12話 特訓
王都ラーガの外に出た俺たち。俺への戦い方のレクチャーをしてくれるらしい。
「じゃあ、ミナト。早速やっていくわね。覚悟はいいかしら?」
「覚悟って怖いな。準備はいいぞ!よろしく頼む。」
ネリネと正面で並ぶ俺。ミルとスーリアは近くで腰をかけて見物している。
「最初に魔力の使い方についてやっていくわね。今、自分の中の魔力を感じることはできる?」
「今も大丈夫だ。こう、胸の中をぐわしって感じだ。」
「そう。今は胸のあたりになんとなくある状態だと思うんだけど、その魔力は自由に体内を動かすことができるの。例えばね…こう!」
そう言うとネリネの姿が消えた!?え、今の一瞬でどこに!?
「こっちよこっち。」
と、肩を叩かれて振り返った。ぷにっとネリネの人差し指が俺の右の頬にあたった。えー、なにこれ甘酸っぱいー。照れちゃう。じゃなくて。
「今のどうやったんだ!?気づいたらネリネが後ろにいたんだけど!?」
「今のは足に魔力を宿して足の速度を上げたの。早すぎたから消えたように見えたのね。もちろんこの状態で蹴ったら、凄い威力でしょうね。こんな感じで魔力って使う物なの。」
今のところ俺にとっての魔力は体の内から込み上げるよくわからないものだから実感しにくいが、とても凄いものらしい。
「もちろん魔力をどの部分に集中させるかによって、効果は変わってくるわよ。腕だったら腕力だし手だったら握力。難しいけど目や鼻に集中させれば、視力や嗅覚が良くなったりするわ。」
「へぇ〜そうなのか。じゃあ一流の冒険家になるには魔力を使いこなさないといけないんだな。」
「そういうことね。冒険者じゃなくても戦闘職はだいたい魔力をうまく使うわね。クエストで犯罪集団と戦うこともあるかもしれない。だからミナトにも魔力を使う感覚に慣れて欲しいわ。」
旅を続ける以上危険が伴う。その危険にどう立ち向かうかが、課題になりそうだ。
「ということで最初にやってもらうのは簡単。ジャンプです。足に魔力を集中させて、ぴょーんと飛んでみて。最初だから私の身長よりも高く飛べたら合格!」
「ネリネよりも高く!?人を超えるってそんなことできるのか?」
「できるわよ?見てて。」
そう言うと一瞬目を閉じるネリネ。目を開いた瞬間ぴょーんとジャンプし俺の頭を超えた。目が飛び出るかと思うくらい驚いたね。
「このくらいなら難しくないわよ。家を飛び越えるとかだと難しくなってくるけど、このくらいなら大体のブロンズができるわ。がんばってね!」
このくらいできなきゃこの先やっていけないらしい。やってやらぁ!
その後何回かやってみたが結果は駄目だった。普通にジャンプしてみても勢いをつけてジャンプしてみても普段通りのジャンプにしかならなかった。
「いつもの通りにやってもダメよ。魔力を流さなきゃ高くジャンプなんてできないわよ。」
「そう言われても魔力を集中させる感覚がわからんのよ!どうしたらいいんだ!」
「そこは自分自身で魔力を集中させて、移動させるイメージよ。とにかく集中集中!」
言われた通りに集中しているつもりだが、全然できない。何がダメだと言うんだ、いったい。
「盗賊たちと戦った時に炎を出してたじゃない?あの時の感覚を思い出せば参考になるんじゃないかしら。」
確かにあの時の感覚が一番近いものだと思う。あの炎自体も魔力を使って出したものだ。スーリアの助力あってのものだけど俺が出したことに変わりはない。あの時は無我夢中だったけど、体内の魔力を剣に移動させるイメージだったはず。魔力が体を渡って剣に渡って炎に変換されていた。その時の感覚を足にやればいいのでは?
俺は一度目を閉じ深呼吸をした。体内の魔力は今胸のあたりに感じる。それを足の方へ移動させるイメージ!魔力も自分の体の一部、それを動かすだけ!徐々に動かすイメージ!胸、腹、腿、膝、脛、踵、つま先!
「ぜぇいっ!」
思いっきり俺は飛び跳ねた。それは、ネリネを軽々超える高さの跳躍になった。自分の力で跳べたんだ!いつもより高い景色。最高の景色だった。ズンッと着地しネリネとハイタッチを交わす!
「イェイ!やったぜ!ありがとうネリネ!ネリネの教え方が上手いおかげでジャンプできたよ!」
「大袈裟よ、自分で成し遂げたことだもの。胸を張っていいと思うわ。おめでとうミナト。」
ずっとはしゃいでいる俺であった。結局その後も何回もジャンプして喜びを表現した俺であった。
「次は私の番ですね。まさかあの後あんなにピョンピョンするとは思いませんでしたよ。」
ジャンプできた嬉しさで、数分ほどジャンプしていた俺。年甲斐もなくはしゃぎすぎてちょっと恥ずかしい。
「魔力の移動ができたので、次は魔法講座ですね。いきなり使えるものでもないので、その点はご注意ください。」
「やったー!魔法だ魔法だ!憧れの魔法だ!」
「な、なんですか、そのテンションは!?ちょっと怖いです…。」
ミルに何か言われている気がするが全然気にならない!日本の男子の憧れ、魔法ですよ、魔法!現代の日本男児ならオリジナルの詠唱考えたり、魔法考えたりするもんね!ネリネが使ったのを見た時から使ってみたくてたまらなかったんだ。
「とにかく始めますね。魔法とは魔力を使って行うものです。使えることは千差万別で、炎を出すことから場所から場所への瞬間移動まで様々です。森の中での戦闘でもいくつか見ましたよね?」
「そうだな。炎の槍だったり、透明な盾を出したりしていたよな。後はネリネにファイアーボールってのを見せてもらった。」
「戦闘中でしたけど、よく見てましたね。そうです、それが魔法です。魔力を使うことで出すことのできる特異現象のことです。」
ここまでは自分が認識していた魔法と変わりはないな。日本で漫画を書いていた人たちってもしかして、何人かは異世界帰りだったりするのかもしれないな。
「魔法の使い方は魔力を使い、詠唱を唱えれば発動します。ただ、発動には正しいイメージと慣れが必要です。もちろん相性もあります。どの魔法が使えてどれが使えないのかは、やっていくしかないですね。」
「えー!じゃあもしかしたら、使えない可能性もあるってことか!?それは悲しすぎるぞ!」
「あまりいませんけど、0ではありませんね。でもミナト君はスーリアちゃんと契約してますからね。精霊と契約できている以上なにかしらは使えるはずですよ。というか使えなきゃおかしいです。」
と、ミルが説明する。それを聞いて少し安心する。ここまできて出来ないんじゃない切ないからな。スーリアと契約できていてよかったー。
「じゃあ、早速ファイアーボールやってみましょうか。スーリアちゃんとの初契約時に出してた技が炎系統でしたので、同じ系統で。詠唱は『炎纏し眷属よ。その身を持ちて我が敵を燃やせ、ファイアーボール』です。あの木に向けてやってみてください。」
ここで俺は一度深呼吸をした。ネリネが行ったファイアーボールを思い出す。手のひらから炎の球体を出すイメージ。
「炎纏し眷属よ。その身を持ちて我が敵を燃やせ、ファイアーボール!」
頭の中では完璧なイメージでファイアーボールを作り出す。俺の初めての魔法。それが手のひらから発射されて…!
ガスッ!
そんな音が手のひらから聞こえた。炎の球体は出ず、代わりに黒煙が手のひらから出てきた。とうみても失敗だ。俺の初魔法…。
「あーはっはっはっ!笑わせてくれるじゃないか!私と契約しておいて炎の魔法でコレとは!これだけでも契約した甲斐があったというものだよ。あーはっはっはっはっ!」
スーリアがこれでもかというくらい笑っていた。おのれ、スーリア!隣でネリネもやれやれと言わんばかりに呆れ顔をしている。おのれ。
「ミナト君、大丈夫ですよ!最初はこんなものですよ。次はもう少し火球のイメージを膨らませてやってみましょう!ぷふっ。」
ミルだけは慰めてくれ…いや最後にちょっと笑いやがった!おのれミル!
その後も何回かやったが、結果は同じだった。おかしいな。こういうイベントって大体一回で出来て、かついきなりでこの大きさでこの威力!?こいつのポテンシャルはいったいどこまであるんだ?的な感じじゃないですかね?魔法って難しいなぁ。
「そろそろ見てられないね。パートナーがこうじゃ、私も先が思いやられるからね。」
「スーリアが何してくれるっていうんだ?魔法が簡単にできるコツとかあるのか?」
「コツって言えばコツかな。一旦剣の中に入るね。よいしょっと。」
スーリアは剣の中に入っていった。剣を鞘から抜いてみる。
「今なら私と湊が一体化してる状態だからね。普段よりも魔法が具現しやすくなってるよ。」
「そうなのか?試してみるよ。」
確かに今はスーリアからの魔力も俺と一体化している状態だ。この状態の時に、炎を出したんだよな。
「炎を纏し眷属よ。その身を持ちて我が敵を燃やせ、ファイアーボール。」
すると、手のひらにうっすら魔法陣が現れてそこからサッカーボールほどの火球が現れた。そしてそのまま火球は目の前の木まで飛んでいき、木をコゲコゲにした。
スッゲー魔法放てたよ、俺!
「今の感覚を忘れなければ、私のサポートなしでも魔法使えるようになると思うよ。一回ちゃんと魔法使えたんだから体も慣れたと思うから次からはもうちょっとマシなんじゃないかな?」
「わかった、じゃあ今度は一人でやってみるよ!ありがとな、スーリア。」
スーリアは剣から出てきて、ネリネの方へ戻っていった。今度は一人でやる番だ。大丈夫、さっきはできたんだ、その感覚でやればできる!
「炎を纏し眷属よ。その身を持ちて我が敵を燃やせ、ファイアーボール!」
俺は火球が出るイメージをし、詠唱を唱えた。今まではここで黒煙しか出なかったが、今回は違った。うっすら魔法陣が出てきて、そこから野球ボールほどの火球がでてきた!その火球は前方へ飛んでいき木に当たり焦げ目をつけた。
「やった、一人でできたぜ!やったやったやったったー!」
「おめでとうございます、ミナト君!後は回数をこなせば大きさとかの調整もできるようになると思います!」
俺は初めて魔法を会得した感動で飛び回っていた。片桐湊、魔法を覚えました!




