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103話 柚木桃花②

 話し声が聞こえ、その声につられて目を覚ますと辺りは真っ暗闇に覆われていた。何も見えない。何も見えないがお腹の辺りがゴソゴソと音がしていたので腕を伸ばす。

「あん!」

 柔らかい感触と可愛らしい声が聞こえてきた。俺のお腹の辺りに誰かいるようだ。顔を起こしてそちらを見てみる。するとそこには、

「桃花!」

 桃花がいた。機嫌がいいのかニコニコしている。

「はい!先輩の桃花です!」

 変な物言いに引っかかるが今は気にしている場合じゃない。

「桃花、無事でよかった!痛いところとかないか?」

「はい、ありません。お気遣いありがとうございます。やはり先輩は優しいですね。」

最後は小さい声でよく聞こえなかったが、桃花はうっとりしているように見える。なんだか桃花の様子がおかしい。怖い目にあったんだ無理もない。早いところここから出ないとな。

「あれ?」

 桃花発見で気づかなかったが、制服がはだけている。ワイシャツのボタンが外れて上半身が露出してしまっている。別にこのくらいどうってことないけども驚いている。自分でしたわけではないのだから脱がした誰かがいるわけで。ここにいるのは俺と桃花しかいないわけで。というか真っ暗闇なのに俺と桃花だけはっきりと見えるというのはどういう事だろうか?

「先輩?そろそろ意識もはっきりしたころですか?今の状況わかりますか?」

 今の状況……。

「真っ暗闇の空間に俺と桃花の二人きり。そして何故かはだけている俺の服……。まさかこれ桃花がやったのか?」

 そう結論づけて言う。頭の中では間違っていてくれと叫んでいる。

「はい、そうです!これは全部私がやりました!ちょっとした乙女の悪戯なので許してもらえると嬉しいです!」

 俺の願いは届かなかった。全部桃花がやったのか。桃花がこんな悪戯をするイメージがない。

「この暗闇も桃花がやったのか!?一体どうして?いやいったいどうやって?」

 服を脱がした件はスルーすることにした。

「はい!私もよくわからないのですが、目が覚めたら色々できるような気がして…。試しにやってみたら出来ちゃいました!先輩と二人きりになりたかったんです!」

 恐らく能力が目覚めたのだろう。あの陰陽師、山背の装置に繋がれてたみたいだからそれで覚醒したのだろう。だがわからない事は、

「なんとなく状況はわかった。でも俺と二人きりになるのに随分大掛かりだな。能力を使わなくたって俺は話を聞くぞ?」

 俺は後輩との会話ならむしろ喜んでする。だからこんなことしなくたっていいのに。

「あ、いえ二人きりになりたかったのは先輩を私のものにしたかったからです。少しアプローチに時間がかかりそうなので!」

 警鐘がなった。この感覚覚えがある。ついこの間里見さんからのアプローチをもらった時と似た感情を今桃花から感じている。もしかして桃花も?

「先輩の事が大大大大好きなので、この先の人生ずーっと一緒にいてもらいたいのです!その為契約を結びたいんです!いついかなる時でも私のことを想っていただけるように!だから先輩?先輩の全てを私がいただきますね?」

 桃花の愛が重い……!里見さんの時もそうだったけど俺には受け止め切れる自信がない。そもそも桃花の事は好きだけど恋愛対象としては見ていない。ひよりと同じ妹みたいなものと思っている。だから急に好意を向けられても困ってしまう。

「桃花?気持ちは嬉しいんだが俺はお前の気持ちには答えられない。俺にはまだ恋人を作るつもりがないんだ。だから、すまない。難しいかもしれないが今まで通り先輩後輩の関係でいられたらと思う。」

 と、正直に答えた。ちょっと直接的に伝え過ぎたかもしれない。でも曖昧な答えを出して気持ちを弄ぶことになる方がよっぽどダメだ。桃花はその場で俯いてしまった。心が痛むが仕方がない。そして桃花が顔をあげて、

「先輩?私たちが付き合う付き合わないの問題ではないんです。先輩と一生を添い遂げる契約を結びましょうと言ったんです。これは破る事のできない誓いです。先輩に結ぶ気がなくても強制的に結んでもらいます!」

 と仄暗い目の色をさせながらそう言った。

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