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捕食された!吐瀉された!

よろしくお願いします

穴に落ちていく。

 逃げ出すのに壁らしきものを伝って登ろうとしても、頭の上から土砂がひっきりなしに落ちてくる。

 自分自身食われたかなって思うのはまだ壁自体も蠢動し下へ下へと落とし込もうとしていることと、周囲は酸っぱい匂いが充満して鼻の中を刺激してきたこと。

 なんか、酔っ払いが戻した時にする匂いに似てる。多分だけ胃液じゃ無いのかなっておもえてきました。

 土砂ごと獲物を取り込んで、消化、吸収をするってわけかあ。

 落ちた時に入った穴が小さく見えるようになり頭上のかなり上になってしまった。

 

 なんか、すごく冷静に自分を見てると思えるでしょ。

でもね、


「ひええっ、落ちる、落ちる、落ちてる」

「うわっぶ、わっ、わっぺっべつ、土が口に入ったよー」

「ジャリジャリしてるぅ。ぺっぺっぺっ」

「もがぁ、また土が降ってきたぁ」

「重い、重い。振り払いきれないーいつ」

「壁が滑って手をかけられない。滑ってしてるん。ヒリってして指先痛いよー」

「またぁ土、がぁ、手がどかされたぁ」

「なんか、暗くなってる。ふぇー穴があんな上にあるぅ」

「臭い、臭い、酸っぱい匂い嫌ぁー、鼻がツーンとしてるぅ。もげちゃう」

「えぇー、ヌトヌトが増えてきたぁ、ベチャてしてきたあ」


 誰も見ていないし、聞いてないから、叫んでたの、泣いてたの、泣き叫んでいたのよ。

涙は出るし、鼻からだってなんか流れて出たけどお構いなし、見えも外聞もドッカに投げ捨てましたぁ。

 そのうちに、いつのまにか、自分の体が何かの液で満たされたところに浮かんでいた、光が感じられず、暗く、真っ暗なんだよ。

 凄まじく、酸っぱくさいんだ。スカートの下から裾の隙間から、その液が入り込んできた。肌には滑っとした感触と液が触れているところからヒリヒリと炙られている感じが伝わってくる。

 もしかして溶かされてる。

 こんなとこで、そんなの嫌。私は手足を動かして、壁らしきところへ踠き動いていく。 

すると、


   べちゃ


「ウグゥ」


えっ、動かしていく手に何か滑った塊に腕が当たるとともに、うめき声が聞こえた。

 それもまだ幼い。

 そして弱々しい。

そういえば『 ところで、トゥーリィ、昨日な、獣人の子が行方不明になってるんだ。まだ、見つかってない。あんたも帰り道は気をつけなよ』って粉屋のミュラーさん言ってたっけ。先客、先輩だあ。


 ならば。ここで幼い命を救わずして、見習いとはいえ聖女と名乗るのは廃れる。混乱している頭が冷めていく。

 命を救うには、ここから出るしか無い。壁を突き破って外に出たくても土の中なんだから、破ったところでしょうがない。周りは酔っ払いが外戻したものと同じ匂いがする。


酔っ払い…

戻す…


 やってみよう。御方、すみません。お力を少し、お借りさせていただきます。


私は、腕を振り上げ、


「集え、めぐりしもの、空に登り地に落ち、集まりて小さき流れより沢となり川となり大河と満面の海祇とかす。そして流転す。生きる者の根源たるもの。集い、集いで」


 御言葉を紡いでいく。額の仮面の下がヒリヒリと痛みだす。液に浸かった体の違和感ともが違う痛みがで始める。それによって世界に通じた。通じたことが分かる


「集いて、落ちろおー」


ピチヤァん


 最初は一滴だった。

 ひとつ、二つ、三つと増え、小雨から勢いを増し、大雨、瀑布となってこの空洞に水が落ちてきたんだ。

 水位が急速に上がり、空洞を満たしていく。中のものを撹拌していく。

 私もすぐそばにいたものを離すまいと、強く抱きしめて撹拌されるにまかせた。

ビクンと周りが壁が震えた。

 多分、繪ずいたんだろう。震えが止まらなくなり痙攣しだす。

ドクンと大きく痙攣して、全てが外へ向けて動いていくのを感じる。

 こいつ戻したんだろう。


 私の含めて、色々とかき混ぜられながら、ぐんぐん上昇していった。

閉じていた瞼越しに光を感じてくる。

 

 そして、まとわりついていたものが全て剥がされ、解放された。

私と抱きついているものは、空中へと吐き出されたのだ。

 瞼を微かに開けることができて、感じたのは光みちる世界でした。

ありがとうございます

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