119話 夏休みの計画
夏休みが始まって一週間とちょっと。今日は部活もバイトも休み。やることもないのでどうしようかと思っていたところに連絡が。友達の立花からだった。
「もしもし、湊?今咲良と一緒にいるんだけど、今からアンタの家に行っていい?夏休みに出かける用事の予定をたてておきたいのよね。宗弥にも声かけとくから、よろしく!」
俺の都合などお構いなしに会合が決まった。え、俺今喋った?
そんなこんなで1時間後。俺の部屋に樫村、立花、里見さんの系四人が集まった。里見さんに関しては毎日会っているので久しぶり感はまるでない。樫村は夏休み限定なのか髪色を金髪にしているが、死ぬほど似合っていない。立花は……わからないが普段より可愛い。いや綺麗と言った方がいいかもしれない。もしかして化粧をしてる?
「何よ、湊。何か私の顔に付いてる?」
「いやいや、別に?何もついてないよ」
「そう。ならいいわ」
俺も顔に出さないようにしないと。
「なぁなぁ、湊。今日はネリネさんとミルちゃんいないのか?仲良くしたいのよ、俺は!」
と、鼻息荒く言う樫村。できれば近づけたくない気がする。
「ネリネとミルなら今日はバイトだよ。夕方頃帰ってくるよ」
「そうか……それは残念だ……」
意気消沈する樫村。そんなに落ち込むなって。
「宗弥?可愛い女の子ならここにもいるでしょ?文句あるわけ?文句あるなら私に言いなさい!」
「いえ、ありませんとも!はい!」
「よろしい」
二人の力関係がわかるやりとりだな。
「二人は仲がいいですね。私たちも見習いましょう?片桐君」
「ははは、そうだね」
つい空返事してしまう。まぁしょうがないよね。
「ところで、湊。家の前はどうしたんだ?ご近所さん改築か?」
「そうよ、そうよ。家の前の一帯が同時に改築ってどついうこと?」
そう。夏休みに入るちょっと前から、ウチの前の家が3軒ほど改築に入った。同時に行っているのでおかしいのだ。しかも。
「住んでた人たちは引っ越したんだよな。ウチとひよりの家に挨拶があったからな。理由は聞かなかったけど、3軒とも何かあったっぽいんだよな」
「なんだよそれ、世にも奇妙な物語、始まっちゃう!?」
「ううーん、聞かなかった事にするわ」
「ふふふ」
まぁ、その話は置いといて。
「今日は夏休みの予定をたてるんだろ?部活やバイトもあるからそこまでは出られないかもだけど。バイトは多くないけど部活は出ないと先輩が怖いし」
「湊にとっての怖いは違う意味での怖いだしなぁ。あんな美人の先輩に好かれてて羨ましいぜ!」
「片桐君がモテるのは妻として鼻が高いですが、油断なりませんね。そう思いませんか、七海?」
「どうして私に振るのよ、咲良?別に湊が誰にモテようと関係ないわ」
「凪沙先輩も悪い人ではないんだけどなぁ。ちょっと依存癖があるだけで……」
凪沙先輩は普段接してる時は明るいし楽しい先輩なのだが、ちょっと構わなくなると凄いかまちょになるのだ。だからやりとりはこまめにしている。
「夏休みなんだから色々行きたいわよね。海にプールに山に遊園地。動物園や水族館もいいわね!」
立花はこの夏色々やりたいみたいだ。
「プールなら蓮沼のプールでいいっしょ。広いし1日中楽しめるぜ!」
「動物園なら千葉の動物公園、水族館なら鴨川の水族館がいいかな」
「海なら房総の方に別荘がありますので、ご提供できると思います。プライベートビーチもありますから、私たちだけで楽しめますよ?」
「「「ええーー!!??」」
里見さんを除く三人が驚きの声をあげる。別荘?プライベートビーチ?アニメでしか見たことも聞いたこともない。
「父が若い頃に房総方面で仕事していたらしく、その時に購入したのだとか。数ヶ月に一度、お手伝いさんに掃除をお願いしてますから、綺麗な状態だと思います」
「咲良。それってほんとう?本当に行ってもいいの?私、期待しちゃうわよ?」
「そうだぜ、咲良ちゃん!そんな一生の思い出案件、絶対行きたいぜ!」
「俺も行きたいな、里見さん。お父さんに聞いてみてくれないかな?」
「そんな、お義父さんだなんて……。わかりました。皆さんの頼みです。父に聞いてみます。少し席を外します」
そしてスマホを片手に部屋を出ていく里見さん。
「それにしてもプライベートビーチねぇ。実在したのね」
「確かに。アニメでしか見たことないよ。」
「ナンパできないのは、ちと残念だがその分海を独り占めできるもんな」
「あら、アンタだけ一般のビーチに行ってもいいのよ?」
「それだけは嫌だー!」
と話していると、
「父に聞いてきました。ちゃんと後片付けをすれば使ってもいいそうです!」
「「「やったー!!」」」
夏休みにすごい体験ができそうだ!
「部屋は多いのでもう何人お呼びしても大丈夫ですよ。私はネリネさんや、ミルちゃんたちをお呼びしたいです」
「だったら、ひよりや桃花もよばないとな。」
「湊、凪沙先輩も呼んでおいたほうがいいぞ。後が怖いからな」
それは確かに。後がめんど……怖いからな。
「じゃあ日取りも決めようか。何日だったら都合いい?お盆とか?」
「その時期を超えるとクラゲが出てくるからなぁ。クラゲはあかんよクラゲは」
「なによ、宗弥。クラゲに刺されたことでもあるみたいじゃない」
「あるんだよ、それが。痛くてたまらんのよ、アレは。二度とごめんだ」
「私は大丈夫ですよ、クラゲ。毒が効かない体質なんです、私。プニプニしてて可愛いです」
「毒が効かないってどういうこと!?あ、蜂とか大丈夫ってこと?」
「そうです。小さい頃刺されたのですが全く腫れなかったんです。他にも間違えて毒のある部位を食べてしまったフグも大丈夫でした。不思議に思った父が、病院で検査をさせてもらったら色々な毒に耐性があることがわかったんです。だから私に毒は効きません」
「凄いキメ顔だね。毒が効かなくてよかったよ。効いてたら里見さんに会えなかったかもしれないよね。フグの毒なんて青酸カリよりずっと強いし」
「片桐君……」
「ちょっと!二人の世界作らないでよ!今はクラゲの話!」
二人の世界に入ったつもりはなかったが。俺と里見さんはそういう関係ではない。
「そうだぜ湊。クラゲが出ないお盆前がいいと思うぜって話だ」
「そうね。お盆前がいいと思うわ。後は何泊かだけど……。まさか別荘が使えるのに日帰りってことはないわよね?」
「ええ、何日か使っていいと聞いています。折角ですし、四、五日はいかがですか?」
「そんなに使っていいの!?やったな、樫村!」
「やったな湊!美少女たちと過ごすサマーバケーションだぜ!」
ガシッと握手する俺と樫村。
「バカがいるわ、バカが……」
と、頭に手をやる立花。
「では四泊五日にしましょう。皆さんは予定大丈夫そうですか?」
「私は大丈夫よ。他の友達の予定もまだ入れてないしね」
「俺も大丈夫だわ。日雇いのバイトもこれから決めるし」
「俺も大丈夫かな。部活はもお盆前には休みになるし。アルバイトも変わってもらえるだろうし」
「わかりました。では大丈夫そうですね。一応私たちは未成年ですので保護者役に私の家の者が付きます。同じ建物で過ごすわけではなく隣の建物で寝泊まりしますのでお気になさらずに。後は食事ですが、こちらから提供させてもらえればと思います。ご希望があればバーベキューとかもできますので。本邸に父の集めた動画があるのでそれを使いましょう。」
「何から何までありがとね、咲良。甘えさせていただくわ」
「後は参加費だけど、どれくらいがいいかな、里見さん」
「参加費なんて必要ありませんよ?全て当家で出させていただきます」
「そう言う訳にもいかないわ、咲良。たくさんお世話になるんだもの。全額出してもらうのは申し訳ないわ」
「そうだよ、咲良ちゃん。俺たちそんなに図々しくないぜ」
「せめて気持ち程度は出させてほしい、里見さん」
俺たちは里見さんをじっと見つめる。
「わかりました。では一万円だけいただけますか?」
「むしろ、それだけでいいのって感じよ、咲良」
こうして俺たちは里見さんの別荘に行くことになった。うう。すげー楽しみだ!




