26話 転移の魔導具
「お待たせ致しました。すみません、思ったよりも調べるのに時間がかかってしまって。」
「いえいえ、とても早かったです!正直もう少しお時間かかるものと思っていましたので。それで、どうでしたでしょうか?魔導具の効果は?」
魔導具の効果がどういったものなのか。それを聞くのはとても緊張する。もしかしたら、そのまま元の世界へ帰れるかもしれない。そう期待してしまうのを誰が責められようか。今までの旅はそのためにしてきたのだから。
「はい、わかったことをお話致します。まず、この魔導具は大変珍しい転移系統の魔導具です。今まで転移系統の魔導具が発掘されたことも、あるという噂すらもなかったので、驚きましたよ。まさに世紀の大発見と言えるでしょう!価値に換算するとどれくらいになるかわかりません!それほど貴重な物です。危うく盗賊に奪われるところを取り返していただきありがとうございました!」
そこで深々とお辞儀をする探窟家さん。世紀の発見とまで言われるとその存在の大きさに内心ビビる。凄い物なのはわかっていたが、そこまでだとは!
「この魔導具ですが、一度使うだけでも相当なエネルギーを使うようです。発動させようにも私たちの魔力では解析が精一杯で…。なので実験はまだ出来ていない状態です。解析できた範囲の内容ですが、マーキングした場所に飛ぶことができるようです。あらかじめマーキングしておけば、好きな時にその場所に行けるというものです!距離の方は実験してみなければわかりませんが、今のところ規定はなさそうです!一定のエネルギーさえ溜められれば、どこへでも行けそうですよ!」
興奮気味に喋る探窟家さん。本当に凄い物なのだろう。語り口からその熱量が伝わってくる。しかし俺には引っかかる部分が一つあった。その部分がなによりも大事な部分である。
「どこへでも行けるってことですけど、そのマーキング?はどうやって行うんですか?そのマーキングができないと移動できないんですよね?」
「そう、そこなんですよ。唯一の欠点が。マーキングする方法が、マーキングしたい場所に一度出向く必要があるんです。なので、思い描いた場所に行けるものではなく、一度行ったところへ瞬時に行けるものですね。」
その返答を聞き、少し目の前が暗くなった。結局この魔導具で日本に帰るために使うには、一度日本に出向いてマーキングしてその後転移する必要があるようだ。その一度目の日本にはどう出向けばいいのだろうか。結果として今回の魔導具では日本に帰ることができない。
「なので、事前に聞いておいた皆様が思っていた効果とは若干違いそうです。以上が解析で分かった結果です。」
そう言い、説明を終える探窟家さん。俺はなんて声を出せばいいんだろうか。
「ありがとうございます。おかげでどういったものかわかりました。ちなみにマーキングの方法ってどうやるんですか?簡単ですか?」
と、ネリネが問いかける。マーキングの方法を聞いてどうするのだろうか。
「マーキングは簡単ですよ。魔力を練って呪文を唱えるだけです。我がいた標、ここに示す。マーク。これだけです。ただ気をつけないといけないのはマーキングは人によって分けられます。例えばあなたがマーキングしたところに私が転移することはできません。逆に私がマーキングしたところにあなたが転移することもできません。これが注意点ですね。」
つまり俺が旅をしてマーキングをしてもそのマーキングを使って他の人は転移することができないって仕組みか。
「この転移の魔導具を使って移動できるのは一人だけなんでしょうか?」
「そこはまだわかりませんが…。恐らくは転移の魔法と同じで体が触れ合ったりしていたら同時に移動できるはずです。」
ネリネのした質問の意図が分からず困惑する。なぜそんなことを聞いたのだろうか。
「とまぁ、こういった内容です。わかっていただけましたでしょうか?」
「ありがとうございました。とてもわかりやすかったです。」
「そうですか。それならよかったです。何か他にありましたら、いつでも尋ねに来てください。皆様は恩人ですから。」
そう言い探窟家さんは去っていった。
探窟家さんが帰った後俺たちは少ししっとりした空気の中にいた。
「ネリネ。なんであんな質問したんだ?マーキングの方法なんて。マーキング方法がわかったって、その場に行かないといけないんだ。元の国に帰れるわけじゃない。意味なんてないじゃないか。」
そんなつもりなんて全然なかったのだが、少し責める口調になってしまった。そんな自分がみっともない。
「たしかに、ミナトが自分の国に帰るのには使えないわよね。でも逆に、ミナトが自分の国に帰った後に、こっちの国に帰ってくる方法ができたわ。これって凄いことじゃない?」
「…!そうですよ、ミナト君!元の国に帰ってお別れだったのが、行き帰り自由になるんですよ!いつでも私たちに会いに来れるじゃないですか!会い放題ですよ!」
そうか!帰った後のことを考えていなかった。今のところ帰ったらみんなとはお別れしなくてはならなかったのだ。それが行き来自由になればいつでも会いに来れる。それこそひよりや桃花達に紹介することもできるかもしれないな。
「その考えは出てこなかったよ。俺って薄情なやつだな。ここまで世話になってるっていうのに…。」
「しょうがないわよ。帰れるかもしれなかったんですもの。ショックを受けて当たり前よ。」
それでも俺は薄情なんだと思う。その可能性を一ミリも考えなかったのだから。それにしてもネリネは視野が広いと言える。
「ちょっとずつではあるけれど、前には進んでいるよ湊。諦めることなんてない。次を探せばいいんだよ。」
「スーリアちゃんの言う通りですよ。今までだってそうだったじゃないですか。ゆっくり探していきましょう!」
なんか俺励まされてばかりだな。みんなに比べてまだまだ子供だってことかな。成長しなきゃな、俺も。




