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里音の不思議な地下  作者: はる
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不穏な気配

 里音は手に沢山の脱皮の殻とガラス玉に似た何かを持っていた。

 それらを片付けなくてはならない。


「僕は部屋に戻るけど、君たちはどうする?」


「いくー」

「ついていくー」

「なまえはー?」


「僕の名前は高梨里音だよ。付いてくるって一緒に暮らすのかな?他の人達に見られるとマズイんだけど」


「りおんー!」

「だいじょぶー」

「ほかのひとはみえないー」


「君たちを連れて歩いても他の人には見えないってことかな?」


「そうー!」

「みえない!」

「りおんだけー」


「そっか。僕は寂しがり屋なんだ。これからよろしくね」


「よろしくー!」

「いっしょー!」

「いつもいっしょー!」


 妖精?精霊?まぁ、分からないから妖精でいいや。アニメみたいな妖精だな。可愛い。


 里音は妖精達を連れて、自宅に繋がる階段を上がって行く。


 ここは不思議な場所だ。初めに飴みたいな物を食べさせられた後に妖精達の言葉が分かるようになった。複数食べさせられたが、他にも作用があるのだろうか?なんだか、よく分からない物も貰ったし。


 自宅に着くと、手に持った物を開空いているダンボールの中に入れた。


 両親の部屋に行くと、まだ地下に続く階段があった。ドアを閉めて、また開けると変わらず地下に続く階段がある。無くならないのかな?

 とりあえずドアは閉めた。


 貰った物を見る。淡く光る殻に、無数のガラス玉に似た何か。


 他の冒険者のように鑑定が出来ればなぁ。


 その時、里音の頭にピコンと衝撃があった。

 何だ?頭痛か?


 頭を降り、目を開けると目の前に文字が浮いていた。これはもしかして、新しい能力を授かったんじゃないか?でも、スキルオーブなんて使用していない。どうしてだ?


 冒険者はダンジョンで出てくる魔物を倒せば、ドロップアイテムが拾える。その中でもスキルオーブはスキルを覚える事が出来る、とても貴重な物だ。有用な能力は億を超える値段がするものもある。安いものは数十万からだが、貴重には変わりない。


 目の前に出た文字を読む。


『貴方は鑑定が使えるようになりました』


 へ?鑑定が使える?いきなり?


 里音はスキルオーブを使ってはいない。心当たりは妖精の飴か!?いや、他にも何粒か放り込まれたぞ。それはどうなるんだ?誰か教えてくれ!


 また里音の頭にピコンと衝撃が有り、目の前に文字が浮かんだ。


『貴方の身体に賢者の石が発生しました』


 え、かなりヤバいんじゃない?僕ちゃんと人間だよね?


『はい、貴方は人間で有り賢者で有り仙人になりました』


 せ、仙人〜!?賢者〜!?僕は父さんと母さんの実子のはずだ!


『貴方は高梨翔琉と高梨沙羅の実子です。賢者の石が頭に発生し同化したことにより賢者であり仙人になりました。賢者の石と同化したことにより老化もしなくなります』


 賢者の石って何だよ!


『賢者の石は貴方の疑問や知りたい情報をすぐに教えてくれる石であり、命を待つ生命石でもあり、叡智の結晶です』


 それは何か?僕はウェブにでもなってしまったのか?


『答えはNO。貴方は賢者になりました』


 賢者って何だよ!


『あらゆる全知全能を知り、能力を使いこなす者です』


 お前は誰だ!?


『賢者の石です。貴方とは運命共同体になりました』


 頭が痛い気がしてきた。今日はもう寝よう。


『頭は正常です』


「うるさいなぁ!もう!僕は寝るんだ!」


「りおんどしたのー?」

「ねるー?」

「いっしょにねる!」


 妖精が里音に着いていく。里音は自分の部屋でふて寝した。妖精3匹と共に。


 頭に発生した賢者の石だが、脳を圧迫せず、むしろ脳と一体化したようになっている。

 里音は自分の身体の変化についていけていなかった。





 里音は夜中、妖精達の声で目が覚めた。


「りおんおきてー!」

「りおんあぶないの!」

「しらないやつがいるー!」


「ん?知らない奴?」


 里音は寝起きで頭が回らない。妖精達が警告しているにも関わらず。


 里音の部屋のドアが開かれた。


 音が聞こえてそちらを向こうとしたら、荒い息と共に誰かに口と身体を押さえつけられた。ペンライトで顔を照らされて眩しくて目が開けられない。里音は心臓が跳ね上がり、抵抗しようとしたが、声で脅された。


「声を出すんじゃねえ。騒ぐと殺すぞ。金は何処にある?通帳も渡せ。暗証番号もだ」


 手を口から離された。


「誰か!たすけっ!」


 怖すぎて大きい声が出せない。それにまた、口を押さえつけられた。


「声を出すな!ぶっ殺すぞ!お前は金のありかだけ話せばいいんだよ!」


 また口を離されたが、両親の保険金だ。金も通帳も渡す気はない。


 力の限り抵抗したが、筋肉の落ちた身体ではのしかかる男の身体にダメージも重力にも敵わなかった。


 偶然に男の顔を叩いた事で、男が逆上して里音の腹にナイフを突き立てた。そのまま男はナイフを引き抜く。血がブシュッと吹き出した。


 男は最近、指名手配された連続住宅侵入強盗殺人犯だった。


「あーあ、またやっちまった。金と金品だけ漁ってとっとと、帰るか」


 男の声を聞きながら、里音は衝撃のあった腹を押さえた。人間は大怪我を負った時には自衛本能が働き痛みを感じなくなるという。


 里音の口に血の味がしてきた。


 何が起きた?


『強盗犯に腹を刺されました』


 僕は助かるのか?


『身体の治療を開始しますか?』


 助かるなら治療してくれ。頼む。


『了解しました。治療を開始します』


 里音の腹から血が出なくなり、少しの違和感と共に大きな傷は塞がった。


 警察に通報しないと。


『警察に通報しますか?』


 YESだ。


 強盗犯は今部屋にいない。枕元に置いていた電話が110番に繋がった。


『どうしましたか?ご用件をお話し下さい』


「家に強盗が来て腹を刺されました」


『落ち着いて下さい。貴方の家の住所を教えて下さい』


「家は……」


 強盗は2階の部屋を荒らしていた。声が聞こえてはまずい。だが、話し続けた。


『強盗犯に見つからないようにしますか?』


 出来るならしてくれ。


 通報が終わって15分ほど経っただろうか?家の前が騒がしくなった。


 強盗から見えない里音は警察を中に招き入れた。


「今は2階を荒らしていると思います。男は刃物を持っています」


「分かった。君は救急車が来るまで休んでなさい」


 警察が5人ほど家の中に入って行った。気が抜けて玄関に座り込んでしまった。


 2階から物音がする。まだ安全じゃない。階段から凄い音が聞こえてきた。

 見に行くと、男が階段の下で警察官に捕まっていた。階段から男が落ちた所を警察官が取り押さえたようだ。3人がかりで男を連行して行く。里音はそれを呆然と見ていた。


 1階に残った警察1人が里音に近づいて来た。


「君、血だらけじゃないか。座ってないで横になって怪我の場所を圧迫止血しないと」


「あ、怪我はありません。治りました」


「治った?どうやって?」


 うわ〜警察官が怪しんでる。どうしよう。賢者の石、どうしたらいい?


『スキルだと言えばいいです』


「こ、これでも探索者で、す、スキルで治ったんですよ。怖くて、力が抜けちゃいましたけど」


「探索者か。お手柄だね。多分だけど犯人の男は最近指名手配された強盗殺人犯だ。家は検分させてもらうと思うから、ゆっくり休んでいなさい」


「は、はいぃ」


「2階に凄い血痕があったんだけど、住人は大丈夫かい?」


「ああ、はい、探索者の方で、傷を治すスキルを持っていたそうです。住人は大丈夫ですよ」


「でも、血が沢山出ていたから病院に行った方がいいかもしれない。検査だけでもしてもらうように」


「あ、救急車が来たみたいですね。君、一応、救急車に行こう。立てるかい?担架を持ってこようか?」


「いえ、立てます。ありがとうございます」


 それからは救急車に乗せられて、着ていた服は警察に回収された。

 血だらけの腹を綺麗にされ、1日だけ検査入院して家に帰るとまだ警察の人がいた。

 調査してくれるのはありがたいけど、家を荒らされるのは嫌だなぁ。


 あっ、両親の部屋の地下室!どうなったかな?見つかっちゃったよね。家の前に立っている警察官の人に聞く。


「すみません、この家の住人なんですけど、中に入っていいですか?」


「あ、はい、いいですよ。現場検証に立ち会ってもらうかもしれないですけど。あ、犯人の侵入経路は庭に面した窓だったので、そこはテープを貼っていますが、家を直すように手配して下さい。それと、血だらけのベッドマットは事件の証拠品として押収してますので新しい物を購入した方がいいですよ。今日の夕方には我々も撤収しますので」


「は、はい、分かりました。ありがとうございます」


 両親の部屋の話は出なかったな?どういう事だ?妖精達は今も僕といる。


 中に入ると警察の人がいて、簡単な現場検証をした。

 問題なかったみたいで、今後は住宅も何か自衛するようにとお言葉をもらい警察官達は帰って行った。


 荒らされた部屋を片付けるのが憂鬱だったが、良いこともあった。両親の部屋がちゃんとあるのだ。荒らされていたが。地下に続く階段はどうしたんだろう?


 妖精がいて寂しくはなかったが、懐かしい気持ちで真っ先に掃除した。両親が亡くなってまだ半年だけど。


 それから他の部屋を掃除して、家の修理を電話で頼んで、明日ベッドマットを買いに店に行くとして、今日は両親の部屋で寝た。



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