ほの暗い 路地の奥
よろしくお願いします。
改稿しました
私の後について来たベールを被った見習いシスターへ声を掛ける。彼女は赤毛の獣人浪族なんだ。
「そうそう、セリアン。バックを持ってきてくれた?」
「もちろんさぁ。ところでトゥーリイ、持ってきたのはいいけどよぉ。これって何が入れっているんで?」
「聖女のお仕事道具、一色なんだ」
バックの中には、聖教会教会の教典であるパサールとハンドベル、それと聖水の入ったボトルが入っている。
これ一式を持って、家々を回っては門付け典礼の奉仕をする時に使うものなんだ。玄関先で聖句を奏上するんだよ。聖女見習いのお仕事の一つ。
巷を賑やかせた甲虫退治も無事に終わり、通りをセリアンと一緒に次の目的地に向かって歩いていく。
でも、歩きながら気づいてしまう。私が被っている仮面の下で額がちりちりと痛むんだ。
内緒なんだけど、額に座す御方からの私に対しての注意なんだよね。私に何者かがつけて来ていると。
一体、誰なんででしょう。せいきよらの見習いシスターに何か御用でしょうか。
仕方ないか。騒ぎの後、脱いだ藍色のバーヌースを畳んで掲げるように捧げ持つ。そして一緒に歩く彼女へ周りに聞こえないように声を潜めて、
「セリアン、このバーヌースと杖を教会まで持って行ってもらえるかな。お願いできる?」
「俺がかぁ、」
「セリアン、せめて私って言ってもらえるかな。仮にもシスターになろうっていうなら言葉使いも気をつけないと」
「わかったよ。気をつけますわ」
「態とらしい。兎に角、私たちをつけてきている輩にちょっかいでも出されてだね、この聖女様の羽織るべき藍色の聖衣を、汚しようものなら、ちと、不味いのよ」
「不味いってなぁ。もし汚したら、どうなるんだよ」
「そうねえ。あなたの綺麗な赤毛を全身剃られて、それを売り飛ばされるのよ」
セリアンは、驚き、自分の体を掻き抱いて、
「ひでぇな」
「それでも足りなくて、目までくり抜かれて、魔法素材だっていって売られる」
ギョッとした目つきで私か掲げ持つ、聖衣をセリアンは見つめる。
「おい、そんな大事なもの着て、どんぱちやってもいいのかよ。破れたりするんじゃないか」
私は空を仰ぎ見て、
「しょうがないよ。そんなことやるしか、しがない私は生きていけないの。」
「ちょっと待った。トゥーリィ。言うに事欠いて、あんた、なんか自分の言葉に酔ってないかい?」
バレたか。私は、ちろっと舌を出して、
「ばれちゃった。それぐらい大事なものってこと」
でもね、多分だけど、レディ・コールマンが、予備をたくさん隠しているような気がする。
恩義せやましく、私もその罪被りましてよ、のセリフを吐きつつ、予備の聖衣をハンガーごと見せてくるような気がして来た。
「だから、お願い。聖衣を教会へ届けて欲しいの。そして祭壇へ安置してくれるかなぁ。なんか嫌な予感がするのよ」
「俺はいいけどよぉ。トゥーリはどうなるって言うんだ?」
「私のことはいいのよ。セリアンにトバッチリがいかなければいいの。この前、見ているでしょ、私の力。きっと大丈夫だって」
何か言いたそうなセリアンに無理矢理、藍色の聖衣を渡してしまう。
「この先の細い路地に私は入るから、セリアンは教会まで真っ直ぐ全力で走る!良い?」
「わかったよう。祭壇に収めたら、すぐ衛士の詰所によってやる」
「さすがセリアン。助けを呼んでね」
少し歩いて、私たちは話をしていた細い路地の入り口についた。
「じゃあ、頼むね」
「おう」
「セリアン。『はい』だって」
セリアンは脇目も振らずに正教会へ駆け出していく。
おおっ、流石に獣人狼族、早い。あっという間に姿が見えなくなったよ。
感心しつつ、私も細い路地に入り込んでいく。薄暗い中、奥まで入っていく。
「フォセレ・ヴェレ」
手で印を組み、声を潜ませて、主へ奇跡を願う。
「ハイドゥミィ<オカルタァス>」
私を隠したまえ
主へ奇跡をを願う。そして途中にある小さい物入れの掘立小屋があったからその影に隠れたんだ。
しばらく息を潜めていると、通りから、この路地へ影がふたつはいってきた。逆光になっているから、顔も判別できない。
息を潜めてしばらく経つと目が周りに慣れてきた。
(あれは黒いロングドレスにグレーのピナフォア。何処ぞ使用人なのかな?)
ニ人は奥まで入り込んでくる。お互い、手を上げて指先を動かして、ハンドサインで意思伝達している。
(それにしても玄人だね。それも、なかなかの手練れだ)
そ私が隠れている掘立小屋まで二人は近づいてきたけど、キョロキョロして、私を探している。
良かった。主への願いが届いて、うまい具合に私の姿が隠れてわからないようだ。
なら、しばらく様子見で、このままだね。
ありがとうございます




