いざ、帝都ウルガータへ
よろしくお願いいたします。
玄関を開けた。外では絶賛工事中、人が動き回り、ロックゴーレムも闊歩している。土煙の上がる中、城塞都市の門へ向かおうとおもたや先、
ブチっ
いつも着けている仮面のつけ紐が切れてしまった。
わわわっ。 ゴト
慌てて抑えようとするけど、奮戦虚しく地面に落ちてしまう。拾い上げて見てみると、紐自体がボロボロで引っ張るとブチブチとキレてしまう。使い物にならなかった。
仕方なく、外の出たばかりなのに回れ右をして、聖教会へもどりハメになりました。
地面を掘り返して、足場が悪い中で両の手で仮面を押さえて歩くのは、大変むずかかしかったよ。
自分に部屋までなんとか戻った。部屋の棚にしまてあったサラシ布を取り出して、鋏で細く切っていく。2枚の布を主へお願いして継なげていく。
「フォセレ・ヴェレ」
「メイク<ファシア>」
何本か継なげて長くしたものを頭へ巻いて行く。前髪を上げて巻き方を工夫して目が見えるようにしていく。
仮面をつける前は、こうして包帯を巻いて顔にある痣を隠していたんだ。ま、慣れたもんだね。
改めて外に出てゲートに向かって歩いていくと
「そこに居るのは、トゥーリィか?」
後ろから呼び止められた、聞き覚えがある声。振り返りみると、案の定、大剣士様だった。
彼は一頭引きのカート馬車に乗っていて、
「はい、大剣士様にはご機嫌宜しゅう」
振り返り、軽く頭を下げて挨拶をした。
黒衣黒髪の剣士ヴィンセント様。王位継承権第四を持つ王族の方です。昨日の騒動の中で共闘して顔見知りになりました。
「そんな堅苦しい挨拶などよしてくれ。お前は、もう仲間なんだから、もっと肩の力を抜いていいぞ」
割と、ざっくばらんで気やすい方なんですね。
「はい、ありがとう御座います。ではお言葉に甘えさせていただきますね」
「ああ、そうしてくれ。あんな鯱鉾ばった言葉なんて虫唾が走るよ」
「いいのですか、王族とあろうお方がそんなこと言って」
「俺は、原野で刀を振り回しているのがあっていると思っているよ」
「やんちゃなんですね」
「生いってんじゃないよ」
ふふ
私も肩から力が抜けてリラックスしていきます。
彼は、一頭引きのカート馬車に乗っていた。
「どこへ行くんだ? いつもの修道服はどうした。それとも休日か?」
「はい。休日のようなお仕事です。タダイ神父に言われまして帝都の聖教会へ向かいます」
「そんな私服でか?」
「いつも着ていたハビットもズタズタのボロボロになりまして、昨日トゥニカも破れちゃいました。着る物がないんです。だから神父様に新しい物を受け取りに行けって言われまして」
「そうか。ならカートに載って行きな。俺も帝都に用事があって向かっている」
渡りに船とはこのことだわ。
「よろしいのですか。助かります』
「どうせ、お前にも関わりのあることだ。荷台を見てみな」
「はぁ」
私はカートの荷台をのぞきこんだ。
「これって」
「そうだ。トゥーリィ。お前が聖別した剣だよ。これを鑑定してもらうために俺も行くんだ」
そう、昨日の騒動の中、破邪を付与するつもりで主にお願いしたら、ど偉い魔物も一刀両断の業物になってしまいました。
「あちゃー、ご面倒おかけします」
「構わんよ。これに乗せるのだっお礼の一部だ」
「恐縮しちゃいます」
「遠慮するな、早く乗れ」
私はカート馬車の後ろから回り込み御者台に乗った。
不思議と彼を意識してしまって視線を外して座ってしまう。
「はっ」
彼の掛け声と手綱が鳴り、馬車は動き出す。暫くは静かな時間が過ぎていった。
「ところで、お前…違うな、すまん。トゥーリィ。その、なんだ…」
なんでしょう。彼が言い淀んでいます。
「いつもつけてる鈍色の仮面はどうしたんだ?」
「ああ、そのことですね、実は留め紐がボロボロで使い物にならなくなりまして、もう外すしか無いんですね」
「それで包帯か」
「はい、以前はこうでした」
「そ、そうなのか」
彼も少し引き気味、私からすれば慣れた反応なんですね。
「すいません。お見苦しいものを見せてしまいましたね」
「構わんよ。というか………。気にするほどではなかったぞ。寧ろ、か…」
「何か、言われましたか」
ヴィンス様がボソッと何か言われたけど、よく聞き取れなかった。声色から非難をしているわけではないようだけどね。
そんなこんなで馬車は進む。
さあ、パラス教会へ赴任して以来、久しぶりの帝都ウルガータ。ゲートへ向かいます。
ありがとうございました。




