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13話 レウイシア

 次の日。俺たちはレウイシアさんに話を聞くべく、ギルドに訪れていた。今回は酒に酔ってないといいけど…。ギルドに入ると左側の酒場へ行く。そこでは昨日と同じ席に座ったレウイシアさんがいた。良かったー、グラスはないみたい。

「レウイシアさん、こんにちは。昨日は突然伺ってしまいすみません。あの後大丈夫でしたか?」

「昨日?はて、覚えていないな。私は昨日君たちに会っているのかい?」

「え、会いましたよ、覚えてないんですか?会ったんですけど、レウイシアさんがとても話せるような状態じゃなかったんで。彼氏さんに振られたーなんだーって。」

「わーわー!わかったわかった!昨日会ったことはわかった。わかったから、それ以上は言わないでくれ。私も忘れたいんだ。」

 ちょっと取り乱すレウイシアさん。昨日の惨状は本人も忘れたいものらしい。そりゃそうか、べろんべろんに酔っ払ってたもんなぁ。

「コホン。改めまして、私がレウイシアだ。私に何か御用かな?」

「初めまして、俺は湊と言います。レウイシアさんがこのギルドにいる人でも高位の魔法使いというお話を聞きまして。お伺いしたいことがあって来ました。」

「ほうほう。まぁ確かに私はゴールドランクの魔法使いだ。他の人よりちょっと魔法について詳しいと思うよ。」

 !?もしかしたらと思っていたが、レウイシアさんはゴールドランクの冒険者らしい。初めて会うゴールドランクの冒険者に緊張する。嘘だ緊張しない。あんな醜態を晒していたからなぁ。

「聞きたいことがあるってことは難しい魔法についてかな?」

「多分難しい魔法だと思います。転移魔法について聞きたいんです。」

「転移魔法か…。」

 レウイシアさんが目を細める。

「実は俺日本っていう遠い国に居たんです。それが突然変な鏡が現れてそれに触れたら、ラークー街の近くの遺跡に居ました。多分これって転移魔法だと思うんです。俺は元の国に帰りたいと思っていますから、何か情報を知りたいんです。何かご存知ではないですか?」

 俺は聞きたいことを話した。ふむふむと聞いていたレウイシアさん。その表情からは何を考えているのかはわからない。しばらく考えてからレウイシアさんは口を開いた。

「知ってるとは思うけど本来転移魔法を使うために必要な魔力量はとても大きい。戦闘中に敵の背後を取るとか物を移動させるとかそういう時にしか使わないからね。国から国の移動に使うなんて、考えられないほどの魔力が必要だろうね。」

 そこで一旦話を区切る。

「残念だけど私も国から国ほどの大転移する魔法については知らないな。」

「そうですか…。」

 ゴールドランクの魔法使いであるレウイシアさんでも知らないのである。俺が元の世界に帰るための情報はどこで手に入るのだろうか。

「ただ、魔法ではないけれども、転移の魔導具があるという話を文献で読んだことがある。太古の魔導具らしくて、なんでも好きな場所に移動することができるらしい。それがどんな場所であれね。太古の時代は今よりも魔力量の多い魔法使いが多かったらしいから、その人たちが作った魔導具なら国から国への移動も可能かもしれないね。魔導具なら魔力も蓄積できるモノもあるかもしれないし。」

 と、新たな情報に目を開く。転移の魔導具。それこそが恐らく俺が探し求めている物ではないだろうか。好きな場所に移動できるというのもまさしく今求めているものだ。

「教えてください、レウイシアさん!その転移の魔導具っていったいどこにあるんですか!きっとそれが俺にとって必要になる物なんです!」

 俺は必死になって前のめり気味にレウイシアさんに質問した。

「ちょっと落ち着いて!顔近い…!」

「すみません!つい興奮してしまいました!」

 レウイシアさんは顔を赤くして身を引いた。ついつい身を乗り出してしまったのは悪かったな。

「コホン!期待させたなら悪いんだけど、私もどこにあるかは知らないんだ。なにせ太古の魔導具だからね。その存在だけで国や団体が有利になる物なんだ。有名な魔導具ならいざ知らず、あまり知られていない太古の魔導具まではどこにあるかは知らないんだ。」

「そうですか、知りませんか…。」

「ミナト…。そういう魔導具があるってわかっただけ前進したじゃない!今度からその魔道具について探していきましょう!」

「そうですよミナト君!探し物がなんなのか決まったんですから、後はそれを探すだけですよ!」

 そう2人が励ましてくれている。そうだ。今までなかった手がかりが見つかったんだ。その手がかりを頼りに探していくだけだ!

「貴重な情報、ありがとうございます、レウイシアさん。おかげで何を探すべきかわかりました。」

「礼には及ばないよ。本当は場所までわかれば良かったんだけど、そこまではね。」

 少し申し訳なさそうに答えてくれるレウイシアさん。これだけでもレウイシアさんがいい人であることがわかる。しかしこれで探すものがなんなのかがわかった。今度はそれについて探しに行こう。

「それはそうとミナトだったかい?君は随分と面白そうなモノをもっているんだね。よければ私に見せてくれないかい?」

 レウイシアさんがいきなりそんなことを言う。面白いモノ?なんのことだろうか。

「面白そうなモノ?なんですか?」

「その腰に下げている剣だよ。やけに魔力を帯びていて、さっきから気になっていたんだよ。」

 レウイシアさんは魔力の流れがわかるらしい。俺の持っている剣を見てみたいらしい。

「見るだけでしたら、いくらでも。どうぞ。」

「ありがとう。ほうほう。これは素晴らしいな。魔力を帯びている剣は今までたくさん見てきたが、その中でも群を抜いて純度の高い魔力が流れているね。これまでのものは見たことがない。これも君の国の物なのかい?」

「いえ、これはこっちの国に来た時に手に入れた物です。盗賊を懲らしめた時に手に入れた物です。」

「そうかそうか。確かに盗賊なんかが持っていても、宝の持ち腐れだろうね。」

 ふむふむとあちこち見るレウイシアさん。中のスーリアはどういう気持ちなんだろうか。

「ありがとう。いいものを見させてもらったよ。この剣。私に譲って貰えたりしないだろうか?金は言い値を払おう。」

 突然の申し出にびっくりしてしまう。当剣?のスーリアはさらに驚いていることだろう。

「それに加えてミナト。君にも興味があるな。」

「へっ?」

 不意の追撃に変な声がでる。俺にも何かあるのだろうか。

「その剣と君の魔力が完全に同じに見えるんだよね。君の体格から剣を振り始めたのは最近のことだろう?それなのに魔法剣と完璧に魔力が繋がっている。普通は魔法剣と魔力が繋がるのは並々ならぬ鍛錬が必要なんだ。それに繋がると言っても魔力同士が混ざる感じなのが通常に対し、君のは完璧に同じ魔力に見える。」

 何も説明していないのに、俺とスーリアの契約について見抜いている。俺とスーリアの関係がそのようになっていたとは。流石のゴールドランクの魔法使い!

「君には魔法剣と繋がれる特異な能力がある。それを君は自覚しているのかな?」

「詳しくは知らなかったです。なんとなくで使っていたので。」

「それはもったいない。どうだい、私の元で修行してみないかい?もっと魔力の使い方を教えてあげることができるよ。」

 驚きの提案!俺がレウイシアさんの元で修行する?確かにそうなれば俺も強くなれるだろう。もしかしたらシルバーやゴールドランクにも届くかもしれない。男の子として強くなりたいという欲求がないわけでもない。しかし、

「ごめんなさい、レウイシアさん。せっかくのお誘いなんですけど、俺は故郷に帰りたいのでレウイシアさんの元へはいけません。この剣も手に馴染んできている剣ですので手放すことはできません。この剣で旅をしたいんです。」

 俺自身故郷に帰りたい気持ちが強い。ひよりや桃華にも会いたいしな。そしてスーリアはいくらお金を積まれても手放すことはない。大切な仲間だ。

「そうか、振られてしまったな。そういうことなら仕方ない。いずれ気が変わったら教えてくれ。」

「はい、わかりました。その時はお願いします!」

「そうだ、魔導具の場所はわからないけれども、遺跡が多い街、イルフ街に行ってみてはどうかな?ちょっと遠いけど過去の遺物とかがよく出るらしいから可能性あるかもしれないよ!」

 イルフ街。そこに行けば太古の魔道具が見つかるかもしれないらしい。

「何から何までありがとうございます。イルフ街目指してみます!」

「こちらこそ、素敵な出会いが出来たことに感謝したいほどさ。」

 レウイシアさんがニッコリ笑った。大人な笑い方についドキリとしてしまう。これでお酒癖がなければなぁ。

「ではありがとうございました!お酒ほどほどにしてくださいね。また会いましょう。」

「そのことはもう忘れてくれ!」

照れているレウイシアさんは可愛くみえた。

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