107話 柚木桃花⑥
俺は桃花に向かって走り出す。とにかく桃花を気絶させなければならない。そうしなければ桃花もずっとあのままだ。この空間も元に戻らないしな。
「先輩、逃げ回っても無駄ですよ。私の魔力量は先輩より多いので先輩よりも長く魔法を使っていられますよ?」
そうなのだ、それがやっかいだ。魔力量で勝てないのなら使える魔法と経験で勝つしかない。と言ってもたかが知れてるが。見たところ桃花が使える魔法は闇の球と闇の矢だけのようだ。今までミルに教わった魔法は今は使えないのか使わないのか知らないが使ってこない。二つの魔法だけなら勝機はある!俺は桃花に向かい走り出した。
「先輩の方から来てくれるんですね!嬉しい。」
桃花の甘い声が聞こえる。耳を傾けてしまうとその甘さに溺れてしまいそうになる。けれど、俺はまだ桃花を含めた皆と一緒にいたいんだ!
「燃え盛る炎帝よ。我に逆らいし者を灰燼とかせ!エンテライザー!」
悪い大きな炎の球を出現させる。気持ちとしては擬似太陽くらいの大きさを目指したいけどまだまだそれには及ばないが学校の校庭くらいの大きさはあるだろう。今俺が使える魔法で一番威力のある魔法。今までの攻防で分かったが、俺の最大威力の魔法でもネリネは倒れない。より効果的な方法を取る必要がある。ネリネやミルだったらうまい方法思いつくんだろうけどな。俺には荒っぽいことしか思いつかない。わるいけど付き合ってもらうぞ、桃花!
「いくぞ桃花。覚悟はいいか?俺はできたぞ。」
「先輩の全力を受け止められて嬉し気です。でも勝つのは私です。先輩と二人きりで一緒になるんです。」
ここまで好意を向けられて嬉しくないわけがない。だが、桃花の本心はまた別のところにあると思う。それがわからなきゃ答えがだせない。奴らの実験の副作用が現れているような状況を打破してやる!
「ちょっと熱いぞ。」
そうして、俺はエンテライザーを桃花へ落とした。
桃花の闇の球がいくつも放たれるがエンテライザーに飲み込まれていく。ここで桃花がとるべき選択は、
「我らを守る守護の盾、生命の源!アクアシールド!」
ミルに教わった水の盾だった。その大きさはエンテライザーに負けじ劣らずだ。かなり大きい。二つの魔法の接触部分が水蒸気になって消えていく。目に魔力を込め、遠くの桃花を見た。俺の最大の魔法を阻止できそうからか少し安堵の表情を浮かべている。その隙を待っていた。俺は足に魔力を込めて走りだす。残ってる魔力を全部回すほど全力だ。すぐに桃花の目の前までたどり着いた。そこには急に現れた俺にびっくりする桃花がいた。俺は桃花のお腹に右手を触れさせた。そして、
「桃花ごめん!はぁ!」
魔力を流し込んだ。衝撃としては大したことではないと思うが直接他人の魔力を流し込まれた。体内の魔力バランスが崩れ、桃花はそのまま意識を失った。俺は体勢を崩しながら倒れる桃花を支える。ふぅ、これで終わった。




