体育館倉庫のきーくん
私が通っていた小学校には、いつ頃からあるのかわからない噂があった。
それは、体育館倉庫にまつわる……ある男の子の噂だ。
呼称をきーくんとされるその男の子は、なんでもいじめられっ子だったそうだ。
その原因は顔にあった火傷痕のせいであったらしい。
今聞いても、理不尽な理由だがかなり前からある噂なので、もしかしたら価値観の違いなのかもしれない。
いや、今もいじめの原因なんてわからないものか。
話は逸れたが、このきーくん。
ある時、体育館倉庫に閉じ込められたんだとか。
タイミングが悪い事に、夏休みの時期に。
そのせいで発見が遅れたとかで、きーくんは亡くなっていたそうだ。
それ以来、体育館倉庫に夏休みの時期に行くと、泣き叫ぶが聞こえるらしい。
「出して! ここから出して!」
そう助けを求めるきーくんの声が。
そして、その声を聞いた子供は……皆顔に火傷痕のようなものができてしまい、三日三晩うなされるのだとか。
私の世代では、その噂を試そうとする子はいなかったが、過去には実際に声を聞いた子がいるとか。
どこまでも真偽不明な話だが、一つだけ確かな事がある。
それは、体育館倉庫の端に誰かが毎日黄色い花を置いているという事だ。
何故花を置くのか?
この理由も、きーくんについての詳細も、知る者は誰もいない――。