16話 休息
モンスターとの戦いはあるものの順調に旅は進められている。出てくるモンスターが比較的に弱いのが救いだった。俺でもなんなく倒せるレベルだからな。勝手なイメージで、王都はエリートが集まるから、王都周りのモンスターは強いのかと思ってた。そう思って聞いてみると、
「そうねぇ。今回の旅はたまたま弱いモンスターばかり集まってくるわね。普段ならウッドベア並みのモンスターが出てきてもおかしくないのに。ウッドベアも私たちの敵じゃないけどね。」
とのことらしい。ウッドベアは二人の連携で倒しているのを見たが、俺一人で倒せるかと言われたら、無理だろう。いや、炎の剣のマスデバリアがあるから相性的にいけたりするのだろうか?まぁ木だからよく燃えるだろ。
「私的には楽ができて大助かりですね。ミナト君の実力アップも出来て一石二鳥ですね!」
「少しは手伝ってくれてもいいんだよ?」
知らんぷりを決め込むミル。コイツ…。
「慣れてきた頃が一番危ないからね。弱いからと言って気を抜いたら大事になりかねないから、気をつけてね。」
ネリネは俺のことを心配してくれる。スパルタだけど、こういう気配りはよくしてくれる。
数をこなしてきたからか、出発時よりも大分自信はついた。ネリネ先生の指導のおかげだ。体の動かし方も慣れてきた気がする。魔法もアレからいくつか覚えられたし。
「今日はこの辺にしてそろそろ休みましょうか。この辺りで野営しましょう。」
周りも暗くなってきている。この先進むことはできるだろうが危険を伴う。だからこそ、早めの野営が必要になるのだろう。この世界の野営はモンスターの襲撃の危険も伴う。なので、野営の際にはモンスターの嫌う、臭い袋を設置する。もちろんこれだけでは危ういので見張りを立てるんだが、そこはスーリアが行ってくれる。スーリアは精霊だから結界を張ることができるらしい。その結界内に敵対する生物が入ると感知できるらしい。おかげで外ではあるが不意に敵に襲われる心配がない。旅をする上でこんなに助かることはないとネリネが言っていた。
「王都を出て何日か経つけど、イルフ街まではまだまだかかるのかな?」
「そうね。最短ルートを通っているとはいえ、まだ半分くらいでしょうね。イルフ街まで行ったことがないから、確証はないけれど。」
「イルフの街で転移の魔導具が見つかればいいけどなぁ。」
「そうですね。見つかっても所有者の方が譲ってくれるかが心配ですね。イルフの街の遺跡で見つかった魔導具は発掘した人の所有物になります。それが市場とかに流れてくれればいいんですけどね。」
「転移ほどの貴重な魔導具だったらどれぐらいの価値になるか分からないわね。こういうのはどうかしら?譲ってもらうんじゃなくて、一度だけ使わせてもらうっていうのは。」
「なるほどな!それなら使用料金だけだし、高くつかないかもしれないな!」
「そういう発想がありましたか。そこは盲点でした。確かにそれならいけるかもしれませんね!」
「でもまぁ、それを行うためにまず転移の魔導具を見つけることが先なんだよね。」
そうなんだよなぁ。まずは見つかるかどうかなんだよな。とはいえ、そこは行ってみないことにはわからないしな。
「もしなければ、直接遺跡に探しにいくこともできますよ。まだ見ぬお宝が眠っているかもしれません!」
「おお!その手もあるのか!なんだか色々出てくるな!」
「色んな可能性が模索できるのはいいことよね。諦めないことって大事よ!」
イルフ街に着いてからどうするかを考える俺たち。誰かとこういう風に考えるのって大事なことだよね。自分一人では煮詰まってしまう。
「そういえば今まで聞きそびれてましたが、ミナト君の国はどういうところなんですか?」
「そういえば私も詳しくは聞いたことなかったわね。」
「私も聞いておきたいな、契約者として!」
と、三人から注目される俺。
「俺の国かー。説明下手だからアレなんだけど、まずモンスターがいないな。そこは大きい違いかな。動物とかはいるけど。後は魔法もないな。魔力も魔石がないからか使える人はいない。」
「私たちにとって当たり前のものがなかったりするのね。にわかには信じられないけど。」
「ないものよりあるものが知りたいですね!」
「美味しいものはあったりするのかい?」
「美味しいものは多いぞ!俺のいた国では様々な伝統的な料理が多くてな!それこそ食べきれない種類あるよ。
俺だって食べたことのない料理が多いし!」
「おおー!それはいいことを聞いた!私は湊と一心同体だからね。湊の国に行った時に食べさせてもらおう。」
「それはいいですね!転移の魔導具が往復可能だったら私も行きたいんですけどねー。流石にそこまではないでしょうし。」
そうか。忘れてたけど日本に帰るときはスーリアと一緒に帰らないといけないんだった。契約破棄するほど不義理でもないし、スーリアがいいならいいか。スーリアを連れて帰ったら、父さん母さんなんて言うかな…。その時は剣の中にいてもらうか。
「後はこの世界より文明が進んでいるっていえばいいかな。乗り物が発達してて街から街の行き来が簡単になってるよ。今回の旅の距離も、その日中に移動できるくらいだ。」
「それは本当か!?それが本当なら、とても素晴らしい画期的なことね!乗り物って言ったら馬車や竜車になるけど流石にそんなに早くはつけないもの。」
「ミナト君の国は聞けば聞くほど良い国ですね。いや、本当に良い国ですね…。これは移住する価値あるかもです。」
比べてみると日本の方が出来ることは多いな。楽な部分も多いし、何より安全だ。確かに犯罪はあるがモンスターの被害というのがないという点が良い点だろう。守らなきゃいけないルールは多々あるものの、それを守りさえすれば後は自由だ。
「そんなに良い国なら、確かに早く帰りたいわよね。」
「あ、ああ。」
早く帰りたいという気持ちは強い。だけど、今の旅は大変なことは多いけれど楽しいものだ。出会った仲間たちも良いやつばかりだし。このパーティーと別れてしまうのはちょっと寂しい。だけど、俺は戻って会いたい人達がいる。そのためにも頑張るって決めたんだ。
みんなが寝静まった後、ちょっと離れた場所で空を見上げる。この世界にも俺たちの世界と同じように、星があって月がある。月が日本より大きく見えるのは月の位置がこの星に近いせいなのかな。さっき日本の話をしたからだろうか。少ししんみりした気持ちになっている。父さんや母さん、ひまりや桃華達は元気で暮らしているだろうか。急に俺がいなくなったもんだから、悲しんではいないだろうか。いかんいかん、もう高校生の俺がホームシックになるなんて、いかんいかん。とはいえ寂しい気持ちは晴れなかった。するとそこへ
「どうしたの、こんなところで?眠れないのかしら?」
と、ネリネが現れた。
「まぁ、そんなところだよ。ちょっと空でも見ようかなーって。そう言うネリネも眠れないのか?」
「ええ、少し眠れそうになくて…。そうしたらミナトが離れるのがわかったから、ついてきちゃった。」
そう笑うネリネは普段よりも幼く年相応の女の子に見えた。普段のネリネは常にキリッとしている印象を持つ。実際そうなるように自分でも努めているんだろう。そういう彼女が時折見せる柔らかい表情にはドキリとする。つまり今もドキリとしている。
「このところ、ミナトにばかり戦闘させてごめんなさい。でも今がチャンスだと思うから…。」
「わかってるよ。弱いモンスターのうちに戦闘に慣れておかないといざというとき困るもんな。俺だってみんなのお荷物になりたくないし。」
「そう思っていてくれてありがたいわ。」
そう言うとネリネは黙った。俺も何を話していいか分からず黙ってしまった。シーンとした静かな空気が流れる。
「ミナトはさ、凄いね。」
「えっ?」
ネリネが言った言葉が分からなくて、つい素っ頓狂な言葉が出てしまった。凄い?俺が?
「ミナトはさ何も分からずこの国に来たわけじゃない?それも一人で。モンスターと戦ったり、盗賊と戦ったりと、今までやってこなかったって言ってた危険なことだってやってる。それなのに、今も旅が楽しいって言ってくれてる。普通ならへこたれててもおかしくない状況だと思うよ。」
「それはネリネ達が居てくれたからだよ。ネリネがいなかったらもう何回も死んでるよ。だから俺が凄いんじゃなくてネリネが凄いんだよ。」
「私なんて凄いところなんてないわ。ちょっと剣が使えるだけの女だもの。私みたいなのはたくさんいるわ。」
「もしそうだとしてもさ、俺を助けてくれたのはネリネな訳じゃん。だから俺はネリネに感謝もするし、凄いって尊敬の念も持つよ。改めてありがとう、ネリネ。俺を助けてくれて。おかげで今までも、そしてこれからも旅ができるよ!」
「そう言って貰えるなら、私も捨てたもんじゃないわね。ありがとうミナト。少し気持ちが晴れたわ!」
そう言ってとびっきりの笑顔を見せてくれた。やっぱりネリネは笑顔の方がよく似合うと思う。




