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金魚のフンが難癖をつけてくるけれど

作者: 夕山晴
掲載日:2023/12/17

 

「この、王子を誑かす悪女め!」


 私を囲む男が、一人二人、三人。


 ああ、また、と思う。

 他にすることはないのかしら。


 王子の取り巻き達だ。

 王の側近たちは、自分たちの息子に王子の友人となるよう指示し、王子の近況を把握できるようにした。

 都合の悪い相手とは交流させないために。


「ええと何か御用でしょうか」


 怯えた様子で首を傾げても見逃してくれなかった。


「何を! 私達の要望は何度も伝えている。お前が王子殿下の側から離れること!」


 近頃は彼らからことあるごとに絡まれ、なじられる。

 気に入らない私をとにかく貶したいらしい。

 私が王子に見合わない身分だからだ。爵位も低く王都から離れた田舎の家柄では、彼らのお眼鏡には敵わなかったということだろう。


 金魚のフンのように王子に付き纏う彼らは、親の指示に従い、王子を守るという名目で周囲に目を光らせ牽制する。

 それでいて、王子の機嫌は損ねられないのだから難儀なものだ。


 大変ね、とは思うけれど。


「そうは申されましても。私をご所望なのは王子殿下でいらっしゃいますから」


 私からは、何もしてあげられない。

 ごめんなさいの意味を込めて、眉を大きく下げた。



 ◇



「アリア、聞いたよ。何か彼らが粗相をしたようだな」

「……いいえ、彼らも王子殿下を心配してのこと」


 険しい顔の王子は安心させるように私の手を握ってくれた。


「いいや、俺を監視しているだけだ。都合のいいように操りたいんだろう。アリアも嫌なことは嫌だと言ってほしい。言ってくれれば、多少のことはできるんだ俺も」


「そんなお咎めなどいけませんわ! あの方たちも王子殿下のためを思えばこそ口にしているのです。……ただもう少し、私を認めてもらえたら嬉しいですけれど」


「ああ、なんて優しく謙虚な俺のアリア。もう少し待ってくれ。誰にも文句を言わせないようにするから」


 優しく抱きしめてくれた王子を抱きしめ返す。

 心地よい体温に身を委ねながら、込み上げる笑いを押し殺した。


 自分の評判は知っていて。

 誰にでも優しく、素直で驕ることのない美少女。

 王都では見慣れない言動が人を惹きつけ、儚げなところは守ってあげたくなるらしい。



 が、王子の腕の中、慈愛に満ちた顔で思うのは──。


 このままずっと、私の虜でいてね。

 囲ってあげる。

 綺麗で愚かでかわいい、私の王子(きんぎょ)




 金魚は透明な鉢の中。

 そうと知らぬまま、狭い水の中を優雅に泳ぐのだ。


 彼は私のモノ。

 フンの言うことが正しいなんて、絶対に気づかせないわ。

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― 新着の感想 ―
[一言] まさかのそちらが正しいという……。 金魚のフンとはよく言いますが、成る程確かにそれならこのひとは金魚ですよね。 ふりがなの振り方がおぉっと思いました。 でも、ずっと王子が気付かないのであれば…
[良い点] 金魚って…!(*´ω`*) すごく上手いたとえだと思いました。イセコイで雰囲気損なうことなく金魚ワードを使う手腕に唸りました。面白かったです♪
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