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阿鼻叫喚

よろしくお願いします

 目の前は、まだ土煙が舞い上がって視界が悪い。それほど私の体には瓦礫が載っていなかったのが幸いした。へとへとな体でも起き上がることができたよ。当たりが見回せるぐらいになったのだけれど、


「ウリエル様! ゾフィー様まで」


 大地から湧きあがった土の腕の余波に吹き飛ばされたのだろう。2人が起きあがった私にもたれている形になっていた。

 ゾフィーさんはまだ胸が微かに動いちゃいるが、虫の息と言っていいかも。

 ウリエル様はすでに息をしていない、肌もロウのような色へと変わってきている。私たちのそばにはウリエル様の脚も転がっていいた。


 そんなところへ、


「トゥーリィお姉ちゃん。大丈夫なの?」


 見習い修道女のシュリンが近づいてきた。流石に獣人狼族。瓦礫が山積みになっている中、それらをものともせずにスイスイとやってくる。

 この子には、とにかく逃げろと言っておいたのに。とにかく優しい子なんだよ。ダメだって言ってる側から、何度も私の様子を見にきてくれる。


「お姉ちゃんが心配で………。キャア」


 シュリンが何かに蹴つまずいて、転んだ。


「キャアアアアアアー」


 そして叫ぶ。自分が何で転んだかを見てしまう。


脚だ。


 ウリエル様の。土砂に塗れていてもわかる、血の気を失い蝋燭の様な色をしているもの。

 更に彼女は、私の周りの惨状を見て叫んだ。怖いんだろう耳がたたまれ、さらに手で隠している。


「見ちゃダメ。とにかく離れて」

「でも、でも、でもでも」


 この惨状でこの子もかなり気が動転したのだろう、落ちていたウリエル様の脚をわざわざ拾い上げて、ワタワタと右往左往している。

 自分が異常で異様なことをしているのさえ気づけないでいる。


「あの、優しいお姉さん、動かないよう。トゥーリィお姉ちゃん、助けてあげてよう」

「いや、流石にそれはでき………」


 ウリエル様は生きてはいない。すでに、死人になっているものに、ヒールをかけてもしょうがないんた。魂がない、蛻の殻にいくら施術しても生き返らないんだよ。


「お姉ちゃん、聖女様なんでしょ。ならできるはずだよ」

「ごめん、シュリンちゃん。私は聖女って言っても見習いで………」



『ごちゃごちゃと、嘆く場合か? この戯けが!』


 すると、怒声が頭に響き、私の喋りを止める。

 この、がれ場には私とシュリンしかいなかったはず、バジリスクを含め、禍々しいもの全てが、大地に取り込まれていったはずなのに。


 声がしたと感じた方に顔を向けると、

 シュリンちゃんが立っている。でも顔に表情がないんだ。そして、未だにウリエル様の脚を持っている。切断面から流れ出たものでシュリンの着衣も汚れている。

 それなのに、汚れていることを気にしている節がない。


「まだ、この女傑には、この世での役割がある。ここで事切れさせるわけにはいかない」


 シュリンの顔でシュリンの口がシュリンの声で、厳かに告げる。


「フォセレ・ヴェレ」


 我は求め、乞い願う


 私の周りの世界が緊張するのが分かる。何を望み、何を欲するのかを待っているのだ。

 再び、シュリンの口が言葉を紡ぐ、


「レスレクティ<ゲヘナ>」


 祈願が世界に溶け込んでいく。

 すると、周囲が眩い紫の光で満ちていく。そして文字のような、紋様の様なものが周囲に溢れ出し舞い踊り出す。


「トゥーリィ、悪いけど、あなたの聖力借りるわね。この子だけじゃ足りないの」

「えぇ、私のって、出し切って、何も残っちゃいないですよ」


 シュリンが口角をあげる。微笑んだのかな。


「大丈夫,あなたの力はこれぐらいで枯渇するようなものでないよ」

「シュリン。さっきから、あなた……」


 おかしい、シュリンは,まだ幼い。こんな大人のような話し方なんてしない。

だが、シュリンは願う。手で聖印を刻み、私へ向けてくる。


「トゥーリィ! アペェレ・ラディクス 開きなさい。貴女の根源を」


 言葉が私の体に染み入っていく。

 そしてわたしの中、頭の奥、胸の奥,腹の奥、下っ腹の奥、体の奥底で何かが開き始め、キラキラと輝くものが湧き出して溢れ出してきた。

 それが私の中を満たして,そして更に満たしていく。いっぱいに満たされても詰められていき、溢れた。吹き出していく。噴流となって行き着いた先にシュリンがいる。

 私はといえば、耐えきれずに跪き、地に臥した。


「あぁー、あぁー、あぁーあがぁぁぁぁ」


 今,流れ出ているものはいけない。出てはいけないものがでてしまっている気が半端ないんだ。もう、叫び声をあげるしかできなかったよ。


 力の噴流を受け取るシュリン。紫色に輝く世界で、この娘の周りに舞う紋様が光り輝き、増えていった。そんな光の奔流下でシュリンが手に持つ脚をウリエル様の足の切断されたところへ近づけている。とうとう継なげてしまう。紋様も含め、光も全て2人に収束していく。


 辺りが静かになった。癒しの奇跡の施術が済んだんだろう。


「あぁ、あー」


 うめき声しか出ない。頭は痛いし、胃が揉まれたみたいに気持ち悪い。

 疲れて重たい瞼をうっすらと開くと、シュリンの背中が見える。横たわったままで、だるくて、動きたくないと駄々を体を叱咤して、上体をなんとか起こしたんだ。


「起きたね。どうだい。トゥーリィのおかげでなんとかなったよ」


 シュリンがが指差す方に顔を向けると、確かにウリエル様が仰向けに横たわっている。痛々しいところなんてなくて、安らかに仰向けになっていた。

 横たわって、なお崩れない見事なバストは,ゆっくりと上下している。

 視線を下肢に向けると、避けたドレスのスカートから、真っ白い御御足が見えた。傷ひとつない、血の通った感のある綺麗な御御足でした。

 普段の手入れが行き届いているのか、すごく若々しい。歳も感じられないんだね。子持ちっていっても信じられないよ。


「大丈夫みたいですね。よかったですよ」


 え、私は年上の方に話をしているの。


「ふふ、そんなに遜らなくて良いよ。シュリンだっけ。この娘は幼いんだから。お姉ちゃん」


 いきなり、いつもの子供言葉に戻って話してくる。


「でねえ、もう1人、怖いお姉ちゃんがいるの。こっちもお願いね」


 私は慌てた。さっきだってないところから搾られたんだ。これ以上なんて言ったら、


「ちょっ、ちょっとちょっと。ヤバいって」


 シュリンは、瓦礫に蹲っている、確かゾフィーさんに近づいてしゃがみ込むと手翳し、


「まだまだ、いけるよ。お姉ちゃんの存在が消えるなんて、まだまだ,先だから。じゃあ,やるね」

「まっ、待って。存在がって。私の何を引き出したの?」

「えへっ内緒。さあ、いきます。『レスレクティ<リジェレネーション>』」


 本当にしちゃいけない話なのか、早口で祈願しやがった。


「あが、あガガガがぁー」


 再び、私の中から力が引き出されていく。なすすべもなく絶叫するしかなかった。

目は前が明滅する。違う、私も意識が落ちているんだろう。

  

 そして私は意識を失った。 





すいませんでした。再開します。本業も落ち着いてきたと思う、思いたい。

更新していなくても、読んで頂いていました。それを見たら、俄然やる気が出ますね。

頑張ります。

ありがとうございました。

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