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トュニカとスカプラリオ

よろしくお願いいたします。

 朝からミュラーさんの粉屋に来ている。ホスティア用に作ったヴィスキィロールを受け取りにきました。

「こんにちは、ミュラーさん。昨日預けたの受け取りにきました」

「あいよ」

店の奥から返事が返ってくる。

「そういやあ、トゥーリィ。大変だったねえ。事件に巻き込まれたんだって」

「あっ、もうそんな話が出回っているんですか」

「ああっ、俺も家内に聞いたところだよ。いつもと来ている服が違うのは、そのせいかい」

「そうなんですよ」

いつも着ていたアンバーのハビット(修道服)が修理不可能なほど破れてしまい、今はごわっとした生地でサフラン色の長裾の貫頭衣エテュカを来ている。ベールもダメになったんでウィンプル頭巾を被っているるんだ。これに肩衣のスカプラリオを羽織ると儀典用の正装になってしまう。藍色のハビットもあるけど、見習いには荷が重すぎる。

店舗の奥から、ミュラーさんが包みを二つもって、出てきてくれた。

「はい、これお預かりもの」

「ありがとうございます。今日、皆さんにお配りしますね」

「そうなのかい。ウチのが身重でなければ行けるのになあ。残念だよ」

だけど、ミュラーさんには作るのを手伝ってもらってるし、考えていることもある。

「そうだ。ミュラーさん。味見してもらえますか? 実はぶっつけ本番に作ったんで私も味見してないんです。是非とも意見聞きたくて」

「そうなのかい。そりゃあ楽しみだ。是非ともやらしてくれ」

「はい、お願いします。そうそう糸を借りられますか? 細くて強いの」

彼は奥に戻り、糸を取りに行ってくれた。戻ってくると奥様も一緒に。

「私もご相伴にあずかって良いかしら。昨日見てて興味あるのよ」

「いいですよ」


ヴィスキィの入った包みを解く。フリッジの願いを聞き遂げられたんでひんやりとしていた。借りた糸を生地にひと巻きしてクロスさせて、そのまま糸の両側に引っ張ると綺麗な断面を見せてくれた。三枚ほど薄く切りとる。

「糸とは、うまいこと考えたね」

「私も、前の厨房で教えてもらいました。では、どうぞ」

ミュラーさんご夫妻は、早速口に入れていく。もちろん私も。

「こりゃ美味しい。ヴィスキィ生地も柔らかいし、中のクリームもくどくない。甘さも程よいし、蜂蜜使ったんでコクもある。うまいよ」

「ほんとぅ、甘さが優しいのね。美味しいわ」

目分量で作ったんだけど、上手くできた。以前は厨房でお裾分けってことでチョクチョクもらっていたんだけど、ここのパラス教会では久しぶりの甘味なのね。甘さを堪能したよ。

「食べてもらったとこで、お願いがあります」

あらためて、お二人に話をしていく。

「このヴィスキィを、ここで作って売り出して貰えませんか?」

ミュラー夫妻の顔が驚きに変わる。

「私も普段の行事で、なかなか作れないんです。そこでミュラーさんにお願いできないかと」

「そりゃあ、このヴィスキィなら、美味しいし売れるよ。でも本当にいいのかい?」

「ええっ。まあ、多少ロイヤリティを頂ければよろしいかと」

彼の顔が商売人の顔に変わる。

「いかほどで」

「教会へのお布施に、ちょこっと上乗せしてくれれば良いですよ。それとホスティアの時は安くして貰えば。こちらからのお願いでもありますから」

ミュラーさんの口角が上がる。

「それでよろしければ、是非ともやらせてくれ。いや、作らせてください」

私も笑顔を返す。彼は、私へ顔を近づけると小声で、

「本当にいいのかい。あんたがやれば、儲かるのに」

私も小声で返す、

「見習いとはいえ聖女ですから、世俗に塗れるようなことはできませんて」

そして彼から離れると、普通の声で

「いやぁ、助かります。作るのを結構、重労働なんですね。これが。続けたらニの腕が、ご主人みたく、ご立派になりますよ。見栄え良くないと思いません」

はははっ

2人して笑って、握手した。


教会までのヴィスキィの包みをもっての帰り道、本日の段取りを考えていく。ホスティアの供物は用意ができたから、あとは赤甘茶を煮出しておけばいいかな。讃美歌は19番、あれは運指が比較的覚えやすかったね。帰ったらまずは、エントランスの掃除だ。取り留めのないことを考えながら歩いていると、

「そこの修道女」

なんか呼び止められました。そちらに向くと背は割とある、しなやかな姿態を持つ黒髪の少年が立っていました。

「聖教会のパラスサイド教会は、どういくんだ? すまん。迷ったみたいなんだ」

あららっ






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