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27話 スーリアの癒し

 転移の魔導具が俺たちの望む効果ではなかったのは残念だが、それでクヨクヨもしていられない。次の方法を考えなくては!とは言え、そうそう思い付くものでもなく、俺は宿屋で考え込んでいた。

「何をそんなに難しい顔をしているんだい?私の契約者様は。そんなに思い詰めてもいい考えなんて出ないと思うけどね。」

「そうはいうけどな、スーリア。俺にとっては大事なことなんだから思い詰めもするさ。スーリアだって大切なことくらいあるだろう?」

「私にとって今大事なのは世界を見ることさ。この世界が素晴らしいところだっていうところが見られればそれでいいさ。まぁ、つまらないものだったら、その時考えるさ。」

 のほほーんと言うスーリア。つまらないものだったら内側からブスリって言ってたよな、コイツは。あー、こわいこわい。

「スーリアの知識的には何かないのか?転移関係の魔法とか魔導具についてさ。」

「私が知っていることはみんなと大差ないさ。そういう魔法があって、そういう魔導具があるらしいってことくらいだよ。」

「確かに俺と同じだな。長く生きている割には知識そこまで多くないよな。」


 ぴきーん。


 そんな音が聞こえた気がした。いや、実際には鳴ってないはずなんだけど、確かに聞こえた。

「湊。君、小さい時に男が女性の年齢についてとやかく言うんじゃないって言われなかったかい?」

「んー、それは確かに言われてたな。でもそれがどうかしたか?」

「どうかしたか?だって…?ここにいる立派な女性に対してどうしてそういう態度が取れるのかな?」

 俺はここで失言に気づいた。さっきの長く生きてるのくだりで、怒ってるんだ!

「悪い、確かに失言だった。すまない。だけど、この間性別はないって言ってなかったか?」

「無いって言ったのは恋愛感情で、性別が無いなんて一言も言ってないよ!そうじゃなくても言わないだろ!湊のバーカバーカ!デリカシーってもんがないんだよ、湊には!」

 コテンパンである。もうこうなってしまっては謝ることしかできない。

「悪かった悪かった。許してくれ。なんでもいうこと聞くから。」

「ん?今なんでもって言ったね?」

 言ってから後悔した。なんでもってことはなんでもOKってことだ。言ったからには男として守らなくてはならない。

「そこまで言うなら許してあげるよー、湊。さーて何をしてもらおうかなぁ。」

 ニヤァと笑うスーリア。ここで初めてスーリアのことが怖いと思った。俺と一緒に戦ってくれている相棒だったが、今だけは悪魔に見える。


 そんなことをスーリアと話した次の日、俺たちは山に来ていた。スーリアのお願いというのが、魔石の入手であった。本当は純魔石が欲しいと言われたがそれは俺だけのものではないので勘弁してくれと言った。それで渋々魔石の入手で済んだ。なんでも魔石の魔力を吸い上げて癒されたいということらしい。精霊ならではの癒し方法だと言える。魔石は魔力の濃い地域で取れるらしい。本来はピッケル等で掘って、研磨してつかうらしいのだが、今回は癒しに使うだけなので持ち帰らない。その場で魔力を吸い取ってもらう。

「それにしてもミナト君。口は災いの元って知らないんですか?結構余計なこと言うパターン多いですよ!」

「まったくね。私やミルに対してもよく言ってるものね。まったく。優しい私たちだから許されてるってことを思い知った方がいいわ。」

「はい、すみません…。」

 ガチへこみする俺。あの後女性陣にアレコレ言われたからなぁ。

「そういえば皆さん、年齢っていくつなんですか?聞いたことなかったですよね。言いたくなかったらいいですけど。」

「俺は16だ。今年で17になるけどな。」

「私は今年17歳になったわ。ミナトとは同い年になるかしら。」

「そうなると私は一個下ですね。私は15歳です!案外近かったですね。」

「私は…数えてないからわからない。でいいかな?」

 一人除いてみんなの年齢がわかった。結構年齢は固まっていた。

「ネリネちゃんは見た目大人っぽいのでもう少し上だと思ってました。」

「そうね。それはよく言われるわ。でも知り合ってしばらくすると年齢相応な行動するねって言われるのよね。」

「あー、それはちょっとわかりますね〜。」

「納得しちゃうなー、それ。」

「なんでわかるのかしら?ねぇ、ちょっと?」

「なんでって言われると…なぁ?」

「そうですね…。アレですからねぇ。」

「アレって何!?私としては大人らしくありたいと思っていて、その通り行動できてると思っているのだけれども!」

「まぁ、ネリネはそのままがいいよ!」

「そうですよ、ネリネちゃん!今のままが素敵です!」

「そう?ならいいんだけど。」

魔石探しは始まったばかり。どこに魔石があるのかな?


 魔石を探す俺たち。意外と見つからないものである。見つかるときはすぐ見つかるらしいんだが…。ひたすら山を登る俺たち。モンスターが出てきてないのが不幸中の幸いだ。

「魔石で癒されるって話だけど、どういう感じなのかしら?お風呂に入るのと同じ感じなのかしら。」

「うーん、そうだなぁ。魔力で満たされる感覚ってなんとも説明しがたいんだよねぇ。柔らかい布団に包まれている感覚が近いかな。とにかく癒されるんだよ!精霊にとって魔石ほどの癒しはないよ。だからホントは純魔石がいいんだけどね。」

「純魔石は勘弁してくれ。転移の魔導具のエネルギーに使うかもしれないんだからさ。」

「そうですね。純魔石は中々でてきませんからね。使われたら次手に入れるのにどれくらい苦労することか。」

「わかってるさ、それくらい。だから今回は普通の魔石でって話になったでしょ。湊はなんでもいいって言ったのにさ〜。」

 そう、ぶつぶつ文句を言うスーリア。そうは言ったけど、無理なものは無理!

 そうまったりムードで山を進む。今までの旅の中で一番平和な外出かも?などと思っていたら、

「モンスターがくるよ。前方から!用意してみんな!」

 そうそううまくはいかないようだ。俺たちは武器を構えてモンスターに備えた。

「ストーンイーグルね。ちょっと硬いから気をつけて!数も多いわ!」

 ストーンイーグルなるモンスターが現れた。見た目は石の鳥だった。それが…七体いるな。確かに数が多い。俺はジャンプし一体目のストーンイーグルに迫った。

「でぇぇぇい!」

 魔力を込めた一撃。ガキンっと音を立てて弾かれた。だが、攻撃は通っているようで翼が中ほどまで切れている。その横でネリネが同じようにストーンイーグルに斬りかかっていた。ネリネの一撃は俺より鋭い。難なくストーンイーグルを一刀両断した。

「雷纏いし眷属よ。群がる敵を打ち払え!サンダーボール!続けて受けてください!炎纏し眷属よ、その身を持ちて我が敵を燃やせ、ファイアーボール!」

 ミルも負け時と魔法を放つ。二つの魔法がそれぞれストーンイーグルに当たり、その本体を粉砕する。ミルの初期魔法は初期とは思えないほど威力が高い。

 俺も着地と同時にもう一度跳ね上がり、先程のストーンイーグルに攻撃した。最初に攻撃した場所と同じ場所を斬りつけ両断した。残り三体!だが元々の数が多かった。残っていたストーンイーグル達が俺たちに突っ込んでくる。ネリネはかわしたが、俺はかわせずその攻撃を腹に受けた。

「ぐっ!」

 鈍い痛みが体に広がる。大丈夫だ、傷とかにはなっていない。

「炎刃!燃えつきろぉぉぉ!」

 俺のことを攻撃したストーンイーグルをそのまま炎刃で燃やす。灼熱の攻撃を受けたストーンイーグルはそのまま燃えているが、まだ動いている!

「癒しの力をここに示さん、ヒール。」

 即座にミルが魔法で回復してくれた。痛みが引いていく。そこで俺は、燃えているストーンイーグル目掛け、

「炎波!くだけろっ!」

 その場で鋭い突きをし、炎波を繰り出した。それに当たったストーンイーグルは激しい音と共に砕け散った。残りの二体のストーンイーグルは、ネリネが剣を光らせて凄まじい連続攻撃で斬りきざんだ。相変わらず早い攻撃である。

「ミナト、無事?攻撃くらっていたみたいだけど?」

「すぐに魔法かけてもらったから大丈夫。ありがとな、ミル。」

「あれくらいならどうってことないですよ!」

 俺たちは無事ストーンイーグルを撃退した。すると倒したストーンイーグルのうち二体ほどが光っている。なんだこれは?

「ストーンイーグルは名の通り石でできているの。山の石を取り込む時に魔石を取り込んだのね。ちょうどいいわ。魔石を取らせてもらいましょう。」

「やっと魔石を吸収できるんだね!長かったなぁ。それでは、いただきます!」

 満面の笑みでスーリアがストーンイーグルに近づく。光っている部分がスーリアの体に吸い込まれていく。スーリアの体が光り輝いている。その姿はどこか神々しい。

「ふはぁ。この感覚久しぶりだなぁ、癒される〜。ずっとこのままでいたいなぁ。常に魔石があればいいのに。」

 と、ご満悦のご様子だ。これでスーリアのお願い事は叶えたな。と、思ったら。

「よーし、この調子でドンドン行こうね!もう体は次なる癒しを求めているよぉ!」

「まだ満足してないのかよ!」

「魔石2個程度では全然足りないよ〜。湊はなんでもお願い聞いてくれるんだよね?」

 と上目遣いで聞いてくる。可愛いけど、今はちょっと小憎らしいっ!


「みんな、今日はありがとう。おかげでとても気持ちよかったよ。また、よろしくね!」

 あの後8個の魔石を見つけるまで捜索は続いた。めちゃくちゃ疲れた…。でもスーリアの笑顔を見ていると悪い気はしない。

「もう疲れ果てましたよ…。早く宿に行って休みたいですね。」

「そうね…。お風呂に入りたいわ。」

「俺も飯食いたいわ…。」

 もう日が暮れ始めている。一日かかってしまったな。でもスーリアの満足そうな顔が見れたからいいか。

「お土産の魔石もあると良かったんだけど、そこまではお願いしすぎだよね〜。」

「流石に勘弁してください…。それはまた今度ってことで。」

「にししっ。ありがとう湊。今度もお願いね!」

「アッ!?」

 しまった!つい次の約束まで取り付けられてしたった!

「何してるんですか、ミナト君は…。次はミナト君一人で行ってきてくださいね。」

「ミナト一人の方がいい修行になると思うわ!」

「悪いけど、手伝ってください、お願いします!」

「え〜どうしましょうか〜。」

「そうね、どうしましょうか。」

 二人してクスクス笑っている。年齢は近いけどどうも子供扱いされてる気がする。

 帰り道、穏やかな風が吹いている。ふと異世界にいるということを忘れてしまいそうになる。次の瞬間にはモンスターが現れるかもしれない。でも今この瞬間だけは、仲間と共に楽しいひと時が流れる。

「こういう時間が続くといいな。」

 ついそんなことを呟いていた。

「え、ミナト君、ずっとからかわれていたいんですか!?それはどうかと思いますよ!」

「違う違う、そうじゃない!」

「ミナトの好みが心配だわ…。」

「だから違うってば!」

 誰も俺の言葉を聞いてくれない。ちょっと話聞かないとこあるよね、この人ら!

「このメンバーでの旅が楽しいなって話なの!」

 俺の大声にネリネとミルが黙ってこっちを見た。少し目を見開いて驚いているみたいだ。

「確かに元の世界には帰りたいけどさ。でも今の旅も楽しいからさ。こういう時間が続いてもいいなって思うんだよ。言ってることおかしいかな。」

 ちょっと矛盾しているような答えに俺の声はだんだん小さくなっていった。

「おかしいことじゃないわ、ミナト。私もミナトやミル、スーリアとの旅は楽しいもの。色々な経験ができているわ。みんなそうだと思うけど?」

 周りを見渡す。ミルもスーリアも頷いて、

「そうですよ、ミナト君。私も一人旅が普通でしたけど、仲間とパーティ組んでの旅も楽しいです!」

「私にとっては旅自体が楽しいことだからね。君にはまだまだ世界を見せて欲しいんだ。楽しんでいこうじゃないか。」

「ね?みんな一緒でしょ。いつかは元の世界に帰るとしても今は今でしょ。今を楽しみましょう。その時が来るまでは私もみんなもミナトとの旅を楽しむわよ!」

 そう聞いて俺は少し涙を流しそうになった。みんなには負担ばかりかけているかと思っていたからだ。俺の都合で振り回してると思っていたからだ。そうじゃないとしれて俺はとても嬉しく感じている。

「みんな、ありがとう…!」

「おや、我が契約者様は泣いているのかな?こんなことで泣かないでほしいなぁ?」

「ホントですよ、ミナト君。ここは笑うところですよ。」

「旅は笑ってしてこそよ。ミナトの言う通り、楽しんで旅をしましょう!」

 俺はこのメンバーで旅ができることを嬉しく思う。いずれ来る別れを今は考えず、これからもみんなで楽しく過ごそうと思った。

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