24話 ネリネ対盗賊の男
昨日の男が帰ってくるのを待つべく入り口に向かう。入り口で男の不意をつくためだ。
「朝言った通りあの男は私がやるわ。二人は後ろで待機していて。」
俺たちは神妙に頷く。力になれないのは悔しいが、レベルが違う。下手に介入するとネリネの足を引っ張ることになりかねない。
「もし他に盗賊がいたらお願いね。例の男とは一対一じゃないと勝てそうにないから。」
ネリネがそこまで言うほどの相手だ。その時は全力で戦えるように邪魔者は排除しよう。
入り口近くの岩の影に俺たちは隠れる。男が帰ってきたらネリネが隙を突いて攻撃する手筈だ。いつ帰ってくるかわからない。俺たちはその時がくるまでじっと待った。しばらく待ったその時、洞窟の入り口に変化があった。入り口に別の盗賊男が現れた。多分下っ端だろう。例の男ではないがこのまま通すと中で拘束している盗賊達が見つかってしまう。そうなるとせっかく拘束しているのにそれが解かれてしまう。即座にネリネが動いた。現れた盗賊男の目の前に瞬時に移動し、そのお腹に拳を叩き込んだ。そのまま盗賊の下っ端は崩れ落ちた。が、その時、
「!?」
ネリネの目の前に例の男が現れた。ニヤリと口を歪ませネリネに剣を突き刺そうとする。体に当たる寸前でネリネは体をねじり剣をかわした。ネリネが盗賊の下っ端を倒し、気が緩んだ一瞬を狙ったのだろう。こっちが取りたかった隙を逆に突かれてしまった。そのまま、連続攻撃に移る男。男の素早い連続攻撃にネリネは剣を抜くこともままならない。薄皮一枚で男の攻撃をかわすネリネ。男の攻撃は多様だ。剣で斬る突くはもちろん、蹴りや拳も放っている。男の手はまるで読めない。それを避けているネリネは流石だ。ギリギリではあるが確実にかわしている。しかし、攻撃に移ることができない。剣を抜こうとするとその手に向かって男の剣が飛んでくる。俺も何かしたいがどうすることもできない。明らかに次元が違う。俺の手出しはネリネのピンチになりかねない。ミルならどうかと思い隣を見るが、ミルも同じなようで首を横に振るだけだった。変化が起きたのはその時だった。ネリネの足が発光しバックステップをした。その飛距離が長く男もついてこれなかった。
「この流れでやれなかったのはお前が初めてだ。いやぁ、強いな娘。昨日といい今日といい、良い動きだ。ゴールドランクの冒険者か?」
「残念だけど、私はまだシルバーランクよ。まぁいずれはゴールドになろうと思っているけれど。」
「そうかいそうかい。シルバーに手こずってるようじゃ俺もまだまだだな。今日はどういう用件だ?俺はお前とは関わりたくないんだが。」
「昨日遺跡の探窟家から取った魔導具を返しなさい。そして大人しくお縄につきなさい。そうしたら命だけは取らないであげる。」
発言の一部が敵役っぽいが、ここでツッコムのはよそう。
「それはできない相談だ。俺はまだまだ自由でいたいし、この魔導具も相当なレア物みたいだしな。お前の態度でわかった。」
「そう、なら話はここまでね。後は縛った後に話を聞かせてもらうわ。」
そう言うとネリネが動いた。双剣を抜き、素早い動きで男に攻め寄る。男もそれに合わせてネリネに攻め寄る。キンッと音を立てて二人の剣が重なり合う。二人の剣が互いを斬ろうと動く。剣を抜いたネリネの剣撃は昨日よりも凄まじい。ネリネの双剣が連続で斬りつける。男はそれを剣で受け止める。ネリネはそこで攻撃を辞めず、更に剣を打ち込んだ。その攻撃も男は受け止める。男は防戦一方だ。
「はぁっ!」
「ふっ!」
ネリネは当たれば必殺の一撃を放っている。それを男は懸命にかわす。正直ネリネなら本気になればこの男とて瞬殺だろうと思っていた。男は思った以上に粘っている。一撃、ニ撃と速度が増しているんじゃないかと思うネリネの剣技。側から見ていてもとても美しいものだった。俺はこの時、本気でネリネに憧れた。ここまで、強く美しい彼女に。俺もいつかネリネの隣に立てる日が来るだろうか。その日が来ることを願わずにはいられない。それほど俺は魅せられてしまった。
「そこっ!」
ネリネが男の剣を弾き飛ばす。そのまま剣の峰で男の腹を打つ。そのまま崩れ落ちる男。ネリネの勝ちだ!
「!?」
男が崩れ落ちようとしたその瞬間、両腕を地面につき足を上げてネリネに踵落としをくらわせる。流石のネリネも意表を突かれ左肩に踵をくらってしまった。
「くっ!!」
あまりにも常識外れな攻撃。気絶したと見せかけての意表を突いた攻撃。男は明らかに戦い慣れている。バランスを崩したネリネに掌底をくらわせる男。その一撃にネリネの体が吹き飛んだ。その隙に落とした剣を拾う男。壁の方へ吹き飛ばされたネリネだが、壁にぶつかる前に体勢を整え壁に足を着き、男の方へ飛ぶ。ネリネと男が正面をきって剣を斬りつけすれ違う。そのまま、振り向き剣を振るう。キンッキンッと音を立てて両者の剣が重なり合う。両者一歩も引かない攻防に呆けてしまう。
「ちっ、めんどくせぇ!さっきので落ちとけよ!」
「この程度でやられるほど、やわじゃないわ。そっちこそ、そろそろやられなさい!」
二人が剣を振るいながら喋っている。そして、二人距離を空け立ち止まる。
「倒す前に名前を聞いておくわ。名乗りなさい。」
「あまり言いたくないんだが。ジャケツという名で通っている。」
「ジャケツね。捕まえたあともその名前は覚えておくわ。わたしはネリネよ。最後に覚えておきなさい。さて、いくわよ!」
そう言うと、双剣を構えた。ネリネの双剣が輝き始めた。次の一撃で決めるつもりだ。ジャケツも同じく剣を構える。両者が同時に動いた。剣を振るい両者がすれ違う。今度こそ勝敗が決まるか!?
「ぐっ!」
ジャケツがうめき声をあげて膝をつき、倒れた。ネリネは振り向きジャケツを見つめる。
「私の勝ちね。あなたとても強かったわよ。」
「そうだな、お前の勝ちだ。だがな、俺もタダではやられんぞ。お前にも苦しんでもらう!我が魂一部捧げる。略式、ニの呪い!」
倒れた男から黒いモヤが現れた。そのモヤが近くにいるネリネの元へ漂っていく。そのモヤがネリネにぶつかる。
「くっ、あああああああああああっっ!!」
ネリネが突然叫び出した。持っていた剣も投げ出し頭に手を当てて、もがき苦しんでいる。何が起こっているんだいったい!?
「まずいです、ミナト君!アレは呪いです!対象者に苦痛を与える効果があります。ネリネちゃんはそれを受けています!」
「それってどうにかできないのか!?」
「私が解呪します!ただ、時間がかかるので、その間ミナト君私たちを守ってください!」
「わかった!」
そう言うと俺たちは飛び出した。ミルはネリネの元へ行き、俺はジャケツのところへ。ジャケツを見てみると気を失っていた。呪いが最後の抵抗だったのであろう。俺はジャケツを縛り上げた。ついでにもう一人倒れている盗賊の下っ端も縛り上げた。これでこっちは大丈夫だ。ネリネはまだ苦しんでいる。ミルが詠唱を続けているがまだまだかかるみたいだ。このまま何も起こらずに解呪できればいいが…。そう思った時だった。入り口の方から話し声が聞こえる!残りの盗賊達が帰ってきたか!ネリネとミルは戦えない。戦えるのは俺だけだ。相手が何人いようとやるしかない。俺は決意し洞窟の入り口へ向かった。




