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地獄の蓋が落ちてくる。生きた心地しません

よろしくお願いします。

自分がいる周りだけ暗いんだ。それも少しづつ広がっている。


  ピッギャアアアアアーン


 生理的に意識を刈り取られる鳴き声が耳を侵略してくる中、ハッとして上を見てしまった。

 昏く陰る大きなものと比較的小さいものが私に向かってきてる。障壁の発する光で二つは褐色だとわかる。

 

   じゃあ、あれは。


 頭ではわかっているんだけど常識がそれだと認識しているのを拒んでいるんだね。

 現在、ズルズルと削られているなけなしの気力を奮い立たせた。

 そうだ。あれは馬だ。馬車を引いている馬だ。ということはあんなものが飛んできた方向から察するに、


「叔母上」


 近くにいて、それに気づいた剣士様が叫ぶ。

 そう、止ん事無き方がお忍びで乗ってきた馬車。

 それが私たちに向かって飛ばされて来てるんだ。常識が既に拒否して思考停止、ブラックアウトしようとしてるけど、死にたくないの本能全開、意識を繋ぎ止める。

 あんなのじゃ、奇跡でも足りない。


   御方、御力をお借りします。


「アドラスム・テェ!グロフィカァヌス・テェ、ムゥース<ウェントス>」

  崇めますも御方、風の精霊の御手お借りします。


「イグジィストォ」


 私の周りの空気が動きだす。着衣を剥ぎ取ろうと風が吹き出したんだ。

 かぶっているコルネットなんて、とっくに飛び退っている。髪隠しのウィンプルも同じ、トゥニカも捲れあがり、ペチコートもろとも剥ぎ取ろうとされている。

 いやぁ、裸に産られちゃう。お嫁にいけなくなるう。そんな犠牲の中、頭上に見えない障壁がつくられていく。そこだけ歪んで透けて見えるんだ。

 あっ、御者が振るい落とされて落下していく。凄まじい風のなか、微かに悲鳴が聞こえてくる。

 まあ、彼女らも鍛えられた身、無事だと信じたい。

 そして馬車が風の障壁と接触した。暴風が壁にぶち当たる凄まじい音と振動が私の顔の肌を打った。

 暴風に瞑って微かに開いたところから見えた馬車はかろうじて原型を保っている。潰れていない。中の人たちが無事なのは、見えないから祈るしかないけどね。

 ジリジリと地面にそれが近づきながら車輪を下にしようと車体の向きが変わっていく。暴力的な割には芸が細かい。なんて考えていると馬車が接地した。サスペンションが目一杯沈み込み車体をシェイクする。嫌な想像は投げ捨てたよ。


「グロフィカァヌス<グラティア>」


 最皇の感謝を込めて、御力を解除する。


「叔母上、無事か?」


 剣士様がが駆け寄り、馬車のカノンに手をかけるも開かなかった。仕方なく足を振り上げ、蹴破っていく。剣士様が馬車の中に侵入する。

 しばしの時間の後、剣士様が中から顔を出して私に手を振ってくれた。無事らしい。


「ふぅ」


 安堵の息を吐いたよ。

 でもね。体の奥からゴリゴリと力が引き抜かれているのは変わりない。背中を耐えずの悪寒と冷や汗が流れていくのが気持ち悪い。でも光の障壁は変わらなく輝いている。


   ピッギャアアアアアーン


 再びの悪寒のする鳴き声と再び陰っていく風景。なんかどえらい異形がやってきた。

 鳥の、しかも鶏の様な顔と鶏冠。多分首らしきところから下を根元に羽が展開してる。そして体らしきものは錦蛇か龍かってとこ。生理的に不快感しかない色使い。これでもかって感じです。




いきなり、


「あの状態で耐え忍ぶか。なかなかにしぶといな」


しわがれた男の声が頭上から聞こえてきた。あの異形の顔のあたりよ。

もうやめてよね。帰って毛布に潜り込んで寝たいよ。


  ピッギャアアアアアーン


鳴き声も続いている。













ありがとうございます。

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