ホワイト薬を作る
「じゃあ、ホワイト、薬を作ってくれ」
「わかったー」
ホワイトが素材を魔力?で持ち上げて、空中で1つずつ撹拌するように潰していく。順番でもあるのか、適当に混ぜているように見えるが、ホワイトの顔は真剣だ。いつもゆるい顔しか見てないから新鮮だな。
不思議な事に、混ぜた素材の色がだんだんと白に近づいていく。
全て混ぜ終わった後は、白玉のようにぷるんとした白い粘液みたいになっていた。
「いれものー」
「薬を入れる容器か!ちょっとまってな」
良い入れ物がない。タッパーでいいか。
「この中に入れてくれな?」
「わかったー」
ホワイトがタッパーにふよふよと薬を入れると、粘液から小さな固形の丸い丸薬になった。その数多数。
「うわ!増えた!」
「1つぶでなおるー」
「病気が1粒飲めば治るのか?」
「そーまほうやくー」
「魔法薬か。凄いな。これだけ沢山あれば何処かで試してみたいが」
「またつくれるー」
「また作れるのか!そうか!この素材は妖精の森から採取した物だから、また取りに行けば良いのか!」
「そおー」
「凄いぞ!ホワイト!」
「へへー」
照れたホワイトは可愛い。レッドとイエローがつついている。
薬の驚きで忘れていたが、僕の能力も見るんだった。
ダンジョンウォッチを着けて、ステータス表示と。
名前 高梨里音
年齢 23歳
職業 賢者
HP ♾
MP ♾
能力 言語理解 鑑定 アイテムボックス 賢者の石 賢者 英雄の素質 罠感知 罠無効
あれ!?僕、鑑定がある!個人鑑定に持って行かなくても良かったじゃないか〜。ちょっと損した。
調子が良かったのって、英雄の素質のおかげかな?鑑定!ついでに賢者の石と賢者も鑑定!
ー英雄の素質ー
武器や魔法の扱いが上手くなり、体術も精錬され体力もつく。素質だからまだ未完成。鍛錬すれば英雄になれる。
ー賢者の石ー
持ち主の疑問や質問に答えてくれる。全知全能。
ー賢者ー
あらゆる魔法を使いこなし、魔法を極めた者。人をやめ賢者となる。またの名を仙人。
え!僕、人を辞めたの!?いつの間に。仙人て「ふぉふぉふぉ」って言ってそうなイメージ。
それに僕、賢者の石なんて持ってないよ!教えて賢者の石!賢者の石は何処にあるの?
『賢者の石は、高梨里音の脳と一体化しています』
「僕の頭ー!?いつの間に〜!」
『賢者の石が発生した時からです。正確には、2075年8月20日午後19時23分56秒です』
「正確すぎ〜!!」
ぱにくる僕に妖精達が心配している。妖精達を見ると少し落ち着いてきた。可愛いな〜、この、えい!
つつくと逃げ出す。ちょっと気分屋なのも可愛い。
僕は残りの素材を鑑定するのだった。
「高梨里音という探索者が妖精の素材を持って来ただと?」
「はい、私と堀で確かに確認しました。出所は分かりませんが、高梨里音はNo.49ダンジョンの12階層までしか潜っていません」
「では、No.49ダンジョンに妖精の素材が有ると言う事か?」
「いえ、高梨里音が帰ってから監視カメラの映像を見ましたら、空間魔法の持ち主のようで、そこから素材を取り出していました」
「1番怪しいのがNo.49のダンジョン12階層までか。捜査員をダンジョンに入れて12階層までを探索させるように。本人からは情報を得られなかったのか?」
「はい。数十億の価値が有る素材だと言ったあたりで挙動がおかしくなりましたが、その後、トイレに行き帰って来ると素材を持って帰ると、売らないと頑なでした」
「怪しいな。この歳で空間魔法の使い手で、12階層までしか潜ってないと。家が相当の資産家か?」
「いえ、住所を調べた所、普通の1軒家で暮らしているようです」
「高梨里音の調査を進めるように。それと妖精の素材の出所もだ」
「どこまで調べますか?」
「全部だ!交友関係から家族構成、最近行った場所など全てだ」
「家の中に盗聴器やカメラを付けますか?」
「いや、いや、そうだな。そこまでした方が確実か。その手配も頼む。バレるなよ」
里音の行っている、通称『小動物のダンジョン』の管理をしている、探索者支援協会の協会長と鑑定師の会話だ。個人情報保護法など無視している。
家の中に盗聴器とカメラ。完全に犯罪をしている。
里音の身辺が不穏になった。