表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

60/60

タイトル未定2026/02/24 23:43

よろしくお願いします

仮面聖女20260222

昇華の援詩


 綺麗な女性が私を見つめている。


 赤く形の良い唇の口角が軽く上がり、薄く微笑んでいます。美しさと共に静けさを感じます。ブルネットの髪を後に翳し、ヘイゼルの瞳が見つめてきます。

 胸の前には光るものを抱えていました。よく見ると、微かに透けて見えるんです。

 あの人はもしかして………、


スッ


 戸惑っていると私の額で、何かが動き始めます。瞼が開くように感じられました。私の目じゃないですよ。


スウッ


 あっ、また⁈

 今度は私の意識が自分の体を離れていきます。アンバーのベールをかぶって同色のハビットを着ている私の背中を私が見ているんです。以前もこんなことがありました。


 あっ


 周りの景色も変わります。亡くなったフリーダさんの部屋に居たはずなのに、周りを見渡すと磨かれた乳白色の床と円柱が何本も立っている大きな部屋の中にいるんです。

 そのうち、ブルネットの髪の女性と私の体は立ち上がり、柱の並ぶ先を見つめます。


『ウシュ◻︎イルよ。彼の者の裁定を』

 

 私の声が、反響して部屋の中に広がっていきました。やっぱり、ここは………、


【うむ、運命の女神シャイよ。この者の裁定を始める】

『分かりました』


 冥界を統べる神が座す、裁定の場所なんですね。


『其方はフリーダでよろしいな』


 彼女は、運命の女神の問いに、首肯で答えます。


『ここに住まう。フランツとエーファの娘』


 彼女は頷きを持って返事としました。この方がフリーダさんだったんですね。

 人が運命に定められし道を歩くのに、どうしても纏わりついてくる乾きと疲れと病いと老い。それが拭い去らわれた、彼女の魂の本来の姿なんですね。優しそうだし、凄く綺麗な女性です。


『この者、水を汲み、地を耕し、大地の恵みに感謝し、皆に公平に分配した。空を愛し、風を慈しみ、火を御した。夫を愛し、子らには分け隔てなく愛を注ぎ、世へと送り出し次代へと繋げた。今、魂に刻まれし役割を終え、人生を全うせしもの』


 運命の女神の言葉にフリーダさんへの賞賛が感じられる。再び、彼女は頷く。なんか恥ずかしそうです。


『出よ。リブラ・マグナ・フォルトゥーナエ 運命の大天秤』


 女神様は天空に手を差し上げると、その先から紐に繋がれた大皿が二つ現れました。片方の大皿の上には、大きな羽根が載せられています。

 そして、フリーダさんは,もう片方の皿に近づき、自分が抱えていた光の塊を載せていきました。光が収まっていき、白い大きな羽へと変わっていきます。


『ウシュ◻︎イルよ。裁定を』 


ー アルビテル ー

   審判


 運命の女神の呼び掛けに答え、辺りに厳かな声が響き渡る。そして大皿が動き出す。

 二つのお皿が交互に上下をした後、白い羽の乗った皿が下がっていきます。振れが止まった後、


ー コンクルーシオ ー

   結審


 再び、辺りに厳かな声が響く。 


《ヴェアータ》

  祝福を


 辺りに、そんな言葉が次々と囁かれていく。どうやら立ち並ぶ円柱が発しているようなんです。


《ドミナス・テ・ベネディカット》

 我らは、祝福をする


《デュケアーム・アド・アルチオーナ》

 彼のものを、より高く、より先へ誘おう


 辺りに光の粒が生まれ、フリーダさんへ降り注いでいきました。


あっ、降り注ぐものが粒から段々と大きくなり、羽の形へと変化していきます。それがハラハラとフリーダの元に舞い落ちていくんです。

 いつのまにかですけど、彼女の背に大きな翼を形作っていきました。一対の翼が出来上がり羽ばたきました。何度も、何度も羽ばたくのです。

 でも、フリーダさんは飛び上がりません。周りをキョロキョロと見渡しています。

 なんでかな。何を躊躇しているのでしょう。あんなに立派な羽なのに。


はっ


 いきなり、私は意識を取り戻します。目の前には安らかに眠るフリーダさんの顔が見えます。


【心優しき娘よ】


 頭の中に運命の女神シャイの声が聞こえてきました。


【この者、主の御許へ誘う翼ができたばかりのことなれば、まだ力が足りぬ。迷いも残る。お主が誘ってやれまいか。やり方はわかっておろう】

 

 はい、判ります。私が天へ向かう魂を手伝ってあげればいいのですよね。


 私は,開かれた詩篇パサールの一節を指でなぞりながら、聖句を唱えていきます。


「オ・クイ・アド・カエルム・クァウォカーリス、アウディ・ディリゲンテル」

天に召される者よ。よく,お聞きなさい。

貴女は、今、チョエニに中にいる。


シャン シャン ベルが鳴る


アァベ・アミーカ アァベ・アミーカ、アウディ・シン・デシィピション

ああ、隣人よ、隣人よ。心を惑わされることなく聴くがよい。

貴女の前に、


アポストルス・イラとアポストルスカ・イラが睦あって怒りを打ちつけてくるでしょう。気にすることなかれ、貴女は主を信じ、迷わず、御元へ向かいなさい。


 私は、スレイベルを鳴らします。


シャン、シャン、シャン、シャン、シャン、シャン、シャン


ラウダーテ・ドミヌム

主を讃えよ


ベネディクトゥス・ドミヌス・デウス

主の神を讃えよ


 シャン ベルが鳴る


アァベ・アミーカ アァベ・アミーカ、アウディ・シン・デシィピション

ああ、隣人よ、隣人よ。心を惑わされることなく聴くがよい。

貴女の前に、


アポストルス・インビィーダとアポストルスカ・インビィーダが睦あって、嫉妬を打ち付けてくるでしょう。気にすることなかれ、貴女は主を信じ、迷わず、御元へ向かいなさい


 私は、スレイベルを鳴らします。


シャン、シャン、シャン、シャン、シャン、シャン、シャン


ラウダーテ・ドミヌム

主を讃えよ


ベネディクトゥス・ドミヌス・デウス

主の神を讃えよ


 シャンシャン ベルが鳴る


アァベ・アミーカ アァベ・アミーカ、アウディ・シン・デシィピション

ああ、隣人よ、隣人よ。心を惑わされることなく聴くがよい。

貴女の前に、


アポストルス・アケディアとアポストルスカ・アケディアが睦あって、怠惰を薦めてくるでしょう。気にすることなかれ、貴女は主を信じ、迷わず、御元へ向かいなさい


 私は、スレイベルを鳴らします。


シャン、シャン、シャン、シャン、シャン、シャン、シャン


ラウダーテ・ドミヌム

主を讃えよ


ベネディクトゥス・ドミヌス・デウス

主の神を讃えよ


 シャンシャンシャン ベルが鳴る


アァベ・アミーカ アァベ・アミーカ、アウディ・シン・デシィピション

ああ、隣人よ、隣人よ。心を惑わされることなく聴くがよい。

貴女の前に、


アポストルス・アヴァリーチアとアポストルスカ・アヴァリーチアが睦あって、強欲を張ろうとするでしょう。気にすることなかれ、貴女は主を信じ、迷わず、御元へ向かいなさい


 私は、スレイベルを鳴らします。


シャン、シャン、シャン、シャン、シャン、シャン、シャン


ラウダーテ・ドミヌム

主を讃えよ


ベネディクトゥス・ドミヌス・デウス

主の神を讃えよ


 シャンシャンシャンシャン ベルが鳴る


アァベ・アミーカ アァベ・アミーカ、アウディ・シン・デシィピション

ああ、隣人よ、隣人よ。心を惑わされることなく聴くがよい。

貴方の前に、


アポストルス・グーラとアポストルスカ・グーラが睦あって、暴食を誘うでしょう。気にすることなかれ、貴女は主を信じ、迷わず、御元へ向かいなさい


 私は、スレイベルを鳴らします。


シャン、シャン、シャン、シャン、シャン、シャン、シャン


ラウダーテ・ドミヌム

主を讃えよ


ベネディクトゥス・ドミヌス・デウス

主の神を讃えよ


 シャンシャンシャンシャンシャン ベルが鳴る


アァベ・アミーカ アァベ・アミーカ、アウディ・シン・デシィピション

ああ、隣人よ、隣人よ。心を惑わされることなく聴くがよい。

貴方の前に、


アポストルス・ルクルーシアとアポストルスカ・ルクルーシアが睦あって、色欲で惑わすでしょう。気にすることなかれ、貴女は主を信じ、迷わず、御元へ向かいなさい


 私は、スレイベルを鳴らします。


シャン、シャン、シャン、シャン、シャン、シャン、シャン


ラウダーテ・ドミヌム

主を讃えよ


ベネディクトゥス・ドミヌス・デウス

主の神を讃えよ


 シャンシャンシャンシャンシャンシャン ベルが鳴る


アァベ・アミーカ アァベ・アミーカ、アウディ・シン・デシィピション

ああ、隣人よ、隣人よ。心を惑わされることなく聴くがよい。

貴女の前に、アポストルス・スッペールビアとアポストルスカ・スッペールビアが睦あって、傲慢を誘うことでしょう。気にすることなかれ、貴女は主を信じ、迷わず、御元へ向かいなさい


 私は、スレイベルを鳴らします。

シャン、シャン、シャン、シャン、シャン、シャン、シャン


ラウダーテ・ドミヌム

主を讃えよ


ベネディクトゥス・ドミヌス・デウス

主の神を讃えよ



アァベ・アミーカ アァベ・アミーカ、

隣人よ、隣人よ


私は、スレイベルを鳴らします。

シャン、シャン、シャン、シャン、シャン、シャン、シャン


ラウダーテ・ドミヌム

主を讃えよ


ベネディクトゥス・ドミヌス・デウス

主の神を讃えよ


ドミヌス・プロペ・エスト

主の御元は近い


シャラララララララァァァァ


 これで、一区切り、これを7回繰り返すの。私の詩が届いていくと、フリーダさんの羽が強く羽ばたきだし、空へ舞上がっていく。高く、高く、高く。

 私が見ることの出来なくなるぐらい フリーダさんの魂は、上へと上昇していきました。

 良かったです。無事に天に召されたのでしょうね。


 ふう、魂送りは終わりました。なにぶん、私も経験が少ないんです。詩篇パサールの文言をなぞって、奏上するので手いっぱい。無事に終われてよかったです。

 明日になれば、タダイ神父が葬儀を執り行い、フリーダさんの亡骸を地に埋めます。地より生まれたもの、地に返すのです。


 そして、私は、冥界の神の声を耳にしました。微かな音ですけど分かりました。


ー レインカルナーティオ ー

輪廻転生


 そうなんですね。因果は巡る。遠き刻の果て、また、会いましょう。フリーダさん





ありがとうございました

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ