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聖堂へ

再開です。

よろしくお願いします

ヴュふう


カート馬車を引いていた馬が嗎き、馬車が止まる。後少しで皇城というところにある聖教会本部。玄関に停めてらえました。

さっきまで一緒だったはずのうっかりメイド チーニィはいつの間にかドロンした。まっ、そんなもんでしょ。


 

「ヴィンス様,有難うございました」


「どうってことない。ところでな……」


なぜだろう。彼が言い淀む。


「帰りは、どうする? 荷物もあるんだろう?」


「いえ、お気遣いありがとうございます。夕ご飯に間に合えばいいのでのんびり歩いて帰ります。


ささっ


「?」


「トゥーリィ、よかったら帰りも送ってやるよ。門番のところへ来てくれれば,迎えに回る」


「え、そうなんですか。ありがとうございます」


彼の心遣いが嬉しい。頭に巻いている包帯の下、私の唇が綻ぶ。すると、ヴィンス様がソッポを向く。そうか私みたいに顔に痣があるような醜女は見るに耐えないか。でも、あれれ、彼は耳まで赤い。なんでえっ。


そして馬の蹄の音が遠のいていき、彼は去っていった。



さてと、私は聖教会玄関の前に立った。門扉は開けられ中まで見通せる。ここを1人出ていったのはいつのことだろう。いろんなことがフラッシュバックしてしまう。


「さてと」


今日は教導部へ行くわけではない。被服部へ行くのだから、タダイ神父の手紙を受付に渡しておかないといけないな。ロビーにある大階段で2階にあるレセプションに行こうとした。


「トゥーリィお姉ちゃんって,ここにいたんだね?」

「そうだよ。ここで色々と勉強してたんだ だ   あっ………」


 私はいま、誰と話をしてるの? 


 私は、声をした方へ頭を向ける。嫌な予感というより確信の元、下を向くとオーカーのベールを被りスモックを着ている小さな子供がいた。私の気配に気づいたのだろう。こちらに顔を向けてきた。口角が上がる。


「あっ! 自分でバラしちゃった。隠れてたのに」


「隠れてたじゃないよ、シュリンちゃん」


 この子はシュリン。獣人狼族の女の子。この子には姉がいて,2人とも聖教会へ入ったんだ。


「教会のお勤めはどうしたの? 神父様は? セリアンは?」


 私の剣幕に怯えて彼女の目が潤む。 


「しっ、神父様…は、部屋に閉じこもって出ないの。扉からお酒の匂いして臭いの」


 あの,物臭神父。昼間から酒をかっくらっていやがる。


「お姉ちゃん。掃除してたけど、やってられっかあーって、ふて寝してるの」



 やっぱりか。最近,真っ当になったと思ったら、これだぁ。


「ごめんなさい。トゥーリィお姉ちゃん」


 ショボンとしてシュリンが私に謝ってきた。


「もう、しょうがないねえ。でも、どうやって来たの?」


 来たもんはしょうがない。怒る気は失せてしまう。


「教会を出るときに,嫌な兵士にお姉ちゃん虐められなかった? ひどいよねぇ。そのときに馬車の荷台に隠れたの。こそっとね」


 あんときか,確かに城の門番と一悶着あったなあ。まあ,あの衛士は、仕返しされてるから、もういいや。あれ以降、どうなってるかなんて知る由もないし。


「黒いお兄ちゃんは、私乗ったの知ってたよ」


 えっ、ヴィンス様知ってたの。


「お兄ちゃんが振り返って。私と目が合ってたもん」


  なっ、


「なんか、困ったなって顔してたの」


 もう、ヴィンス様、そうならそうと言ってください。それで別れ際に言いずらそうにしてたんですね。

 ここの城内がどういうところか知っていらっしゃるはずなのに。

 聖女見習いとして、この城塞都市の成り立ちは教えられた。大聖女様が最初にここで説法を始めて、小さい祠を作り”主”を祀った。その頃は住人も多くなくて獣族も含め多種多様だったらしい。

 そのうちに大聖女を頼って、人が集まってきて集落になり、村になり、街になり、そして都市大都市になっていった。

 凶暴な外敵に対して高い高い城壁を造った頃から、排他的になり人以外のものは、如何なる状態であれ城壁外へ追いやられたんだ。

 だから排他的になり、普段の鬱憤を晴らすのに、嫌がらせをしてくる。擦り傷で済めばいい方、亡くなった獣人族も出てしまう。そんな一触即発な状況が続いているんだね。

 だからこの中の街中には獣人族はほとんどいない。殆どというのは人権を持ち自分の意識を持って活動しているということで、奴隷や愛玩用は外れてしまう。

 外を1人で歩いていようものならあっという間に迫害されてしまう。


 でも、世俗とは隔絶している、この聖教会の中にいれば、なんとか無事にいられるかもしれない。


 一縷の望みだけどね。


 シュリンとそんな会話をしていると大階段の上、2階から、


「どなたかいらっしゃいますか」


 と、こちらを伺う声がした。

 しばらくすると臙脂色のベールを被って同色の修道服を着た女性が顔を出す。


「本日、王族の方がお見えになっています。誠に申し訳ありませんが拝観できません。またのお越しをお願いします」


 あちゃー、タイミング悪いときに来ちゃった。









ありがとうございました。

週一のペースでいきたいな

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