104話 柚木桃花③
今、桃花はなんで言ったんだ?契約を強制的に結ばせる?それがなされたら何が起こるのか。
「らしくないぞ、桃花?桃花はそんな人の意思を捻じ曲げる事はしないだろ?」
「私らしい?私らしいってなんですか?いつもお淑やかで誰にでも優しい可愛い女の子。それが私らしい柚木桃花ですか?違いますよ、先輩。本当の私は、好きな人を独り占めしたい、卑しくて醜い自分勝手な女です。そして好きな人を手に入れる為ならなんだってやります。それがその人の意思に反するものだったとしても!なので先輩?大人しく私のものになってください!」
そう言うと桃花が奥へ移動し、黒い光に包まれた。そして現れたのは黒を基調とした服に包まれた、例えるなら黒い妖精のような格好の桃花だった。背中には黒い羽もあった。正直目を奪われるほど可愛らしかった。蠱惑的なみりょくがある。
「さて、先輩。大人しく私と契約を結んで下さい。大丈夫です、怖くないですし痛くないです。全てを私に委ねてください。」
と後ろの空間から黒い光の矢を三本こちらへ飛ばしてきた。俺はそれを右へ左へステップしかわした。
「やめてくれ桃花!俺はお前と争いたくない!」
「でしたら大人しく攻撃を受けて私に身を委ねて下さい!」
ダメだ。今の桃花とは話にならない。少し手荒だが仕方がない。気絶させて冷静になってもらおう。
「早めに眠ってもらおう。スーリア頼む!」
と精霊剣を呼び出した。いや、呼び出そうとした。しかし
「マスデバリアが出てこない?なんでだ!?」
「この空間は私が作り出した結界です。たとえ契約した精霊でも私の許可なく入る事は出来ません。」
「なんだと!?」
武器が出てこないとなると今まで通りの戦い方ができないと言う事だ。そんなんで今の桃花と戦えるのか?
「じゃあ次は数を増やしますね。うまく避けて下さい!」
次々に闇の矢が放たれる。次は数は十!
「うおおおおお!」
走って闇の矢をかわす。かわすって言うカッコいいものではないかもしれない。ギリギリのところで当たらずに済んだる。
「普通の人なら当たってるところですけどね。流石は先輩です。魔力で走力を底上げしてるんですね!」
おっしゃる通りです。精霊剣が出せなくても俺自身の魔力はある。その力で桃花を無力化しなくては!
「次は一回で放つ数が多いですよ!どんどんいきますね!」
闇の矢が次々と放たれる。真横に一斉に放たれるので今度はかわしきれない。ならば!
「溢れ出す灼熱の炎、邪悪なる魂を焼き尽くせ!フレイムランサー!」
魔法を詠唱し放つ。この魔法は炎の槍を多数出現させる。その数は俺の意思次第!
「桃花!」
「先輩!」
俺の炎の槍と桃花の闇の矢が衝突し合う。その力は互角。ばちばちっと消滅していく。俺の炎の槍では負けない事はできても桃花を無力化する事ができない。俺は今までいろんな相手と対峙してきた。精霊剣を出さなくても戦闘経験のない桃花には負けないと思っていた。だが、桃花は強い。陰陽師・山背が言っていた能力が引き出せているのだろう。それに異世界で言うところの先祖帰りにあたる能力者だ。才能は俺より上だろう。だから経験で抑えようと思っていたのだが、それも叶わなそうだ。いったいどうすれば!
「うーん、これでも先輩はやられてくれませんか?気絶したら契約までちょちょあのちょいなんですけどね。さっきはあとちょっとのところで起きちゃいましたからね。今度はそうならないようにしっかりと眠ってもらいましょう。」
闇の矢を放ちながら、桃花は暗く光る大きな球を頭上に出した。おいおい、あんなの食らったら気絶じゃ済まないんじゃ?それに俺はミルと違って二つの魔法を同時に出せない。闇の矢を防ぎながら闇の球を防ぐ事はできない。やばい。どうする。
「ではこの一撃を持って終わりにしたいと思います!先輩、おやすみなさい。」
闇の玉が俺めがけて放り投げられる。このままでは俺は負ける…。そうはさせない!まだできる事があるはずだ。




