10話 精霊との邂逅
「ミナト君!どうしちゃったんですか!?びっくりしちゃいましたよ!というか大丈夫ですか!?」
と、ミルが目を丸くして話しかけてくる。それを隣でネリネがコクコクとびっくりした顔で頷いている。うん、二人とも可愛い。
「詳しい話は後にしよう。こいつらが起きる前にここを離れたいし。ああ、ついでに武器壊しとこっか。」
俺は精霊剣マスデバリアで盗賊達の剣や弓を一つづつ壊していった。いやぁ、ストレスの解消になりますなぁ。その様子もポカーンとした感じで見る二人。
壊し終わった俺たちはその場を離れ、森の出口を目指す。歩きながらあった出来事を話す。
「まず、怪我ってどうなったの?それにその剣って…。」
「ざっくり説明すると、この剣には精霊が宿っているんだって。宿ってる精霊はマスデバリア。その精霊と契約をしたから助かったんだって。」
「説明がざっくりしすぎですよ…。って、精霊!?精霊ってあの精霊ですか!?中々人前に出てくることがないんですよ!精霊って!」
あ、そうなんだ。レアな存在なんだな精霊って。あの空間でマスデバリアが喋ったのも数百年ぶりって言ってたもんな。
「俺が適合者なんだってさ。精霊剣に貫かれたからわかったんだって。いやぁー、運がよかったわ。貫かれたのがこの剣じゃなかったら、死んでたもんなぁ。おかげで傷もなく元気だわ!」
「呑気に言い過ぎよ!どれだけ私が心配したことか…。私を庇って刺されないでよ…バカッ…。」
「悪かったよ。あの時は無我夢中でネリネを助けなきゃって思ってさ。でも実際助けられてよかったよ。」
「中々出来ることではないですよね。身を挺して守るだなんて。でも見てる側からするとハラハラドキドキものなので2度としないでくださいね。」
2人に色々言われてちょっとシュンとする。たしかにそうだよな。今回は運が良すぎた。次回がもしあるとしたら、自分を守りながら庇えるようにしなくては!
モンスターに遭遇することもなく、なんなく森を抜けた。森を抜けるとそこはひらけた場所だった。盗賊達が出てくるとも限らないから道からそれたところに歩き出す。
「ここまでくれば安心かな。紹介するよ。出てきてくれマスデバリア!」
そう言うと、精霊剣が少し輝き、丸い球体が現れた。その球体が少しづつ形を変えて人型に変わった。さっき、意識空間で出会ったマスデバリアその人だった。
「このちっちゃいのが剣に宿る精霊マスデバリアだ。よろしくな。」
「ちっちゃい言うな!ふふん、我こそは精霊マスデバリア様だ。ひれ伏せ人間共よ!我を崇めよー!」
「マスデバリアって名前長くて呼びづらいよな。あだ名は………スーリアにしようか!」
「勝手に短くするでない!威厳ある私の名前が台無しであろう!」
「そんなに怒らなくてもいいだろう、スーリア!うん、可愛いあだ名じゃないか。」
「精霊としての威厳ってものがあるんだ!」
『ぽかーん』
2人が口を開けて惚けている。人前には中々出てこないって言ってたから珍しいんだろうか。
「私、精霊って偉そうっていうか厳かな存在かと思ってたわ。」
「私もです。ですが、実際は私たちに近い存在なんですね。びっくりです。」
「そらみろ!君のせいで私のイメージが台無しじゃないか!」
「まぁまぁ、実際こういう感じなんだからいいじゃん。なっ!」
ちょっと和やかな雰囲気が俺たちの間に流れる。スーリア可愛いからこういう感じの方がいいよ!きっと!
「とまぁ、アクシデントはあったが、私がマスデバリアだ。呼び方は…まぁ好きにするが良い。別に呼び方で私の偉大さが変わるわけでなし。普段はその剣の中に入っておる。よろしくな。」
「私はミルトニアと言います。どうぞミル呼んでください、スーリアちゃん。」
「私の名前はネリネ。よろしく、スーリア!」
「早くもスーリア呼びが浸透しているじゃないか!」
ノリの良い2人で良かった。3人とも早くも仲良くなれたみたいだ。
「でも実際精霊という存在を初めて見ました。私たちと変わらない存在に見えますね。とっても可愛いですし。普通は人里近くにはいないと聞いていましたが。」
「あいにくとボロい剣だったんでね。色んなところで使われていたんだよ。今回はアイツらだったけどね。でも、適合者とは今まで会えなかったから姿を現すのはもう数百年ぶりだよ。」
「そんなになんだ。話のスケールが違いすぎるわね。」
とにかく、精霊という存在は珍しいらしい。話ぶりからも希少性がわかる。俺としてはそんな感じはしないんだが。話している感じはひよりと話しているのに近い感じがする。やけに近しく感じるというか。
「じゃあ自己紹介は終わったな。今度こそ、王都を目指そう。ネリネ、ここからは近いか?」
「森を抜けたから王都までそこまで遠くないわよ。盗賊達の件があるからもう少し歩いてそこで野営にしましょう。」
俺たちは再び歩き始めた。
少し歩いて野営に良さそうな場所を見つけた。そこで一旦腰を落ち着けてから話した。
「それにしても、本物の精霊に会えるなんて感激です!御伽噺とかにも出てくる存在ですからね!人間が出会えたケースってそれこそ少ないんじゃないですかね!それにこんなにも可愛いなんて!」
と、ミルがスーリアを見ながら話す。魔法使いでもあるミルが1番スーリアの存在を喜んでいるような気がする。可愛いってのもあるかもしれないけど。
「ふふん、そうだろう。私も自分以外の精霊ってあまり見たことがないんだよね。私は剣に宿ったから、精霊がいそうなところに基本行かないからさ。他の精霊に会えるのなら会ってみたいね。」
「スーリアみたいな精霊が近くにいたら、スーリアはわかるのか?仲間の気配をさ。」
と、思った疑問をそのままスーリアに投げかける。すると、
「うーん、そうだねぇ。基本的にはわかると思うよ。相手の精霊が気配を隠そうとしない限りは。流石の私でも隠れている精霊までは探せないからね。」
「そういうものなのか。でももし、精霊と出会えるんなら、精霊同士仲良く出来るといいな。」
「…そういうことを笑顔で言うでない。少し恥ずかしいではないか。」
「ん?どうかしたか?よく聞こえなかったんだが?」
「なんでもないわい、阿呆め!」
と何故か怒られた。周りのネリネとミルもやれやれって感じで首をすくめていた。俺が何かしたのだろうか。
「落ち着いてきたことだし、聞いておきたいことがあるの。ミナト。あなたどのくらい強くなったの?精霊と契約しての初戦闘であの火力。とても強くなったんじゃないかしら?」
ネリネが真剣な表情で問いかけてきた。それ自体はこれからの旅にも関わるから話さなくちゃいけないな。
「この精霊剣から炎が出せるようになった。後は魔力がどういうものか感じることができるようになった程度だ。この炎がまぁ強いから、今のところ炎の強さ=俺の強さと見てもらっていい。ネリネよりは断然弱いよ。」
「そうなの?精霊と契約したのだからもっとパワーアップしていてもいいようなものだけど。」
横目でスーリアを見やるネリネ。スーリアはどこ吹く顔だ。
「魔力を感じることができるようになったから、教えてもらえれば魔力を使った攻撃や移動ができるようになると思う。それに魔法もな!」
「湊の魔力量自体は私と契約したから相当上がっているよ。一般人では中々手が届かないくらいにね。それをうまく使いこなせるかは湊とその師匠しだいかな。」
「というわけでよろしく頼むよ、2人とも。俺も2人から早く教わって足手まといを脱却したいんだ!」
「そういうことね。それなら任せて。元々、魔力を感じられたら教えるつもりだったことを教えるから!」
「ええ、そういうことなら、私からも使える魔法から強い魔法まで色々教えますよ!覚悟してくださいね、ミナト君!」
それにしても。ミナトの行動には焦ったわ。まさか私を守るためにその身を盾にするなんて。普通では考えられないことね。ミナトは普通の男の子とは何かが違うのかもしれない。普通家族くらい親密でもない人の盾になんてならない。私とミナトはまだ親密度は高くない。まだ他人レベルに過ぎない。なのにあの行動力はどこからくるのかしら。勇気と言えば聞こえはいいかもしれないけれど、私にはそうは思えない。なにかしらミナトには普通ではない何かがあるのではないかしら。それはこの旅の中でもでてくるかもしれない。注意深く見ていないと、いずれ破滅してしまうかもしれない。そうならないようにしなくては。




