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21話 強敵

 ゴーレムを倒した俺たち。しばらく様子を見たが、ゴーレムが復活したり、二体目のゴーレムが出てきたりすることはなかった。

「今回はちょっと危なかったな。スーリアがいなかったらどうなっていたことか。」

「そうね、ゴーレムの核ってとても探しにくいことで有名なの。スーリアが見つけてくれなければ、ホントに危なかったかもしれないわ。」

 ゴーレムはとても硬くこちらの攻撃がビクともしなかった。ようやく効果のある攻撃を与えたと思っても、すぐ回復してしまった。まさに厄介なモンスターであった。何はともあれ倒すことに成功してよかった。

「邪魔者もいなくなりましたし、前の台座にいきましょうか!何があるかワクワクですね!」

「転移の魔導具だといいんだけど、そう都合良くはいかないよなぁ…。」

「それはそうかもだけど、少しは期待してみましょう。珍しい物があるかもしれないし!」

 ドキドキしながら台座へと向かう。台座の上にはいかにもな箱が置いてあった。装飾のされている赤く大きな箱で、ゲームでいう宝箱というところだろうか。特に鍵がかかっているとかもなさそうだ。

「じゃあ、開けてみるよ。いくぞ…!ホントにいくぞ…!」

「そういうのいいんで、早く開けてください!私が開けますよ!」

「それだけドキドキしてるんだよ!じゃあ、今度こそ!」

 宝箱を開けた。中を見てみると何やら小さい物が一つだけ入っていた。何だろうこれは。

「赤い…魔石かしら?ここまで大きい物は見たことないけれど。」

「ああ、これは純魔石だね。魔力がとても詰まっている魔石だよ。昔はいっぱいあったけど、今は数が少ないのかい?」

「これが純魔石ですか…。話には聞いたことありますけど実際に見るのは初めてです。なんでも、魔法の媒体にしても使い切ることが難しいらしいですよ。」

「なるほどなぁ。じゃあ、結構貴重な物なんだな。」

「そうですね。市場にも出回ることは少ない代物です。ヨルア商会に持っていったら凄く喜ばれますね。」

「俺たちの目的のものではなかったし、持っていってあげるか。」

「ちょっと待ってミナト。純魔石は魔法の媒体にできて、中にかなりの魔力を秘めているの。ということは、転移魔法の媒体にできるんじゃないかしら?転移魔法もかなりの魔力を使うし。」

「そうか!言われてみればそうだな!じゃあ今回の出来事も無駄じゃなかったんだな!」

 よかった!もし転移魔法の魔導具があったとしてもエネルギーがなかったら使えないもんな。そう考えると必要なパーツが揃ってきている感じがしてくる!いいぞいいぞ!

「そういうことならよかったですね、ミナト君!ではこの純魔石はミナト君が持っていてください。私が持っていると他のことに使いたくなりそうなので。」

「つ、使わないでくれよ?頼むから。大事なエネルギーなんだから!」

「だから使わないように、ミナト君に持ってもらうんじゃないですか!まぁ、いくら私でも大事な物は使いませんけどね!」

 ジーッとミルを見つめる。ミルのことだから、間違えて使っちゃいました〜ってこともありえるかもだからな。しっかりしまっておくとしよう。

「他には何もないのかい?あのゴーレムを倒したにしては、どうもしょっぱい報酬だね。純魔石一個だけとは。」

「スーリアが活躍してた時代がわからないけど、今の時代は純魔石は貴重な物よ。一個だけでも相当なお金になるわよ。」

「そうなのかい?それはなんとも寂しい時代になったものだねぇ。」

 スーリアは、この遺跡よりも古い時代から存在していたのかもしれないな。スーリアの謎はまだ多い。

「他に何もなさそうだし、戻ることにしましょう。まだ日が明るいから、別のところも探してみましょう。」

 ネリネの意見に反対の意見もでず、地上へ戻ることになった。地上まで、他のトラップが発動するということもなかった。


 無事に地上へ戻ることのできた俺たちは、念の為二階も探してみることにした。しかし二階には空っぽの部屋があるだけでお宝らしいものは一つもなかった。この建物は一通り調べ終わった。別の場所を探してみることにする。同じ作戦で大きい建物を探していくことにする。しかし、最初の建物のように大きい建物は他になく、捜索は難航した。ちょっと大きいくらいの建物を調べても見たが、中は空っぽ、何もなかった。

「やっぱり、他のとこは無さそうかな。これだけ探しても出てこないんだから。」

「そうですねー。なーんにもでてきませんね。そろそろ日が暮れそうですから帰りませんか?」

 これ以上探しても出てこないだろう。もう少し探したい欲が出てくるがグッとこらえて帰ることにする。結局転移の魔導具は出てこなかった。どこを探せばあるというんだろうか。

 遺跡から街へ帰ろうとしたその時だった。前で誰か倒れている!みんなで急いで近づく。朝遺跡の発掘を行っていた男性だった。幸いまだ息があった。

「ミル!応急手当!」

「癒しの力をここに示さん、ヒール!」

 意識は戻らないが、男性の顔色が少し良くなる。よく見てみると体のあちこちに切り傷があり、悲惨な状態であった。これはひどい。

「誰がこんなことを…。」

「あっちでも誰か倒れています!」

 ミルとネリネが倒れている人のところへ行こうとすると、

「なんだ、まだいやがったのか。めんどくせぇなぁ。」

 そんな声が聞こえてきた。岩陰から男が一人出てきた。冒険者風の出立ちの男だ。腰には剣をぶら下げている。

「何か発掘品があるなら、それをよこせ。そうしたら命だけは助けてやるよ。少し眠っててもらうけどな。」

 男はそう言うと、こちらへ近づいてきた。

「残念だけど、あなたに渡す物は何も無いわ。あなたこそ痛い目にあいたくなければ、ここから立ち去りなさい。」

 ネリネがそう言葉を返す。それを聞いた男の表情が消えた。

「舐めるなよ、娘。」

 男はネリネに向かって走り出した。その速度は速い!ネリネに対して居合いの一撃を繰り出した。それをネリネは自分の剣で受け止めた。キンッと音が鳴り、男は一度バックステップでネリネから距離を取る。その後すぐにネリネに向かって走り、連続で斬りつける。その一振り一振りが早い。ここまでの動きから男が素人でないことが伺える。その攻撃もネリネは双剣で難なくいなす。俺も剣は抜いているが、とても入り込める隙はない。それはミルも同じなのだろう。俺の隣で固まっていた。

 防御だけだったネリネが一度男の剣を大きく弾き、その隙を狙って、

「咆哮波!吹き飛べ!」

 咆哮波を放つ。咆哮波は受けた相手を遠くへ飛ばす技。ネリネは体勢を立て直す時に良く使う技だ。だが、男はその咆哮を受けても遠くへ飛ばされることはなかった。なんとその場で踏ん張ったのだ!技発動後の隙を突き、ネリネに斬り込んだ。寸でのところでその攻撃をかわすネリネだった。バランスの崩れたネリネを男は次々斬り込んでいく。だが、その攻撃を全てかわすネリネ。こうみると改めてネリネの強さがよくわかる。男の攻撃をかわしきり、一度距離を取るネリネ。

「駄目だ。今の俺ではお前を倒すイメージが全くわかない。今回は引かせてもらう。あばよ。」

 そう言うと踵を返しどこかへ立ち去ってしまった。随分と引き際が良い男であった。

「大丈夫か、ネリネ!」

「えぇ、私は無傷よ。それより、ミル!もう一人の倒れている人に癒しの魔法を。」

「はい!わかりました。」

 もう一人の男性にも癒しの魔法をかけ、目を覚ますまで待った。すると最初に魔法をかけた男性が目を覚ました。

「大丈夫ですか?どこか痛むところはないですか?」

「あちこち痛いけどとりあえずは大丈夫です。あなた方が助けてくれたんですね。ありがとうございます。」

「いえ、当然のことをしたまでです。俺たちも襲われたんですけど、男にやられたんですか?」

「そうなんです。ここで発掘をしていたらいきなり現れて、発掘品をよこせと。それを拒否したらこの有様です。」

「命が助かってよかったです。発掘品は無事ですか?」

「そういえば、発掘品は…ああ!ない!発掘した物が一つもない!アイツに取られたんだ!ああ、なんてことだ…!」

 凄い取り乱しようだった。凄い発掘品があったのだろうか。

「近年の発掘品の中でも珍しい、転移魔法が詰まっている魔導具を発掘していたんだ。それについて研究できると心の底から喜んでいたのに…。」

「今、転移魔法っていいましたか!?」

「ああ、珍しいから驚くのも無理はないでしょうね。見つけた魔導具を計測したら、転移タイプの魔力を検知しましてね。転移の魔導具とは聞いたことがなかっただけに、心躍ったものでしたよ。」

 実際に転移の魔導具が発掘されていたとは…!だが、それはあの男に奪われていたようだった。

「しかし、奪われてしまったのであれば仕方ない。あの男から取り返せるとも思えないし。諦めることにします。」

 俺たちは顔を見やり頷いた。俺たちの答えは決まっていた。

「俺たちでその魔導具を取り返してきます。実は俺たちも転移の魔導具を探していたんです。それに、奪われたままなんて酷すぎますよ!」

「本当ですか!それはありがたいことです。でも無理はなさらないように。ヤツは強すぎましたし、仲間がいるかもしれませんから。」

「無茶なことはするつもりありませんよ。俺たちでやってみせます!」

 あの男から転移の魔導具を取り返す。それが俺たちが今やらなくてはいけないことだ。絶対に取り返す!

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