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里音の不思議な地下  作者: はる
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万病の薬

「りおんー」

「へんなひとがいるー」

「へんなのつけてるー」


「んん?ん、夜だぞ。ちゃんと寝ろよ。ぐぅ」


「りおんがあてにならないー」

「わたしたちだけでやっちゃう?」

「やっちゃうー」


 里音の部屋のドアを苦労して開けて、妖精達は1階に向かう。

 里音以外の人には見えないから堂々とだ。


 1階には黒ずくめの男が1人いて、ペンライトを口に咥えて手元で作業している。


 妖精達は男が設置し終わった盗撮用のカメラや盗聴器を壊して回った。


 設置したそれらから、悪意が出ていたので探すのは簡単だった。


 男の後ろについて回り、設置したら壊す作業を続けていた。男の苦労は報われない。


 里音の寝ている部屋以外にカメラと盗聴器を設置し終わった男は玄関から出て行き、外から鍵をかけて帰って行った。


 妖精達は仕掛けられたカメラと盗聴器を全て壊して、里音の隣で眠りについた。



 翌日、妖精達に教えられて言われた場所を探すと盗撮用のカメラと盗聴器を里音は発見した。


 警察に連絡して、来てくれた警察官にカメラと盗聴器を全て回収してもらい、被害届を出した。


「どうして僕の家にカメラや盗聴器を仕掛けたんだろう?妖精達の事がバレたのかな?気味が悪いな。それに簡単に家に侵入されすぎだ。怖いし。賢者の石、何か対策はあるか?」


『この家に悪意のある者を近づけさせなければいいでしょう』


「どうやって?」


『バリアをこの家に張りましょう。張る時に悪意ある者はバリアを通らないように設定してください』


「う〜ん、魔法か。賢者の力よ、この家を守りたまえ。バリア!」


 里音から力が放たれて、家を覆いつくした。傍目には分からないバリアが家に張られた。侵入者は近寄ることも出来ないだろう。


 里音はいまいち結果がわからなかったけど、妖精達が喜んでいるから成功したと思い、昨日考えた今日の計画を進めることにした。


 里音は妖精達を連れて、アキ総合病院の入院病棟に行く。ここは両親が最後にお世話になって、里音もずっと家から通っていた病院だ。


 里音の背後からつけて来る男がいた。


「りおんーうしろからおとこがー」

「うんあとをおってくるー」

「いやなけはいー」


「僕の後を男が付けてきてるのか?」


「そう」

「きみわるいー」

「こわいー」


 里音は近くの交番により、後ろから男に付けられていると助けを求めた。


 警察官はすぐに周囲を捜索したが、男を見つけられなかった。


 妖精達が男はいなくなったと言ったので、警察にお礼を言って外に出た。警察官からは「用心しなさい」とお言葉をもらい、感謝して病院まで歩く。


 最近、警察のお世話になりっぱなしではないか。

 里音はちょっと嫌な気分になった。


 入院病棟に行くと、顔見知りになった看護婦さんに会った。


「高梨さんの所の里音君じゃない。久しぶりねぇ。元気そうね」


「はい、その節はお世話になりました。両親を見送れたのは看護婦さん達のおかげです」


 里音は心からお礼を言った。

 看護婦さんは、ちょっと気の毒そうな顔をして「生きていれば良い事があるわよ」と里音を励まして去って行った。


 里音は小児病棟に行った。薬が本当に万病に効くか試すつもりだった。


 妖精達に死にそうな病気にかかっている子を探してもらうと、末期ガンにかかっている女の子の部屋に案内された。少女の髪は全て抜けてしまい、今にも死にそうな感じがした。


「ねぇ、君、起きて。用事があるんだ」


「身体が痛くて眠れないよ。お兄ちゃんは誰?」


「う〜ん、多分僕は君を病気から助けられるよ。元気になりたい?」


「身体中が痛いの。もうこんなの嫌だ。楽になりたいよ」


 少女は半泣きになった。里音はアイテムボックスからタッパーを取り出して、薬を1粒取り出す。残りのタッパーをアイテムボックスに戻して、少女に語りかける。


「今からこの薬を君に使うけど、条件があるんだ。僕のことを誰にも話さないって約束出来たら、病気を治してあげる。出来るかい?」


「誰にも話しちゃいけないの?お母さんにも?お父さんにも?」


「そう、約束をしてくれるかな?」


「約束する!元気になりたい!」


「それじゃあ、この薬を飲んで。飲み辛かったら飲み物もあるからね」


 動けない少女の口に薬を入れる。少女は頑張って飲み干した。一瞬、少女の身体が光に包まれた。鑑定をする。


名前 鈴美舞子

状態 健康


 本当に治った。凄い。奇跡の薬だ。


 里音は感動した。小さな命を救えたのだ。


「舞子ちゃん、病気は治ったからね。僕が帰ったら、ナースコールを押せるかな?」


「本当!?お兄ちゃんありがとう!大丈夫。ナースコールのボタン押せるよ」


「そう、それじゃあ僕は帰るから、元気でね」


「ばいばい、お兄ちゃん」


 里音は足早に病院から出た。


 妖精達と一緒に子供を助けたんだ。歩いている内に実感が湧いてきた。叫び声を挙げたいほど興奮している。


 僕が子供を助けた。凄い薬だ。妖精達のおかげだ。もっと薬を作ろう。悲しむ人が出ないように。僕は採取しか出来ないけど。


「ありがとう、レッド、イエロー、ホワイト」


「どうしたのー」

「ありがとうて」

「どういたましてー?」


 妖精達は自分達が凄い事に気がついていないみたいだ。そんな彼女達が純粋で可愛い。

 里音は妖精達を撫でた。恥ずかしそうに掌の、上に乗っていた。


「りおんがでれたー」

「でれたー」

「げんきー」


 その評価はどうかな?僕は元気だけど、デレてないぞ。

 掌を上にはらったら、妖精達は飛んで里音の頭に着地した。


「らんぼー」

「りんぼー」

「たのしー」


 妖精達はマイペースだ。里音は良い気分で家に帰った。


 妖精と暮らしているうちに、里音の生活習慣は正されていた。里音は健康的な日常を取り戻した。



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