓練。そんな日々を過ごしていた。成果という成果がなく焦る気持ちがないと言えば嘘になる。しかし焦っても良いことが起こるわけでもない。なるようにしかならないのである。それに俺は今の生活を気にいっている。ネリネがいてミルがいてスーリアがいる。大変なことも多いが楽しく毎日が過ごせている。俺は異世界に飛ばされた割には幸運だったんだろう。こういう出会いに恵まれたのだから。命をかけて助け合える仲間はかけがえのないものだ。そんな仲間がついている。これを幸福と言わずになんて言うんだろう。だが、今が恵まれているからといって、思わずにはいられない。俺は本当に元の世界に帰ることが出来るのだろうか?
いつものメンバーでギルドを訪れていた。お金を稼いで宿泊費にしようという算段だ。簡単すぎるクエストは貰える報酬が少ない。かと言って難しいクエストは失敗する危険もある。程よいクエスト選びが重要である。クエストはクエストボードに貼ってあるものから選ぶ。さーて、何か良さげなクエストはあるかなぁ?
「これなんてどうですか?怪鳥の討伐!これならそんなに難しくないですし、報酬もいいですよ!」
「悪くないわね。今の私たちならちょうどいいクエストなんじゃないかしら?」
「怪鳥ってどんなやつなんだ?クエスト出るくらいだからちょっとは強いんじゃないのか?」
二人とも楽勝な雰囲気出してるけど、存在を知らない俺からしたらちょっと恐ろしい。だって怪鳥っていうくらいだし、変な鳥なんだろう。それに俺がこの世界に来た時に最初に見たモンスターは怪鳥みたいなやつだ。アイツは今戦っても勝てる気がしない見た目をしていた。
「怪鳥は大きさ2メートルくらいの大きい鳥ですね。鋭い爪をもっているので、そこは注意が必要ですけど、それくらいですね。動きもそんなに早くないですし、魔法も打ってきません。今の私たちなら倒すのは難しくないはずですよ。」
「そうなのか。それなら大丈夫かな。」
「湊は少し怖がりすぎだよ。大丈夫、私の契約者さんはちゃんと強くなってるんだから。そこらへんのモンスターには負けはしないさ。」
俺も確かに強くなってるしな。それなりの自信はついてきた。みんなもこう言ってるし大丈夫だろう。よし、怪鳥退治に行くとしようか!
「すいませーん。クエスト受けたいんですけど!」
と受付のお姉さんのところへ出向く。するともうすっかり顔馴染みになったお姉さんが出てきた。
「ミナトさん、こんにちは!クエストですね!何のクエストでしょう?」
「怪鳥の討伐に行こうかと思いまして。まだいけますか?」
「怪鳥の討伐ですね。はい、大丈夫ですよ。ミナトさん達のパーティなら問題ないですね!」
クエストの受注は問題なさそうだ。お姉さんにも大丈夫と言われたから討伐はできそうだ。
「でも、気をつけてくださいね。この怪鳥、ちょっと珍しい種類かもしれないらしくて。火を吹くことがあるようなんですよね。それを喰らったら火傷じゃすまないかもしれません。気をつけてくださいね。」
そんなことを言われて内心ビビる俺。火を吹く鳥なんて聞いたこともないぞ!?
「ビビっているところ悪いけど、我が契約者さん?私の契約者なんだから炎にはある程度耐性があるからね。そこまで気にすることはないよ。」
「ビビってないし!でもそうか。炎纏ってもあんまり熱くないしな。耐性があったか!」
それを聞いて安心した。俺って炎に強いんだな!
「お姉さん任せてください。この俺が必ず怪鳥をやっつけてみせます!」
後ろでやれやれって言われた気がしたけど気にしなかった。
力強くクエストに出発したものの、いざ怪鳥を目の当たりにすると行こうと言った自分を呪った。怪鳥は前評判通り全長2メートルほど、鋭い爪を持ったモンスターだった。そこまではいい。そこまでは。眼は細くこちらを睨みつけており、黒く暗く濁っている。嘴は鋭くなにやら赤黒くなっている。なんというか、顔が怖い。怖すぎる!まとっている雰囲気が今までのモンスターと違いすぎる。いかにも人様に迷惑をかけてきましたってモンスターだ。明らかにボスモンスターだ。
「俺の想像よりも遥かに強そうなんだけど、倒せるってことでいいんだよね?正直めちゃくちゃ怖いんだけど!」
「ミナト君ここまできてビビってるんですか?可愛いですね〜!」
「大丈夫よ、ミナト。見た目はどうであれ、私たちなら勝てるわ。自分を信じて。」
どうもビビってるのは俺だけのようだ。情けない。強くなったと思っていたのに心はこんなにも弱い。大丈夫。俺ならやれる俺ならできる!耐性もあるし!
「よし、覚悟決めた!どんな見た目でもやってやる!いくぞ!」
俺は怪鳥に突っ込んでいく。自分で言うのもなんだけど、その速度は早い。一気に距離を詰めていく。近づけば近づくほど、顔が怖い。
「でいやぁ!」
怪鳥の左の翼に斬り込む。入りが浅かったのか羽を掠めるだけだった。ネリネも同タイミングで詰め寄る。ネリネの斬りは胴体にあたり、切り傷をつけた。そこで怪鳥にも動きがあった。翼を羽ばたかせ後ろに飛んだ。もう一度翼を羽ばたかせたと思ったら、羽が複数こちらへ飛んできた。その羽は鋭そうだ。俺は剣に炎を纏わせて、飛んでくる羽を切り捨てた。ネリネは軽くかわしていた。ネリネの避けた羽は後ろの岩に突き刺さっていた。当たったら痛いでは済まなそうだ。その後怪鳥は翼を羽ばたかせ空を飛ぼうとしている。それを、
「生を受けし時よりある呪縛。その重圧を思い知れ、グラビティ!落ちてください!」
ミルが魔法で叩き落とした。これには怪鳥も予想外だっただろう。空を飛ぼうとしたら地面に這いつくばっているのだから。その隙に俺とネリネは怪鳥に斬り込む。
「くらえ!焔の太刀!切り裂け!!!」
「はあああああ!光神剣!!」
俺とネリネの同時攻撃を受け怪鳥の体は綺麗に切れた。俺たちの勝利だ。
「確かに顔は怖かったけど、あっけなかったな。俺たちが強くなってるってことか。」
「あんなにビビってたのに、今更無かったことにはできませんよ、ミナト君?可愛かったですよ?」
「そうね。まさかあんなにぷるぷるするとは思わなかったものね。」
「我が契約者ながら情けないよ、まったく。でも面白かったからOKさ!」
散々な言われようである。事実なので何も言い返せない。ここは耐えるとしよう。ぐぬぬ。
「さて、帰るとしましょうか。クエスト完了報告をして今日はご馳走にしましょう!」
とネリネが言ったそのときだった。ズシン、ズシンと地響きのようなものがなり、俺たちの間に緊張がはしった。この地響きのようなものがドンドン近づいてくるように感じる。
「あのー、これ一体なんでしょうか?てか、この場にいるのまずい気がするんですけど、どうですか!?」
「いえ、逆に動く方が危険よ。この地響きがなんなのか、わかっていないのだから。」
「俺もネリネと同意見だ。何かわからなければどうしようもない。」
嫌な予感はするものの、動くことのできない状況だ。このまま何事もなく過ぎ去ってくれることを願う。しかし、そんなふうになるほど、世の中は甘くはなかった。俺たちの願い虚しくソイツは現れた。




