109話 決着②
車に戻ると運転手さんが待っていた。運転手さんはオオツカという名前らしい。だからか渋いダンディな声に聞こえる。車の中にはミルがタオルケットに包まれて眠っていた。タオルケットの下では大怪我を負っているのなわからなかった。
「ホントにミルは大怪我を負ったのか?見たところ普通に見えるが。」
「酷かったんだから。氷に貫かれてお腹に穴が空いちゃって……。あの時ほど、回復魔法教わっておいて良かったって思ったことないもん。」
重い表情で語る、ひより。そうか、そんなにひどかったのか。俺は適性がないのかわからないが回復魔法はほとんど使えないから、残ったのがひよりでよかったのかもしれない。
「ミルちゃんはしばらく眠っていれば良くなると思うよ。魔法ってすごいね。あんな大怪我でも治っちゃうんだから。」
「でもその代わり、消費魔力は大きいの。戦闘中は何度も使えないから気をつけてね。」
「そもそも戦闘はしたくないかな〜。治るとしても怪我は負いたくないもん。痛いから。」
周りが少し和んだ。ひよりは場の雰囲気を良くする天才だな。少し重かった空気を和ませた。
「では皆さん車へ乗ってください。帰りましょう。」
里見さんがそう言ってみんなが車に乗り込む。スーリアは俺のペンダントの中に入っている。大型車でよかった。みんな入れる。乗り込んでる中、桃花が止まった。どうしたのか?
「私このまま皆さんと一緒に帰ってもいいのかなって思うんです。私は先輩に敵対しました。今までの通りに過ごすことなんて、許されないと思うんです。このままお別れした方がいいんじゃ……。」
そんなに思い詰めてしまったか。俺がかける言葉はただ一つ。
「桃花。あんなことがあったってお前は俺の後輩だよ。そしてみんなの仲間だ!さっきも言っただろ。気にしていないって。これからもよろしくな桃花!」
そう笑顔で答えた。桃花はびっくりしたような顔をした。そして桃花が車の中を見ると車の中のみんなも力強く、笑顔で頷く。そして俺の方を向き、泣きそうな、でも笑顔で答えてくれた。
「はいっ!」
「そうか。山背の計画は失敗に終わったか。まぁ所詮は研究だけの小者か。誰かに使われるのはいいが使う方は慣れていなかったか。」
広い部屋の中心でいかにもな黒い1人用のソファに腰掛ける男性がいた。ウィスキーを片手に部下からの報告書を読んでいた。
「現在、山背、我妻、南雲、クロードの幹部四名は里見家に拘束されました。警察に捕まった組員は全体の一割です。千葉支部はしばらくは機能しないとの事です。」
目の前に立つ女性が淡々と報告する。
「千葉支部はダメか。千葉は中々のパワースポットだから押さえておきたい。関東の支部の人員を千葉へ送る。実力のあるものを送ってくれ。」
「かしこまりました。関東の各支部に連絡し人を送らせます。幹部は送りますか?」
ウィスキーを一口飲み、少し考える素振りをする男性。
「送り込んでくれ。人選は任せるが、各支部から一人以上選んでくれ。」
「かしこまりました。」
「それから……。」
男がグラスを机に置いた。少し声のトーンを落として話を続けた。
「山背達を倒した高校生グループを調べてくれ。可能な限り里見家にばれないようにな。里見家と争う気は今のところない。後千葉に人員は送るが今回の高校生グループとの接触は禁止にしてくれ。柚木桃花も一旦放置だ。今はまだその時ではないようだ。」
「かしこまりした。そのように伝達致します。」
「以上だ。下がってくれ。」
頭を下げて、部屋から出ていく女性。男性は残ったウィスキーを飲み干しソファに深く座った。
「片桐湊、君は一体何者なんだい?」




