金魚のフンが難癖をつけてくるけれど
「この、王子を誑かす悪女め!」
私を囲む男が、一人二人、三人。
ああ、また、と思う。
他にすることはないのかしら。
王子の取り巻き達だ。
王の側近たちは、自分たちの息子に王子の友人となるよう指示し、王子の近況を把握できるようにした。
都合の悪い相手とは交流させないために。
「ええと何か御用でしょうか」
怯えた様子で首を傾げても見逃してくれなかった。
「何を! 私達の要望は何度も伝えている。お前が王子殿下の側から離れること!」
近頃は彼らからことあるごとに絡まれ、なじられる。
気に入らない私をとにかく貶したいらしい。
私が王子に見合わない身分だからだ。爵位も低く王都から離れた田舎の家柄では、彼らのお眼鏡には敵わなかったということだろう。
金魚のフンのように王子に付き纏う彼らは、親の指示に従い、王子を守るという名目で周囲に目を光らせ牽制する。
それでいて、王子の機嫌は損ねられないのだから難儀なものだ。
大変ね、とは思うけれど。
「そうは申されましても。私をご所望なのは王子殿下でいらっしゃいますから」
私からは、何もしてあげられない。
ごめんなさいの意味を込めて、眉を大きく下げた。
◇
「アリア、聞いたよ。何か彼らが粗相をしたようだな」
「……いいえ、彼らも王子殿下を心配してのこと」
険しい顔の王子は安心させるように私の手を握ってくれた。
「いいや、俺を監視しているだけだ。都合のいいように操りたいんだろう。アリアも嫌なことは嫌だと言ってほしい。言ってくれれば、多少のことはできるんだ俺も」
「そんなお咎めなどいけませんわ! あの方たちも王子殿下のためを思えばこそ口にしているのです。……ただもう少し、私を認めてもらえたら嬉しいですけれど」
「ああ、なんて優しく謙虚な俺のアリア。もう少し待ってくれ。誰にも文句を言わせないようにするから」
優しく抱きしめてくれた王子を抱きしめ返す。
心地よい体温に身を委ねながら、込み上げる笑いを押し殺した。
自分の評判は知っていて。
誰にでも優しく、素直で驕ることのない美少女。
王都では見慣れない言動が人を惹きつけ、儚げなところは守ってあげたくなるらしい。
が、王子の腕の中、慈愛に満ちた顔で思うのは──。
このままずっと、私の虜でいてね。
囲ってあげる。
綺麗で愚かでかわいい、私の王子。
金魚は透明な鉢の中。
そうと知らぬまま、狭い水の中を優雅に泳ぐのだ。
彼は私のモノ。
フンの言うことが正しいなんて、絶対に気づかせないわ。




