105話 柚木桃花④
俺は炎の槍を出しながら詠唱を始める。頼む、うまくいってくれ!
「逆巻け炎よ!全てを焼き尽くす豪爆の焔!フレイムタイガー!今だ!」
詠唱を唱え終えた瞬間にフレイムランサーを消す。そして消した直後にフレイムタイガーをだす。この瞬時の切り替えができるかどうかが鍵だった。結果はフレイムタイガーが現れ闇の矢と闇の玉を同時に飲み込む。そして互いに消滅していく。ふぅ、なんとかなったか。
「先輩……流石です!やはり先輩はこの程度ではダメですね!もっと本気で行きますよ!ダークネスボール!今度は2個でいきますね!」
闇の球が2個飛んでくる。闇の球が2個飛んでくる!次はどう防げばいいんだ!
発信機とやらがついているので桃花の居場所がわかると運転手、オオツカさんが言っていた。そんな便利なものがと思ったが、この世界色々なもので溢れている。何があっても不思議じゃない。私はオオツカさんが運転する車で桃花がいる場所へ向かっている。あと、咲良とひよりと眠っているミルがいる。私と咲良はダメージを負っているがまだ戦える。ひよりは戦闘経験がなく、ミルはダメージが大き過ぎるので戦闘は無理でしょうね。まだまだ敵が出てくるかもしれない。ミナトだけでは心配だから早く追い付かなくてはね。
「片桐くんは大丈夫でしょうか?」
そう心配そうに呟く咲良。先ほどの戦いから随分と雰囲気が柔らかくなった。ミナト以外にも心を開いてくれているようだ。
「ミナトだって死線を潜り抜けているわけ。簡単にやられたりしないわよ。」
「そうだといいのですけど……。うぅ……心配です。」
私も強気なことを言いつつ心配だ。さっき戦った二人も相当な実力者だった。この先ミナトが強者と戦うかもしれない。仲間心に心配だ。
「二人とも大丈夫だよ。誰かを救う時のみな兄はすごいんだよ!なんかありえないくらい凄い!」
と後ろの席からひよりが声を出す。
「凄いってどう凄いの?強くなるってことかしら?」
「力強さというより精神が強くなる感じかな?とにかく、凄く頼りなるよ。だから私はちっとも心配してない。必ず桃花を救ってくれるよ!」
私たちにはない二人だけの積み重ねた絆があるのだろう。私たちもミナトを信じよう。ミナトのここぞという強さを。
「はぁ、はぁ、はぁ……。」
いったいいくつの闇の球を潰しただろうか。俺の限界はとうに超えている気がする。
「先輩流石です。私の攻撃をここまで防ぐとは……。やはり私の目に狂いはありません!先輩こそ私の先輩です。」
もう桃花が何を言っているのかわからない。わかるのは俺の力がもうすぐ尽きるということだ。このままじゃ桃花を救えない。いったいどうしたら…。
『 なと、聞 ?みな こえ !?』
誰かの声が聞こえる?途切れ途切れだが確かに聞こえる!
『湊!聞こえるかい、湊!」
『スーリア!』
ここにはいないはずのスーリアの声が聞こえる。聞こえるというより、頭に直接語りかけているようだ。
『やっと聞こえたかい。全く、湊ときたら心配をかけさせるんだから。でも話しかけてた甲斐あってようやく掴めたよ。』
『掴めたって何がだよ。こっちは攻撃を対処しながら話してるんだ。簡潔に頼むよ』
そう話してるこの間も桃花の闇の球は飛んでくる。そろそろ限界かも……。
『その空間は柚木桃花が作り出した、湊と柚木桃花だけの空間だよ。閉鎖的な空間だから他者の干渉は基本できない。私ですら湊との結びつきが強いから話だけできてる状態さ。それも長くは続かないだろうね。』
『それはわかった。これからどうしたらいい?』
この先どうしたら元の空間に戻れるのかがわからない。流石に桃花を倒すわけにも行かないし。
『桃花が意識を失えばこの空間は消滅するよ。こういう特別な空間は創った術者が気を失うか死ねば消滅する。覚えといてね。』
『気を失わせればいいんだな。わかった。ってそれが難しいんだけどな……。』
『ヒントは与えたんだ。後は自分でどうにかしてほしいね。まだせ いを、 きれ ない だから ん とこ でやら ないでよ。』
『スーリア?スーリア!?』
急にスーリアの声がとぎれどきれになり、ついには聞こえなくなった。
「内緒話は終わりましたか?」
桃花にはバレバレだったようだ。だが何を話していたかまではわかっていないはず。
「話を邪魔しないでくれたんだ。ありがとう桃花。」
「当然ですよ。私と契約したらスーリアともお話しできなくなるんです。最後のお話くらい許してあげますよ。」
そういうことか。なら最後は遠慮なくやらせてもらうとするか!




