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懇願

よろしくお願いします。

 背中は冷や汗が流れ放題、びっしりと濡れている。悪寒は止まらない。


   ぴぎゃあああーあー


 あんな気持ち悪い怪異が、こっちを向いて、肉髭のついた嘴を開けて背筋の凍る鳴き声を発しているんだ。

 あんなの見たくてみているんじゃない。

 そっちから、しわがれた男の声がするんだ。人語を喋ってる。


「ほう、手助けする仲間もおるんか」


 目を凝らして怪異の顔を見る。丁度、嘴と頭の境のところに誰か人がなっている様に見えるんだ。


 グァンラン


 そいつは自分自身が動き、掘り起こして浴びた塵芥をものともぞずに起き上がった。土塊やが落ちてきて、凄まじい騒音が耳を打ってくる。


 でかい、大きい。通りの建物も高いと思ったけど、建物よりも高く立ち上がり、そして比較ならないぐらい背が高いんだ。


 肉髭のついた嘴、そして眉間から鶏冠も立っている。鶏の様な顔をしているんだ。それが羽毛もつ羽を左右に広げている。羽毛に包まれた胸をそらして広げた羽根で周りを威嚇してくるんだ。

 確か、座学で習ったっけ幻獣学だったと思うよ。バジリスクというはずだ。 

 そして目の前を周りを埋め尽くした甲虫が一斉に四方八方に飛び退った。それによって覆い被されていたものが現れる。バジリスクの頭に男が立っている。


 グルるゅっグウううう


 そいつの周りになんか細長い生き物みたいたなのが飛び回り始める。1匹、3匹、5匹と増えていく。

 蛇の顔をして耳の奥から顎を広げて威嚇をしてる。その頭から後ろは背鰭のついた胴体だけ、手も足もついでに胸鰭もない、長き胴体と終わりに長い尾鰭がついているだけなんだ。

 こいつ容姿には記憶にない。ウツボもどきか? もう、ここは幻獣だらけ、幻獣大行進だ。いや、空を飛んでいるから大飛行か?

 


 呆然としてみていんだけど、落ちてきた馬車に動きがあった。キャビンの観音ドアが外れ飛んだ。ブーツも見えるから、中から蹴り飛ばしたんだと思う。そうして開いたところから、黒衣の男が顔を出してきた。


「剣士様。ご無事で」


 彼の足元にはブルネットの髪とボトルグリーンのドレスが見える。

 確かゾフィーさんだっけ。ヴァレットメイドの人がうつ伏せになってもがいていた。あれは止ん事無い方のお付きの人だったと思う。そしてドアのなくなった開口部から滑り落ちた。

 そう見えたけど体を捻って体勢を整えて地上に足をついていた。

 でも乗っていた馬車が吹き飛ばされ、乱暴に風の奇跡で着地した影響か、中でシェイクされたのだろう。頭を振ってひざまづいてしまう。でもなんとか立ち上がった様。

 その後から、ブロンドの髪とローズレッドのドレスがにじり出てきて、さっきと同じ様に、滑り落ちた。

 止ん事無きお方だ。今度は、先に降りたゾフィーさんがサポートしてなんとか足から着地している。頭を手で押さえているけど、なんとか無事そう。


 すると頭上から


「さすが、いく人もの血肉を啜っていたと目される女よ。これくらいでは死なぬなあ」


 また、しわがれた声が落ちてくる。

 頭上を仰ぎ見れば男が見える。それにしても変だ。背が低く見えるんだよ。

 よくみたら膝から下がバジリスクの皮膚に埋もれている。一体化してる様にみたいなんだ。

 あれは、男は見覚えがある。この前、辻業くていた時にサンドワームに食われかけたんだけど、そん時に見かけてる。あのしわがれた声に聞き覚えがあった。あの時の男だ。

 そんな男がなんでこんなところに?なんでバジリスクにくっついてるの? まるで止ん事無い方のを敵視する様な言動をするんだ? 


 そうこうしていると馬車からは、最後に剣士様が開口部から飛び降りた。

 と、同時にキャビンが原型を届けないぐらいに爆ぜた。それを突き破ってウツボもどきが飛び出してくる。こいつもでかい。

 止ん事無き方たちを狙ってウツボもどきを突っ込ませたなあ。


「ん、ちと突入が遅すぎたな。構わん、このまま立つ土と一緒に喰らうまでだ」


 そしてバジリスク上の男が顎をしゃくると、上空で旋回待機していたウツボもどきが向きを変えて破壊された地上の馬車めがけて1匹、2匹と降下を始めた。


   グゥルュウウ グゥルュウウ


 耳障りな鳴き声がだんだん近づいて音が高くなっていく。頭の中に響いてくるんだ。

そんな中、


「おい、聖女俺の大剣に奇跡を付与できるか? できるならやってくれ」


 剣士様が叫ぶ。

「そんな事してどうするんですか?」


 私も喉が痛むのも厭わずに叫び返す。そうしなきゃあいつらの叫び声に負けて話すらぜできないよ。


「斬る」


 潔い。気に入った。こんな心が挫けそうなシチュエーションで、戦意を失わない。それでこその剣士様だ。

 聖力を使いすぎて腰が萎えそうなのなんて関係ない。力を使い果たしたって、あの剣士ならなんとかするっていう根拠のない信頼感が私を後押しする。


「フォセレ・ヴェレ」

 

 我は乞い願う


「エッセ<ヴィス><ウェー>」


 力よ、とき風よ 力をお貸しください。

奇跡の祈願の最中の、更なる二重掛け。伸るか反るかだよ。再び、


「フォセレ…ヴェレ」


 お、ね、が、い 主よ、啓示受けし大聖女よ 我が願い叶えたまえ。!

  突き風よ。剣士の剣に宿りて怪異を打ち滅ぼしたまえ。

ありがとうございました

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