23話 盗賊団アジト
翌日、宿屋の前に俺たちは集合した。昨日ちょっと様子のおかしかったミルも今では普段通りにしている。これから盗賊達を討伐すべく洞窟へ向かうところだ。
「そろそろ出発しましょうか。わかっていると思うけど盗賊の討伐だから、より気を引き締めてほしいの。モンスターとは違い、連携をして動いてくるでしょうし。いざという時も躊躇わずに攻撃して。」
ネリネから諸注意を受ける。ある意味モンスターと戦うよりも難しいかもしれない。以前の盗賊達の連携も厄介なものだった。
「昨日の男が出てきたら、私がやるわ。ミナトより強いし、魔法を当てるのもちょっと大変だと思うわ。」
昨日の男は動きも素早く俺では手に負えない。ミルの魔法も詠唱している間に狙われてしまうだろう。
「可能な限りは捕縛していきましょう。でも手加減できなそうな相手なら躊躇わずに殺して。そうしなければ、こちらがやられてしまうわ。」
少し目を伏せてネリネがそういう。厳しい物言いだが、実際相手は躊躇してこない。その一瞬が命取りだ。俺は昨日スーリアと話したことを思い出した。覚悟は決めた。決めたんだ。
洞窟まではそこまで距離はなかったので、あっという間に着いてしまった。森の中に洞穴があった。事前にギルドで確認していなければまずわからなかっただろう。洞窟の入り口には見張りが一人立っていた。見張りは暇そうに欠伸をしている。正直に正面から行ったら大勢と一度に戦わなくてはならない。ここは慎重に行くべきだ。そこでネリネだけが先行し、見張りを倒しに行く。遠回りをして見張りに近づいていく。見張り近くの木までこっそり近づいた。そこからの動きが早かった。一瞬で見張りの後ろを取り手刀を首元にくらわせた。その後羽交い締めにし木々の中に連れ込んだ。え、何今の動き。早すぎない?ゲームでしか見たことないよ。俺同じ動きできないわ。ネリネがこちらへ来いと手招きをする。見ると見張りの男は縄で縛られていた。
「ネリネちゃん動きが慣れてますね。殲滅クエストとかよくやってたんでしょうか。」
「ネリネならやりかねないな。一人で壊滅させそうだよな。」
「ちょっと!?聞こえてるんですけど?」
怒られてしまった。
そのまま洞窟の中に入る。中は薄暗いけれど、見えないというわけではなかった。洞窟の中は意外にも広い。しばらく進むと話し声が聞こえてきた。
「アイツ昨日魔導具を持って帰ってきていよいよボス面してるよな。お前らには出来ねぇー仕事だっつってよ。確かに出来ねぇかもしれねぇがウザったらしいったらないぜ。」
「ホントだよな。一番の新入りのくせによぉ。調子に乗りやがって。」
どうやら2人の盗賊が話し込んでいるようだ。こちらには背を向けていて気づいていない。ネリネと頷き合い2人の背後に忍び寄る。俺は左側の男の背後だ。俺は右手に魔力を集中させて男の首筋に手刀をくらわせた。しかし、浅かったのか男の意識を刈り取るまではいかなかった。
「くっ!」
こちらを向いてきたのでそのまま腹に拳を振るった。そのまま腹にのめり込む拳。そのまま、男の意識を刈り取ることに成功した。横を見るとネリネはとっくに意識を失わせ縛り上げているところだった。相変わらず早い。俺も真似して目の前の男を縛り上げる。
「ここまでは順調ね。この先もできる限り同じ方法でいきましょう。」
このまま全員こうやって無力化できれば一番だが、そうはいかないだろう。だが奇襲側が有利なことには変わりはないと思う。この調子でいきたい。
そのまま奥へと進む俺たち。今のところは何事もなく進んでいる。進んでいくと一番奥にたどり着いた。ここが盗賊達のメインスペースのようだ。真ん中にたき火があり周りに腰をかけるための大木が置いてある。そのさらに奥には眠るスペースなのだろう、布が数枚置いてあった。そのメインスペースには男達が五人ほど談笑していた。その中に昨日の男の姿はない。男はこの洞窟内にいない?それは後で考えるとして目の前の男達を無力化しよう。それにはどうしたら。ネリネが小声でミルに話しかける。
「ミル、バレないようにアイツら全員に魔法かけられる?全体攻撃魔法とかあるといいんだけど。」
「もちろんありますよ!魔法をかけた後の無力化はお二人に任せますので、よろしくです!」
そう言うと、ミルは小声で詠唱を始めた。
「生を受けし時よりある呪縛。その重圧を思い知れ、グラビティ!」
詠唱が終わる。すると談笑をしていた男達が急に膝をつき始めた。次第に膝をついた状態も厳しいのか、地面に突っ伏した。どうやら、あのあたりの重力を重くしたらしい。それで耐えきれずに地面にへばりついた状態になっているようだ。ネリネと同時に走り出し、俺たちは1人ずつ意識を刈り取っていく。全員の意識がなくなったことを確認し、ロープで拘束していく。これで洞窟の中にいた盗賊達は全員拘束したことになる。スムーズにいったことは良いことなんだけど、なんだかあっけなかったな。とはいえ、昨日の男がまだ現れていない。用心は続けなくては。
「これで全員拘束しましたね。さてと、あさりますか!」
「手分けして探しましょう。ミナトとスーリアは左側。ミルは右側をお願い。」
ネリネの指示の元、俺たちは盗賊達の住処を捜索する。ここのリーダーは結構ズボラな性格のようであちこちに金貨や銀貨、魔導具が置いてある。昨日聞いておいた魔導具と特徴が一致するものがあるか確認する。どうも置いてないように思える。隣のスーリアを見ても首を傾げている。どうやらなさそうだ。
「こっちはないようだ。そっちは?」
「こっちにもないですね。ネリネちゃんは?」
「私のところにもないわ。そうなると昨日の男がまだ持っている?」
「俺もそう思う。貴重なものだっていうのは昨日の発掘家さん達の反応からわかっただろうし。」
「そうですね。大切なものは自分が持つっていうのは誰しもが思うことですからね。」
そうなると問題は昨日の男が今どこにいるかということだ。俺たちには情報がない。
「一人起こしてどこにいるか聞いてみましょうか。その方が早いわ。」
言うや早く転がっている男の一人を座らせて背中に膝を乗せ、両肩をグイッと引っ張った。見るだけで痛そうな光景だが男は痛がる様子もなくふっと目を覚ました。
「騒ぐな。騒いだら殺す。今の状況が理解できたらゆっくりと頷きなさい。」
声を発しようとしていた男をネリネが先に声を出し黙らせた。おお、おっかなっ!男はゆっくりと頷いた。
「昨日珍しい魔導具を持って帰ってきた男がいたでしょう?その男が今どこにいるかを知りたいの。教えてくれるかしら?」
「そ、そいつなら今日も狩りに行くとか言って朝から出てるよ。それが終わったら帰ってくると思う。」
「そう、ありがとう。じゃあもう一度眠っててね。」
そう言ってネリネは男の首筋に手刀をくらわせて、もう一度意識を奪った。
「やっぱりネリネちゃんってバイオレンスですよね。その道でもやっていけるというか。」
「流石の私もビビったね。本職の盗賊よりも盗賊らしいんじゃないかい?ああー、怖い怖い。」
「流石だな、ネリネ!めっちゃくちゃ怖かったけど、おかげで情報が手に入ったな。超怖かったけど。」
「みんなして何なのよ!そういうこと言うなら、次回からこういう役やらないからね!」
ネリネって結構いじられ役だよね。




